『みじかい小説』053 / 二人の選択 ~1000文字にも満たないみじかいみじかい物語~
公園で子供たちが遊んでいる。
その親であろう大人たちは、少し離れたところにたむろして、何やら世間話でもしているようだ。
休みの日、そんな光景を目にすると、私は非常に穏やかで、どこか満たされた気持ちになる。
こんな平和な光景がずっと続いて欲しいと思うし、彼らの将来に悲しいことが起こらないで欲しいとも願う。
いつだったか、夫にそんなことを打ち明けてみたら、「言いたいことは分かるけど、そんな他人の幸せを願うほどお人よしにはなれないな、俺は。由美はロマンチストだなぁ」と言われた。
なんだか馬鹿にされたように感じて、それ以来、その手の話は、誰が相手であってもしないことにしてきた。
しかし先週の土曜、親しい友人2人と喫茶店でお茶をしていた時のこと、偶然にも同じようなことが話題にのぼった。
2人とは長年のつきあいであったし、私はつい油断して、例の自分の感想を打ち明けてしまった。
すると、友人の一人は、「へぇ、由美って、子供いないのに、そういう光景見ても嫉妬とかしないんだ」などと言う。
もう一人の友人も、「そうそう、普通、嫉妬とか、しちゃうよね」などと言っている。
私は、しばらくその意味を考えた。
そして、ひとつの答えらしきものに思い至った。
「たぶん、うちは計画的に子供がいない家庭を作っているからだと、思う」
二人には、そんなことを答えた。
その日の夜、仕事から帰ってきた夫に、昼間の友人との会話について話してみた。
「大ちゃんって、公園で子供とか遊んでるの見たら、嫉妬とかする?」
とも聞いてみた。
すると夫は、
「俺も由美と一緒。俺たちって自分たちの意思で子供を持ってないんだよな。子供が欲しくて仕方ないわけじゃないから、嫉妬もしないんだと思う」
と言った。
「子供、作らなくて後悔しない?今ならまだ間に合うよ?」
と、私は聞いてみる。
この質問は、実は結構勇気がいったのだけど、今回は話の流れで自然に聞くことができた。
「俺は別に。子供とかあんまり興味ない。由美は?こういうのって母体の方が重要じゃん?」
「あたしも別に。仕事でやりたいことあるし、大ちゃんと二人で十分幸せだよ」
「そうですか」
夫が照れくさそうに言う。
「一緒に長生きしようね、大ちゃん」
「由美、それこっちのセリフかも」
子供を作らないという選択をしても、私たち夫婦には、私たち夫婦の歴史がある。
夫の顔を見て、それでいいのだ、と思った。




