第3章 13:森の怪我人を助ける
森の見回りをしていた。
すると村の青年カジュンスが息を切らして走り寄ってきた。
「聞いてくれ、冒険者。
森の奥で……
倒れている旅人と、小動物もいるらしいんだ」
胸騒ぎを覚え、装備を整えるとすぐに森へ向かった。
昼でも薄暗い深奥の森は、木々が重なり合い、湿った土と苔の匂いが漂っている。
足元に注意しながら進むと、かすかなうめき声が聞こえた。
木の根に足を取られ、斜面で滑落したらしい旅人が、片膝を押さえて倒れていた。
その傍らでは、羽を怪我した小さな森鼠が怯えた目でこちらを見ている。
「大丈夫、すぐ手当てする」
腰のポーチから薬草を取り出し、丁寧にすり潰して傷口に塗った。
旅人は痛みに顔をしかめたが、落ち着いた声で励まし続けると、次第に呼吸が整っていくのがわかった。
慎重に肩を貸し、安全な場所まで運ぶ途中、小動物にも気を配った。
刺激しないよう距離を保ち、森の奥に続く安全そうな茂みへと、そっと導く。小動物は一度だけ振り返り、感謝するように鳴くと、木々の中へ消えていった。
旅人を村まで送り届けた頃には、空気が少し柔らいで感じられた。村人たちは安堵の表情で迎え、治療の続きを引き受けてくれる。
「小さな手助けでも、命を守ることができるんだな……」
その言葉が、胸に静かに残った。
数日後、今度は薬師ギルドの主任、ワイムウォンに呼び止められた。
「森の奥に、珍しい香りの植物が咲いているらしい。
恋人にポプリを贈りたくてね。手伝ってくれないか」
再び森へ向かう理由としては、悪くない。
精油瓶とノートを手に、主人公は森の深部へ足を踏み入れた。
以前助けた旅人のこと、小動物のことを思い出しながら進むと、不思議な甘さを含んだ香りが風に乗って届いてくる。
淡い光の差し込む空き地に、その植物はひっそりと咲いていた。
花弁に顔を近づけ、香りを確かめてはノートに記す。
数種類を組み合わせることで、より深く、やさしい森の香りが生まれることに気づいた。
ハサミで一輪一輪を慎重に切り取り、拠点に戻ってからポプリを作り上げる時間は、まるで魔法の儀式のようだった。
乾いた花と葉が混ざり合い、部屋いっぱいに森の気配が広がる。
「これで、少しは森を家に持ってこれたかな」
完成したポプリを受け取ったワイムウォンは、照れくさそうに笑った。
後日、恋人にもとても喜ばれたと聞き、自分のことのように嬉しくて静かに頷く。
小さな命を救い、森の恵みを分け合う。
その一つ一つの行動が、人と自然を結びつけているのだと、改めて実感する。
経験値と自作のポプリ、そして心を癒す《森の癒し》のバフを受け取る。
とても満足度が高くておもわす微笑んでいた。
この森と共に生きる冒険は、まだまだ続いていく。
「良いお年をお迎えください、冒険者」
朝、久々の素材採取に行こうとしたら、満面の笑顔でレベッカが話しかけてきた。
「歳末ボーナスは本日の23時59分までです。
行ってらっしゃいませ」
良いお年って、いったいなんのことだろう?
歳末ボーナスとは?
これもまた、きっと私ではない誰かが分かることなのだろう。




