第3章 11:川の水生生物の生息調査
夏の陽射しが容赦なく降り注ぎ、村を流れる川の水面がきらきらと反射していた。
川岸の砂はすでに温まり、草むらからは虫たちの羽音が絶え間なく聞こえてくる。
冒険者がこの村を訪れたのは、川の異変についての報告が相次いだからだった。
「最近、魚が減った気がする」
「カエルの声が聞こえなくなった」
そんな村人たちの不安な声を受け、冒険者は川の調査を引き受けた。
川沿いに立ち、腰を落として水中をのぞき込む。
澄んだ流れの中では、小魚の群れが陽光を浴びながら泳ぎ、岩陰にはカニや水生昆虫の姿も見える。
水草の間をすり抜けるようにカエルが跳ねる様子を見て、冒険者はひとまず胸をなで下ろした。
「全部がダメになってるわけじゃないな」
だが、少し下流へ進むと景色が変わった。
かつては豊かに揺れていたはずの水草がまばらになり、川の流れも不自然に乱れている。
土砂が溜まり、水がよどんだ場所では、生き物の姿がほとんど見えなかった。
冒険者は水質測定キットを取り出し、慎重に数値を確認する。
致命的ではないが、このまま放置すれば生態系に影響が出るのは明らかだった。
数日間にわたり、冒険者は川と向き合った。水路に詰まった石や枝を取り除き、流れを整える。
村人たちにも声をかけ、踏み固められた川岸を補修し、水草が根付くよう土をならした。
作業の合間には、小魚の数を数え、水草の種類を記録し、変化を細かく調査報告書に書き留めていく。
木陰ではカモが羽を休め、川岸には小さな花が咲き始めていた。
数日後、再び川をのぞき込んだ冒険者は、思わず微笑んだ。
整えられた流れの中で水草が揺れ、その間を縫うように魚たちが泳いでいる。カエルの鳴き声も戻り、水生昆虫が水面を跳ねる様子が見えた。
「この川は、とても元気そうだ」
村人たちは安心した表情で川の水を汲み、子どもたちは岸辺で魚を眺めては歓声を上げていた。
感謝の言葉とともに贈られたのは、村で見つかった珍しい小魚の写真だった。
冒険者はそれを眺めながら、静かに思う。
「ほんの小さな手助けでも、自然の命を守れるんだな」
剣や魔法だけが冒険じゃない。
川と生き物たちに寄り添い、共に生きることの大切さを実感した一日だった。




