表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/70

 第3章 11:川の水生生物の生息調査

 


 夏の陽射しが容赦なく降り注ぎ、村を流れる川の水面がきらきらと反射していた。

 川岸の砂はすでに温まり、草むらからは虫たちの羽音が絶え間なく聞こえてくる。


 冒険者がこの村を訪れたのは、川の異変についての報告が相次いだからだった。


「最近、魚が減った気がする」


「カエルの声が聞こえなくなった」


 そんな村人たちの不安な声を受け、冒険者は川の調査を引き受けた。


 川沿いに立ち、腰を落として水中をのぞき込む。

 澄んだ流れの中では、小魚の群れが陽光を浴びながら泳ぎ、岩陰にはカニや水生昆虫の姿も見える。


 水草の間をすり抜けるようにカエルが跳ねる様子を見て、冒険者はひとまず胸をなで下ろした。


「全部がダメになってるわけじゃないな」


 だが、少し下流へ進むと景色が変わった。


 かつては豊かに揺れていたはずの水草がまばらになり、川の流れも不自然に乱れている。

 土砂が溜まり、水がよどんだ場所では、生き物の姿がほとんど見えなかった。


 冒険者は水質測定キットを取り出し、慎重に数値を確認する。

 致命的ではないが、このまま放置すれば生態系に影響が出るのは明らかだった。


 数日間にわたり、冒険者は川と向き合った。水路に詰まった石や枝を取り除き、流れを整える。

 村人たちにも声をかけ、踏み固められた川岸を補修し、水草が根付くよう土をならした。


 作業の合間には、小魚の数を数え、水草の種類を記録し、変化を細かく調査報告書に書き留めていく。

 木陰ではカモが羽を休め、川岸には小さな花が咲き始めていた。


 数日後、再び川をのぞき込んだ冒険者は、思わず微笑んだ。


 整えられた流れの中で水草が揺れ、その間を縫うように魚たちが泳いでいる。カエルの鳴き声も戻り、水生昆虫が水面を跳ねる様子が見えた。


「この川は、とても元気そうだ」


 村人たちは安心した表情で川の水を汲み、子どもたちは岸辺で魚を眺めては歓声を上げていた。

 感謝の言葉とともに贈られたのは、村で見つかった珍しい小魚の写真だった。


 冒険者はそれを眺めながら、静かに思う。


「ほんの小さな手助けでも、自然の命を守れるんだな」


 剣や魔法だけが冒険じゃない。


 川と生き物たちに寄り添い、共に生きることの大切さを実感した一日だった。


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ