第3章 5:薬草の新しい採取地を探す
村の薬師パーソンから、冒険者は新たな依頼を受けた。
「森の奥や山の高地に、まだ記録されていない薬草があるはずだ。
見つけてきてほしい」
自然と共に生きる村にとって、薬草は命を支える要だ。その重みを胸に、森の深部から険しい山道へと足を進めた。
高地の岩陰、風の通り道に守られるようにして、小さな空間があった。
そこには見たことのない花と、淡く光る薬草が群生している。
「……これは、貴重だな」
他の植物を傷つけぬよう、慎重に採取する。
土の感触、葉の張り、香り――自然が蓄えた力を感じながらの作業だった。
村へ戻ると、パーソンは薬草を一目見て目を見開いた。
「素晴らしい……!
この効能、村の健康に大きく貢献するぞ」
その言葉に、確かな達成感を覚えた。
冒険と学びは、村を支える力になる。
その実感を胸にした一日だった。
後日。
冒険者はパーソンの家に呼ばれて執務室へ向かう。
静けさに満ちた部屋で書類に囲まれていたのは、薬師パーソンの直属の部下、主任ワイムウォンだった。
「ちょうど良いところに!
冒険者、手を貸してほしいんだ」
本来届くはずの薬草素材が滞っており、代替素材で同等の薬を作る必要があるという。
それは同時に、パーソンからワイムウォンに課された“薬師としての試験”でもあった。
二人は丘陵地帯へ向かい、《リーフ・マジクオケ》という薬草を採取する。
指で裂くと青い汁が滲み、独特の香りが漂った。
「やっぱり、成分が微妙に違うな……」
執務室に戻ったワイムウォンは腕を組み、考え込む。
「薬師には“読み替える力”が必要なんだ。
素材の本質を見抜き、配合を変える」
香り、粘度、魔力の流れ──。
すべてを五感で確かめ、慎重に調合を進める。一度は温度が上がりすぎ、失敗しかけたが、落ち着いて立て直した。
やがて薬瓶の中に淡い光が宿る。
「品質……八十六。
成功だ!」
パーソンも満足げに頷いた。
「よくやった。
薬師として一人前になりつつあるな」
その言葉に、ワイムウォンは深く胸を打たれた。
「ありがとう、冒険者。
君は僕の親友だよ」
しばらくして、再びワイムウォンから呼び出しがかかる。
幼馴染のオメガトライ──。魔道具工房の主任からの依頼だという。
「作業員たちが次々に倒れている。
魔力過剰症らしい……一緒に来てくれないか」
工房に足を踏み入れると、鉄と魔力の残り香が漂い、従業員たちは疲れ切った表情で休んでいた。
冒険者は机や小瓶を調べ、指先に微かな痺れを感じ取る。
「魔力増幅薬品の痕跡……?」
さらに奥の魔道具台を見ると、刻まれた魔法陣に歪みがあった。
「これだ。
刻印の乱れで魔力が漏れている」
原因を説明すると、作業員たちの顔に安堵が広がった。
ワイムウォンはすぐに魔力安定用のハーブティーを調合し、皆に配った。
「……楽になってきました」
「助かったよ、薬師さん!」
深く頷くワイムウォン。その表情は、確かな自信と成長を帯びていた。
事件を解決したあとの静かな満足感が、冒険者の胸に広がる。
自然の恵みを見つけ、知恵で読み解き、人を救う。
この日々の積み重ねが、村と人々を支えていくのだと、改めて実感するのだった。




