第1章 3:薬草の収穫
朝の光がフローリア村を柔らかく照らす頃、薬師のパーソンが冒険者を呼んだ。
「今日は、特別な薬草を採ってきてもらいたいのじゃ。
森の奥にしか生えぬ《月影草》という草じゃ」
依頼の受付はギルドを通す必要はないらしい。
村人から直接依頼を受けても、ギルドから依頼を受けても、報酬はギルドから支払われるようだ。
私は依頼を引き受けた。断る理由はない。薬草は病気の村人を治すために必要不可欠だ。
しかし森の奥は、普段あまり人が入らない場所で、道も不安定だった。慣れない若い薬師では時間もかかるだろう。
装備を整え、すぐに森へ向かった。
木漏れ日の下、鳥の鳴き声と風のざわめきに包まれながら歩く。
やがて小川沿いの湿地に差し掛かると、そこに《月影草》がひっそりと咲いていた。
葉は夜の月のように淡く光り、花は小さく、しかし確かに存在感を放っている。
慎重に摘み取り、籠に入れていく。
そのとき、茂みの中で小さな動きがあった。森の中に住む数匹のリスだ。
驚かせないように足を止め、しばらく見守る。
暫くリスに癒されていて気がついた。摘み取った月影草が場所を変えてふたたび生えていた。もう一度、慎重に摘み取り『鑑定』してみる。
パーソンの言う通り、月影草の生息地はここだけのようだ。一度刈り取っても2〜5回の範囲でふたたび生えるようだ。注意書きに『刈り取り限度を超えると二度と生えない』と、ある。
もう一度刈り取ろうと思ったが止めておく。二度と生えないのは今後困る事になってしまう。それに必要なのは月影草だけではない。
自然との静かな触れ合いに心を和ませながら、さらに採取を進めた。
全ての薬草を集め終えてから、森を抜けて村へ戻る。
「ありがとう。
助かったよ、冒険者」
パーソンは喜び、採取した草をすぐに調合に使った。
村人の中には、すでに軽い咳が和らいだ者もいるという。
「これでまた、村に笑顔が戻るな」
小さくうなずき、薬草の力と自然の大切さを噛み締めた。




