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 第1章 2:迷子の子猫を探せ

 


 フローリア村の広場に、小さな声が響いた。


「にゃ……にゃん……」


 声の主は、村の少女ロリータの愛猫、ヤプーだった。ヤプーは人の目から逃げる様に村を飛び出し森の中へ逃げ出してしまった。


 朝の9時に村を出て午前中の素材の採取を終えた私は、森の奥から村に向かっていた。記憶はないが往復2時間かかる村と森の奥を既に3往復していた。韋駄天はこの為に購入したようだ。


 村に近い森の入り口で私に体当たりしてきたロリータ。姿を消した愛猫を探す事に夢中になりすぎていたようだ。私の姿を見るなり、すがるように泣きそうな顔で見つめてきた。


「冒険者さん、お願い!

 ヤプーが森に入ったきり戻ってこないの。だから……」


「え?ヤプー?」


 森は村のすぐ近くまで広がるが、木々は密で、薄暗い場所も多い。そこに彼女の愛猫が逃げ出してしまった、と言う。

 ここはまだ村に近い場所だが、さらに奥に行くには幼い彼女には酷だろう。

 私はロリータに約束して、迷子の子猫を探すことにした。


 森の中、鳥のさえずりと風の音の中で、かすかな鳴き声を辿る。

 草むらをかき分け、倒木の下も覗き込む。

 しばらくすると、茂みの陰に小さな影が見えた。


「ヤプー!」


 子猫は恐怖で体を丸めていたが、冒険者の優しい声に少しずつ近づく。

 手を差し伸べると、ヤプーは小さな体を震わせながらも、抱き上げられることを許した。


 森から出ると村の入り口で右往左往するロリータの姿があった。腕の中のヤプーを見て涙を流して喜んでいる。


「ありがとう……。

 ほんとにありがとう!」


 喜びの笑顔に微笑みながら、森の奥で静かに見守る動物たちの目も喜んでるように思えた。


 小さな命を守ること──。

 それもまた、冒険の始まりだった。


 3往復の成果をギルドで買取して貰う。

 今日は薬草を採取していたら途中で蜂の大群と蜘蛛の大群に遭遇した。逃げながら討伐を終えると見知らぬ森に入ってしまった。そこには綿の実があちこちに落ちていたのだ。

 おかげでレベルも上がり大量の素材も手に入れる事ができた。


 レベッカは大量の素材に目を輝かせている。

「売却ありがとう、冒険者。

 特に綿(わた)の実と蜘蛛の糸はありがたいです。そして蜂の蜜瓶は料理人が喜びます!」


 清算して所持金を見ると──残高16,050コイン。

 とても達成感がある。今夜はゆっくり眠れそうだ。明日はもっと頑張ろう。


「おはようございます。

 何をお求めですか?」


 部屋に戻る暇なく、レベッカが声をかけてきた。ニコニコと微笑み、返答を待っている。

 まだ清算したばかり──では、なかったらしい。


 いつのまにか朝を迎えていたようだ。

 不思議な事が起こる世界である。深く考えるのはやめよう。こんな事もあるのだ。


 さて、今日も森へ向かおう。

 


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