急に春の嵐
ヒュー、ゴゴゴ、ヒュー
ただ今、春一番が吹いてございます。
「風強いねー」
「うん」
「春一番ってあるけど、何番まであるんだろうね?」
「さぁ…しらん」
オレにくだらない質問をしているのは、オレの部屋でオレにもたれかかった同じ高校生の幼馴染の夢花だ。
オレの名前は、早崎 ほたる。
そんなオレに寄りかかっている幼馴染とは、別に付き合っているわけではない。
寄りかかってくるのは、イチャイチャではなく、楽だから。
だそう。
基本、休みの日の夢花は、オレの部屋でくつろいでいる。
オレの部屋というか、オレで。
オレはクッションかよ⁉︎
「あのさ、雲…めっちゃ早く動いてるけどさ、窓にぶつかったりしない…よね?大丈夫だよね?」
「うん、大丈夫だろ」
「なんでそんな簡単にいうの?目的は?」
「ん?目的?」
「だから、雲が窓にぶつからない目的!」
「それいうなら、理由じゃね?そもそも曇って液代の粒が混ざってどうのこうのじゃなかった?だから、近くでみると霧の集まりっていうか、掴めないんじゃなかったっけ?知らんけど」
「えっ?なら…わたしって液体だっけ?」
…
液体…
てか、ならって何?
「いや、固体と液体のハーフなんじゃね?知らんけど」
「ハーフかぁ、なら安心だね」
なんだか知らないけど、ホッと一安心する夢花なのであった。
それにしても、風は強いけどあったけーな〜って春の陽気に包まれて脳内までポカポカしていたら、夢花が
「はる…好き」
っていってきたんですよ。
「あー、そうだね」
ってオレは返したんですね。
そしたら…
「なに、その上から物をいう感じ。いかにも知っていました感は、なに⁉︎」
って、夢花がプチ怒りしだすんですよ?
「いや、けっこう好きな人いるっていうかさ…」
「は?最低」
そういうと、夢花はブチ切れて帰って行った。
まさに…春の嵐だ。
春が好きな人って結構いますよね?
…
でもさ、どうせ明日には普通におっはよーんっていってくるに違いない。
てなわけで、次の日。
いつも通りに朝、夢花の家の前で待っていたんですけど…
「げっ…なんでいるのよ」
って朝から小言を頂戴いたしましたとも。
小言がオレには大ごとに聞こえる。
夢花は、まだ怒っていらっしゃる?
春の嵐は、いつおさまるのでしょうか…
「なんだよー…まだ昨日のこと怒ってんのかよー。適当に返事してごめんって」
「ならさ、どうなの?」
…どうとは、なんでしょうかね?
はるが好きってやつ…か?
季節の意見交換ってやつを心から望んでいるのか?
ならば…
「オレは、どっちかって言ったら…好きじゃないかなぁ」
だって…
春って、基本風強い日多くて目がカユイからなぁ。
と、正直に言ったのに夢花ってば…
「えっ…そ、そんなそんなハッキリと…そんなぁ…信じられない。終わったわ。完全に終わった。」
ってどこかよくわからない一点を見つめて、夢花は、ふらふらと歩き出した。
「そんな、大げさな…。てかさ、人それぞれじゃん」
って明るく言ったら夢花は…
「そ、そうだけど…そうだけど‼︎だからって、そんなハッキリさ…ほたるのバカ‼︎」
って怒鳴り出したと思えば先に走って学校へと行ってしまった夢花。
なんなんよ…?
おいていかれたオレは、遅れて学校に到着するなり、夢花の教室を覗いた。
…
あれ?
先に行ったはずの夢花は、教室にいなかった。
?
おかしいな…
夢花の友達に聞いてみると、どうやら保健室に行ったっぽい。
走って学校行ったから、転んだのかな?
そんな軽い気持ちで保健室に向かうと、夢花は…目を真っ赤にしていた。
走って花粉を全力で吸ったり浴びたりしたんかな?
「あれ、夢花って…花粉症だっけ?」
「違う!てか、来ないで‼︎」
拒否されました…。
まだまだ春の嵐が続きそうです。
外は、こんなにいいお天気なのに…。
…
仕方なく、教室へ戻りました。
次の休み時間、夢花の様子をクラスまでみにいくと、夢花がこちらに気づいてプイっとそっぽむいた。
そしたら、ポニーテールをしていた夢花の長い髪が隣の席の男子の顔にあたって、オッフってなってしまっていた。
それに気づいた夢花は、隣の席の男子に謝っていたみたいなんだけど…なんだかいい雰囲気で、オレはみていられなくなり教室へと戻った。
なんだよ、夢花のやつ…
隣の席の男子とめっちゃ楽しそうにしやがって。
夢花は、いつも休みはオレの家に来ていたのだが、最近来ない。
…
なんでだよ…
携帯で夢花にメッセージを送った。
しかし、クラスメイトとゲームしてるから、ほたるとは遊ばない。てか、遊びたくないと文字で伝えてきた。
遊びたくない⁉︎
…
いや、オレは遊びたいよ?とは、言えない…。
なので、わかったとだけ伝えた。
ほんとは、わかってない。
オレと遊べよって、心から思っている。
なんで最近、夢花はそんなにオレを毛嫌いするのだろう?
倦怠期ってやつですか?
そもそも付き合っておりませんが、いつも一緒にいすぎて、こんなことになってしまったのでしょうか?
続く。