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94/125

94:食品フロア。

「サクラちゃんっ」

「さぁ、あんたたち、こっちみなさいよ! がおーっ」


 地下一階食品フロア。エスカレーターを境に右手と左手に分かれて捜索を開始。

 店内にモンスターの姿を発見し、インパクトで殴り倒したのも束の間。

 奥の方からガンガンと何かを叩く音がして駆け付けると、社員用スペースへと続く扉の前にゴブリン亜種が三体いた。


「まったく、醜いったらないねぇ。フェザー!」


 サクラちゃんの威嚇でゴブリン亜種のヘイトが彼女に向き、扉の前から離れたところでブライトのスキルで奴らは倒れた。


「執拗に扉を叩いたってことは、奥に人がいる!?」

「行きましょう!」

「むす、狭そうだなぁ」

「オヤジ、飛べないか。えっほえっほすればいいぜ」

「ブライト、俺の肩に乗れ。行くぞ」


 えっほえっほは移動が遅くなるから……。

 観音開きになっている扉を開ける。

 ん? なんか予想より、扉が重かったな。


「あ……バリケードがあったのか」

「それで奴ら、開けられなかったんだな」

「でも悟くんはアッサリ開けてたけど」

「バカ力。悟バカ力だ」


 ゴ、ゴブリン亜種が非力なだけだと思うなー。


「誰かいますかーっ。捜索隊でーすっ」

「助けに来たわよぉーっ」

「おっ……声が聞こえたぜ。人間の声だ」

「本当か、ブライト。どっちだ?」

「あっちだ」


 ブライトが白い翼で右手奥を指す。

 その方角にもいくつかバリケードが築かれていた。

 これは違う意味で生存者のところまで行くのに苦労しそうだ。

 そんなことを考えていると、奥から人の声が。


「そ、捜索隊? 捜索隊が来たのか!?」

「えぇ、来ました。今からバリケードを解いて行くので、そちら側でもお願いします」

「わ。わかりました。おい、誰か手伝ってくれ」


 他にも生存者がいそうだ。

 双方からバリケードを解体して合流。

 ここの従業員らしき男性三人と、客であろう男性二人が出迎えてくれる。


「大変っ。血が!」

「あ、これはわたしの血では……えぇ!? タ、タヌキ?」

「タヌ、え? な、なんでタヌキが」


 しまった!?

 最近、すっかりサクラちゃんをタヌキ呼ばわりする人もいなかったし、油断していた!


「え、タヌキ? あら、本当だわ。タヌキの置物が」

「サ、サクラちゃんとブライトは、ここでモンスターを警戒してくれ。大きな音を立てたしな」

「あ、そうね。任せて悟くん」

「お、おう。ま、任されとくぜ」

「ささ、奥へ行きましょう。奥へ」


 五人を奥へ誘導し、サクラちゃん――タヌキのことは、レッサーパンダと思う様に伝えた。

 首を傾げる四人。ひとりだけサクラちゃんのことは知っていたようだ。

 

「とにかくお願いします。サクラちゃんの生みの親がすぐに亡くなってしまい、同じく生んだばかりの子を亡くしたレッサーパンダに育てられた子なんです。だから」


 だから自分をレッサーパンダだと思っている。そう話すと、サクラちゃんを知らなかった四人も納得してくれた。


「それで、怪我をなさっているのは?」

「あ、はい。奥に」


 商品の在庫が棚いっぱいに並んだ通路を過ぎると、広い場所に出た。

 広いというより、バリケードに使ったカートやカゴの分、広くなっただけか。

 そこに怪我人がいた。ひとりや二人じゃない。パっと見ても二十人ぐらいいる。


「サクラちゃん! ブライトもこっちにっ」

「チェンジするか? なぁチェンジ」

「あぁ。ヴァイスとツララに仕事をしてもらわないといけないな」


 まずは優先度を決める。

 チェンジは雛に触れている人しか転送出来ない。気を失っている人は雛に触れられないから、雛の方から触れてやらないとダメだ。

 そうなると、雛に触れられる人数が限られてしまう。


 一通り怪我人を見て回り――。


「サクラちゃん、あの赤い靴の人。彼にポーションを二本、その右隣りの人に一本ぶっかけて」

「わかったわっ」

「は、早く連れ出してくれっ。こんな所、もう嫌だっ」

「まずは怪我人を優先します」

「わしも怪我をしたんだ。ここだ、ここっ」



 年配の男性が声を荒げ、腕を見せる。

 うん、まぁ怪我てるね。擦り傷だ。


「サクラちゃん。ポーション一本くれる?」

「はーい」


 サクラちゃんからポーションを受け取り、蓋を開けて彼の腕に垂らしてやった。


「はい。これで完治です。重傷人が優先です。そんな当たり前のこともわからないのですか?」

「わ、わかるかそんなもの! わ、わしはM区の区長とも懇意の中じゃぞ!」

「俺には関係ありませんので」

「おじいちゃん」

「ん? な、なんだタヌキめっ」

「失礼しちゃうわね……。おじいちゃん、ちょっと黙っててくれる? 壁際の方で大人しくしててくれるかしら」


 サクラちゃんがほんのり光る。

 チャームを使ったな。


 邪魔をしてきたお年寄りは、サクラちゃんのチャームに掛かってとぼとぼと壁際へ歩いて行って、そこでぼぉっと立っていた。


「ありがとう、サクラちゃん」

「ふふ。どういたしまして」

「悟。ヴァイスとツララの準備が出来たぜ」

「わかった。じゃあまずこの人からだ――」


 さぁ。ここからは時間との勝負だ。




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― 新着の感想 ―
気を失なった怪我人を〇円形に床に寝かせ、頭の上に手を伸ばして、その手にヴァイスたちを触らせたら、たくさんの人をチェンジで病院に送れないかなぁ~?
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