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88/135

88:スレッド――そして揺れ。

 ――約十日前の某所スレッド



名無しのレッサーパンダファン

 捜索隊の社員募集項目が改訂されたぞ!


名無しのレッサーパンダファン

 基本給でもあがったか?


名無しのレッサーパンダファン

 サクラちゃん成分が足りない


名無しのレッサーパンダファン

 >>↑

 わかる


名無しのレッサーパンダファン

 今までは救助活動中に倒したモンスターのドロップアイテムは

 拾っても本社で搾取されてたのが、拾ったチームにその収益が100%還元するって


 まぁ救助活動そっちのけでモンスター狩りしてたら罰金らしいけど


名無しのレッサーパンダファン

 え・・・じゃあ冒険者と同じになるってこと?

 捜索してまーすって言いながら嬉々としてモンスターを狩る捜索隊の未来が見えそうで怖い


名無しのレッサーパンダファン

 そうはならんやろ

 カメラで見られてんだし


名無しのレッサーパンダファン

 あーそうか

 過度にモンスター狩りとかしてたらバレバレだよな


名無しのレッサーパンダファン

 今じゃ視聴者もいるしなw


名無しのレッサーパンダファン

 悟くんとエースんとこ以外見てる奴いんの?


名無しのレッサーパンダファン

 自分は見てる

 なんか時々胸熱展開あって感動する


名無しのレッサーパンダファン

 レスキューって見てるとやっぱいいもんなんだよなぁ


名無しのレッサーパンダファン

 捜索隊の人員不足がこれで解消されるのか?


名無しのレッサーパンダファン

 まぁ引退冒険者とかは、ちょっとやってみようかって気にはなるだろうな


名無しのレッサーパンダファン

 普通のサラリーマンするよか稼げるもんなぁ


名無しのレッサーパンダファン

 おおぉぉ! 募集項目見てたらドローン操縦とか本部での担当指示役にも

 ドロップのおすそ分け貰えるじゃん

 ちょっと履歴書買ってくる


名無しのレッサーパンダファン

 ドローンか……いってみるかなぁ






 ――そして時間は戻って。






「うわ……予想以上に多いじゃないですか」


 本部に戻ってくると、一階のロビーにはスーツ姿や普通の服を着た男女がかなり集まっていた。

 

「面接ってことは、捜索隊に就職したいってひとたちなのかしら?」

「あれ全員か? 捜索隊もめちゃくちゃ人増えるじゃねえか」

「全員就職とはならないだろう」


 面接で落ちる人だっているんだ。

 うちでは筆記テストなんてものはない。面接だけだ。

 人を助けたい――という気持ちがあるのかどうか、それを確かめるだけ。

 たまに愉快犯的なのがいて困るんだよな。

 絶望的な状況で、尚且つ救助に来た人間に見捨てられた時、人はどんな感情を抱くのか知りたい――なんて奴が二年前に面接に来たんだよ。

 まぁ『精神鑑定士』がそれを見逃すはずもなく、面接に落ちた挙句、要注意人物として警察と情報を共有するなんてことにもなったけど。

 そういえば、その人、事件起こして逮捕されたって聞いたな。


「あっ。悟くんだ」

「え、あ、本物じゃん!」

「えぇー、結構かっこいい」

「サクラちゃんやっぱかわいいなぁ」

「ブライトパパもかわいい~」


 うっ。な、なんでここでも目立ってるんだ?

 は、早く上に行こう。

 人だかりを迂回してエレベーターへと向かう。ボタンを押して待っていると。


「はーい。面接希望の方は五階の会議室へ移動してくださーい。そこのエレベーター使ってねぇ」


 というロビー職員の声が。

 ここにあるエレベーターって……これしかないんだけど?


 しまった。奥にある別のエレベーターに行けばよかった!


 だが時すでに遅し。

 周りは面接希望者に囲まれ逃げ出すことはできない。


「悟くん、今日は出動ないの?」


 ないからここにいるんでしょうが。


「いつ出動する?」


 要請がないと出動しないよ。


 エレベーターが到着して乗り込む。もちろん、面接希望者も。

 ブーっという重量オーバーの音がして、でも誰も降りようとしない。

 俺が降りたいぐらいだけど、一番奥に押しやられて出ていけない。


「すみませんが、下りていただけますか?」


 とロビー職員の声がして、嫌がるような男性の声がしたあとエレベーターの扉が閉まった。

 乗るときに三階のボタン押したけど、下りれるかなぁ。


「サクラちゃん触っていい?」

「許可する前から触ってんじゃないわよっ」

「ブライトさん、羽根一枚ください。お守りにしたいんです」

「わっ。おいやめろっ」


 はぁ……この人たちは面接で落とされるだろうな。相手のことなんてまったく何も考えてないし。


「やめろ。嫌がってんだろうが」

「あ? なんだよ偉そう……あ、ごめんなさい。すみませんでした」


 ん?

 なんかやたら背の高い人がいるな。

 その人が注意してくれたようで、途端にエレベーター内は静かになった。

 そして三階に到着し、ドアが開く。


「す、すみません。下ります。ブライト、先に出れるか?」

「ここじゃ翼を広げられねえぜ」


 そりゃそうか。天井まで数十センチしかないんだし。

 と思ったら、長い腕が伸びて来た。


「オレの腕を足場にしていきな」

「おう。ありがてぇ、恩にきるぜ」


 さっきの長身の人だ。


「おい、ドア付近のやつ、一旦外に出ろ。下りる奴が出れねえだろうが」

「は、はいっ。すみませんすみません」


 な、なんで謝って――あぁ、なるほど。

 長身男性とすれ違いざま、お礼を言おうと見上げて理解した。


 右目の上下にざっくりと傷が刻まれた隻眼。顎にも傷があって、その上強面だ。

 萎縮するのも頷ける。

 でもそんな人相手でも気にしないのが動物だ。

 きっと本能で相手の人柄がわかったりするんだろうな。


「おじさん、ありがとう」

「あぁ」

「面接受かれよおっちゃん」

「あぁ」


 ぶっきらぼうな返事だけど、この人は多分、受かるだろうな。


「ありがとうございました。また会いましょう」


 そう告げて、頭を下げた。

 エレベーターのドアが閉まり、待機室へと向かう。

 その待機室のドアを開けた瞬間――――――。


 揺れた。


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