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86:メンバー発表。

「こ、これがちゅる~ん?」

「こ、こんな美味い物があっていいのか!?」


 猫大好きちゅる~んは、とろっとした液状のような猫用おやつだ。犬用もあるらしい。


 身綺麗になった動物たちは、総数が百を超える。

 当初の数から三倍ぐらいに増えているため、急遽、本部九階の会議室四つを使って今日の寝床とすることに。

 そのために会社に残ってるみんなで大量のペットシーツを敷きまくり、技術部の人には五トントラックでホームセンターに向かってもらったりと大忙し。


 一時間かかって動物たちを迎え入れ、今は食事をしてもらっている。


「食べるものは猫の時のままでいいのか?」

「あ? 何言ってんだよ兄ちゃん。俺ら猫だぜ?」

「人間の言葉を話してても、猫だってことに変わりないのよ」


 あ、そうか。そうだよな。

 彼らは野良猫でも、自分たちでなんとかお金を稼いで自分たちでキャットフードを買っていたらしい。

 いや、正確には――。


「秀さんに頼んで、買ってもらってたんだ。俺ら野良は店に入るのも怒られてたし」

「まぁたまに猫好きのアルバイト店員がいると話を聞いてくれて、渡したお金でキャットフードとか買ってくれたりしたんだけどさ」


 猫たちはチラシや新聞配達、迷い猫の捜索をしてお金を稼いでいたらしい。

 ただバイクがあるわけでもなく、猫にとって新聞は決して小さなものじゃない。一日に配達できる数は少ないし、猫だっていうんで給料は少なかったようだ。

 みんなで持ち寄ったお金で買えるキャットフードでは、なかなか満腹にはならなかったと言う。

 どおりでみんな、細いわけだ。


「はーい、じゃあみんなお皿を持って並んでぇ」

「「にゃーっ」」


 身綺麗になった猫たちだが、サクラちゃんたちとの接触はまだ控えなきゃならない。

 野良だったことで病気になっている子もいるかもしれないからだ。

 シャンプーのついでに、同行していた獣医さんが採血をしてくれている。結果が出るのは明後日頃。


「はい、お名前は?」

「みーこです」

「そう、みーこちゃんね。じゃ、ここにお名前書くからね」

「ありがとう~、人間のお姉さん」

「どういたしまして。私は佐々木美子って……あっ、私も『みこ』だった」

「わぁ~。私たちお揃いの名前だぁ」


 指令室担当の佐々木さんが猫部屋で食事の用意を手伝ってくれている。

 佐々木さん、みこって名前だったのか。知らなかった。


 猫たちには自分専用のお皿を使ってもらう。といっても想定外の数だし、お皿の準備はまだ出来ていない。今日は紙皿だ。

 その紙皿に名前を書き、他の子のお皿を使わないようにしてもらっている。

 これは獣医さんの指示で、猫エイズに感染している子がいた場合、お皿の共有なんかで移るからなんだとか。


 猫たちには体重に合わせた量のキャットフードに、それからおやつのちゅる~んと猫用の鶏ささみを配る。

 いきなりたくさん食べさせてもよくないって言うが、今日ぐらいはOKと許可も出ている、


「うみゃーっ、うみゃーっ」

「あ、お前、ちゃんとカリカリも食え!」

「ちゅる~んかけカリカリ最高だぜ」

「いい仕事したらちゅる~んくれるって、本当?」


 いや、そんな話はしてないけど。


「うおおぉぉぉぉ! 俺は働くぜっ。ちゅる~んのために働くぜ!」

「オレも!」

「アタイも! アタイの魅力で犯人を捕まえるわっ」

「尾行なら任せろ!」


 いや、なんか仕事内容おかしくなってきてないか?


「「働くぜー!」」


 なんかこう……間違った仕事内容を想像している猫たちがいるけど……まぁやる気になってくれるのはいいこと……か?






「配属は以上だ。はぁ、疲れた」


 後藤さん、お疲れ様です。


「オレ捜索隊! オレ捜索隊! やるぜ! オレはやるぜ!」

「ボク警備員! お店を守るぞ!」

「パトロールかよぉ。いつもやってたのと同じじゃねーか」


 動物たちが九階会議室での借りぐらしを始めて五日目。

 全員のスキル鑑定も終わり、ATORA社長や捜索隊や他グループ会社幹部を交えたリモート会議が行われ、彼らの配属先が決められた。


 同時に俺たち捜索隊の再編成の発表され――。


「悟くん、これからもよろしくね」

「おい悟。よろしく頼むぜ」


 と、相変わらずこのメンバーだ。


「というより、三石についていけるのがこのメンバーってだけだろ」

「言えてる」


 という同僚たちの声。

 まぁサクラちゃんは軽いし抱っこしたまま走れるからなぁ。ブライトも早く飛べるからついて来てくれるし。

 確かに俺にとって、この一匹と一羽が最高のチームなんだってのはわかる。


 変わらずなチームはもうひとつ。

 赤城さんたちのエースチームだ。


「いやもうエースは三石のチームだろ?」

「そうだね。三石くんたちがエースを名乗るべきだよ」

「ま、待ってくださいよ赤城さん、青山さんっ」

「じゃあ、どっちもエースってことでいいじゃない。二大エース! かっこいいわぁ」

「お、サクラ、良いこと言うじゃねえか。じゃ、二大エースってことで」


 後藤さん……全動物たちに部署発表して疲れてるからって、そんな適当な。


 とにかく全員の勤務部署が決まった。

 捜索隊本部で現場出動する動物たちもいれば、指令室でのサポートに回るもの。技術部のアシスタントまでいるし、そうかと思えば一階のロビーでの案内係からコンビニ店員までいる。

 ここだけじゃなく、ATORAグループ会社の方で働く動物たちもいた。

 いくつかのグループに分かれ、それぞれ別の場所で暮らすことになってしまうけれど、孤立することなく、必ず誰かと一緒だ。


「といっても、全員東京近郊だ。たまに集まる事だって出来るさ」

「うにゃな~。みんなそれぞれの場所で頑張って働くにゃー」

「おー! ちゅる~んのために!」

「「ちゅる~んのために!」」


 目的はアレだけど、一致団結するのはいいことだと思うよ。

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