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81:スキル鑑定にきたよ。

 オーランドたちがアメリカに帰った翌日――。


「え? 報告書と食い違ってる?」


 先日のアイス・ドラゴンの件で部長室に呼び出された。


「そうだ。お前からの報告書は、途中からライブカメラが――つまりドローンが二手に分かれて撮影したから、お前たちをメインに映していなかっただろう」

「はい。だから途中からは俺の完全手描きで提出してますよ。面倒くさかったんですから」


 二機のドローンには他の通路は広がった空間を探してもらうために別行動をしてもらった。

 まぁ結果的に、最初のあの場所に救助者はいたんだけどさ。

 ドローンと別行動になったし、その先の内容は俺とサクラちゃん、ブライトで思い出しながら書いたんだ。

 食い違っているなんて、そんなことあり得ないだろう。


「お前、通路を塞いでいた氷を割るとき、素で殴ったと報告書には書いてあるだろう?」

「えぇ、そうですよ。インパクトを使ったら割り過ぎて、救助者に氷の破片を飛ばすかもと思って。それで普通に殴ってたんです」

「はぁ……普通は素手で氷殴る奴なんて……いやいい。悟、記録の確認はしたか?」

「え、記録? いやでもドローンはいなかったし」

「いたんだよ。一号の鈴木が戻って来てたんだ」


 え、気づかなかった。氷割るのに必死だったし。

 その鈴木さんの映像を後藤さんが用意して、俺が氷を割っているシーンを見せられた。


「ここだ」

「……え、光った?」

「そうだ。光ったんだよ。お前、インパクトは?」

「使っていませんよっ。だって危ないじゃないですかっ」


 でも確かに光った。一度だけ光ってる。

 あ。


「もしかしてこの光り、氷の向こうにいる冒険者の明かりが――」

「だったら光るんじゃなくって、ずっと明るいはずだろう。お前側から当てた光が反射しているわけでもないぞ。そもそも懐中電灯なんか点けてなかっただろうし」


 明かりは十分あったから、それを必要とはしていなかった。それは確かだ。

 ならこの光は……何?


「あとな。こっちもだ」

「こっち……壁走ってる時のか」


 絵面が酷い……。サクラちゃんを肩車して氷の壁を走るなんて。

 落ちなくてよかっ……。


「光った!?」

「あぁ。光ったんだよお前」

「いや、でも……え?」


 あそこで使えるスキルなんて、何も持ってないぞ。

 総合身体能力強化のスキルはパッシブ――つまり常に発動し続けるタイプだから、自分の意思で発動するスキルと違って光らない。

 オートマッピングやナビゲーションは、発動させたときに光るけど、効果中は光らない仕様だ。

 インパクトは使ってないし……え、なんで?


「はぁ……悟。お前、今からギルドに行って、スキル鑑定してもらってこい」

「え、じゃあこれ……スキルを習得したひか、り?」

「それ以外だったら映像解析せにゃならん。その方が面倒くさいんだよっ」

「あー……はい。じゃ、行ってきます」


 スキルの自然習得なんて、そう滅多にあるものじゃないだろうに。なんで?






「おはようございます、三石くん。後藤さんから連絡貰ってます。まぁたスキルを習得したんだって?」

「いや、まだわかりません。だから鑑定を受けに来たんです」


 スキル鑑定は機械で行われる。その機械を開発したのもATORAの技術者だけど、活躍する場は冒険者ギルドなのでここで使われている。

 普通の人が鑑定を受ける場合、鑑定料を支払わなきゃいけない。でもATORAグループの社員だと無料だ。

 ついでなので――。


「僕んとこの子供たちも鑑定を頼みたいんだ」

「え? フ、フクロウの?」

「けっ」

「かってー」


 どうしてヴァイスは、誰彼構わずガンを飛ばすのだろうか。ツララの前に立っているあたりは、妹を守っているつもりなんだろう。


「捜索隊社員のブライトの子供たちなんです。ダンジョンベビーなものでして」

「あ、えぇ、知ってますよ。テレビで見てましたし。えっと、生後どのくらいでしたっけ?」

「ツララは一カ月で、ヴァイスは二カ月ぐらいだっけ?」

「おぅ。そんくらいだ」


 今日はスノゥは本部でゆ~ったりママ休日を楽しんでいる。

 まぁ鑑定を受けるだけだし、半日もしないうちに帰るけども。


「じっとしていられるかなぁ」

「ツララ。鑑定してもらってるときは、じっとしてるんだぞ。いいな?」

「にぃにといっちょ」

「いや、それは無理かなぁ。二羽同時だと、どっちがどのスキルかわからなくなるし」

「にぃにといっちょっ。いっちょっ」


 ツララは小さな羽根を広げて、ヴァイスにしがみつく。ヴァイスもツララと同じように羽根を広げ、ひっしと二羽で抱き合う形に。

 それを見てギルドの職員の顔が緩む。


「ねぇ職員さん。鑑定って複数人同時に鑑定出来るものなの?」

「いい質問だねサクラさん。実は出来るんだよ。まぁ鑑定機の中に入る人数までだけどね」

「あのカプセルよね?」

「そう。で、中に入った人のスキルが一覧として表示されてね。前にこっちが計器の操作している間に、悪ふざけした奴が二人入り込んでねぇ」


 結果、一覧には二人分のスキルが表示されたが、どのスキルがどっちの奴のものかまではわからなかったという。

 高校を卒業したばかりの子たちだったそうで、冒険者登録不可、ダンジョン侵入不可という重い処分が下されたそうだ。


「複数で使うという想定はされていなかったし、万が一機械に不具合が生じたら困るし、人体への影響もねぇ」

「影響あんのかよ!?」

「いや、それがわからないから、悪ふざけしたことに対して厳しく処罰したんだよ。その一件のあと、ATORAさんの技術部と協力していろいろと調べたのさ」

「影響があるかどうか、ですか?」

「そ。まぁ結果として、なーんも影響はないってのがわかった。ただ機械への負担はあるみたいでね」


 だからこれまで通り、ひとりずつしか検査しない。

 負担がなくても、表示される結果は『合計』でしか表示されないから、誰のスキルなのかってのがわからないからっていうのも一番の理由だ。


「ヴァイス。あなたひとりでも鑑定出来る? お兄ちゃんだものね?」

「あ、当たり前だ! ボクは兄貴だ。ひとりでもできらぁっ」

「いい子ね。じゃあ二羽で検査したあと、ヴァイスだけでもう一度検査っていうのはどうかしら? それで、最初に検査したスキルの一覧から――」

「なるほど。兄貴くんの分を除いたものが妹ちゃんのスキルってことだね」


 ほぉ。サクラちゃん、あったまいぃ。



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