表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

74/124

74:殴った方が早くね?

――[魔力フィルターの反応が全然ないな]

――[悟くんたちどうなった?]

――[配信映像が氷しか映ってない件]

――[それな]

――[一号さん一回サクラちゃんのとこ戻ったら?]

――[残りは二十四号さんに任せとけばいいっしょ]

――[サクラちゃんの活躍を見たい]

――[金髪の新人君を映してぇ~]

――[え、まだ気づいてない人いたの? あの金髪、アメリカのハンターだよ]

――[ナ、ナンダッテェー(AA略]




「見つけたぜ! きっとアレだっ」


 ブライトが見つけた『熱』は、アイス・ドラゴンから近い位置。

 だけどその熱源は氷の中だった。


 いや。その氷の奥に違いない。

 救助要請が入った時には「行き止まりだったから引き返したら道がなくなっていた」だったんだ。

 たぶん、冒険者が道に入ってから、あいつのブレスで塞がれたのだろう。

 追われていたのか、それともまったく気づいていないのか。それはわからないが、今確実にわかっているのは氷の向こうに熱源がある事。

 もし彼らがブレスで氷漬けにされていたのなら――。


「僕のサーモセンサーで見えるはずがないからね」

「あっ。そうね。氷漬けになってたら、温かくないものね」

「あぁ、そうだ。彼らは生きてる。あの氷を砕いて救出しないと」


 うっかりオーランドがアイス・ドラゴンを倒したら大ごとだ。今ある通路や空間が塞がれてしまう恐れがあるのだから。

 そのためにも――


「オーランド! あそこに要救助者がいるんだっ。ドラゴンがいると邪魔だから、少し移動してくれっ」

「OK」


 オーランドがバックステップをしながら、アイス・ドラゴンを誘導。

 サーモセンサーに反応があった場所から遠ざかるのを確認して、そこへと向かった。

 うぅん……奥の様子はまったく見えないな。

 この氷、厚さはどのくらいなんだよ。


「サクラちゃん、ピッケルとか金槌とか、何か叩けそうな物はある?」

「えぇっと、ちょっと待っててね」

「悟よぉ、お前がぶん殴った方が早いんじゃね?」


 ……そうか!

 拳ガードもあるんだ。氷ぐらい!


「サクラちゃんとブライトは少し離れてて。砕けた氷が飛んでくるかもしれないし。あとドラゴンの動きも要チェックで」

「わかったわ。こっちに来そうになったらすぐ知らせればいいのね」

「僕もフェザーで援護する」


 アイスロックだって砕けたんだ。同じ氷じゃないか。


「インパクトッ!」


 ――で砕ける!


 ガキンッと硬いものがぶつかり合う音。それからミシミシと氷にヒビが入る。

 ヨシ。いける!


「インパクトォォーッ!」


 何度も何度も氷を殴り、その度に砕けて飛び散っていく。

 アイス・ドラゴンのブレスだからなのか、魔力が込められているからなのか、アイスロックより硬い。

 でも砕けないほどじゃない。

 ただ氷が分厚くて、通路への貫通はまだだ。


「おっ。悟! サーモセンサーの熱源が動いてるぜっ」

「え? 本当かブライト!」

「あぁ。なんかこっち来てるように見えるぞ」


 音で気づいたのか? つまり生きてるし、動く気力もあるってこと。

 急げ。急げ。

 ドラゴンがこっちに気づく前に助け出すんだ。

 オーランドがうっかりする前に助け出すんだ。

 いた――見えた!


 氷の向こう側で何かが動くのが見えた。

 見えたってことは、氷の厚みは残りわずかってこと。力加減しないと、氷を向こう側に吹き飛ばしてしまう。

 声は届くか?


「氷を砕きますっ。正面に立たないでっ。聞こえますか!」


 応答なし。

 クソッ。もう少し削るか。

 力加減をして……スキルなしでも少しなら削れないか?

 ヨシ。いけそうだ。

 少しずつ、少しずつ削って――



――[え、サクラちゃんたちアイス。ドラゴンエリアにまだいるじゃん!]

――[氷の柱んところ隠れてる?]

――[隠れてる姿もかわいい]

――[悟くんは?]

――[ちょw あの外国人ひとりでドラゴンと戦ってるやんww]

――[防戦? いや、遊んでる?]

――[悟くんのパーティーにはいるぐらいだしやっぱバケモノかよ]

――[去年のハンターランク三位だぜあいつ]

――[ちょwwwww」大草原通り越してジャングルになっちゃうwwwwww]

――[悟くんはどこ?]

――[あの氷の中じゃない? あ、ほら壁に穴空いてる]

――[うおっ、光った。インパクトで氷を砕いてるのか]



 まだか。まだ届かないのか!?


「――たのか!?」


 聞こえた!


「聞こえますか! 聞こえたら返事してくださいっ」

「聞こえるっ。救助の人か!?」

「そうです! 氷を砕くので、正面に立たないでくださいっ。砕けた氷が飛んでいきますのでっ」

「わ。わかった。少し奥の壁際に下がりますっ」


 よかった。

 人影が後ろへ下がっていく。少ししてその影が大きく手を振っているように見えた。


「ふぅ……インパクトォォォォーッ!!」


 この一発で!

 願いを込めて拳を叩きつけると、ガラガラと氷が崩れてその先の空間へと繋がった。

 ち、力入れ過ぎた?



「大丈夫ですか!?」

「悟くんっ、開通したの?」

「あぁ、もうこっちに来て大丈夫だよサクラちゃん」

「よかったわ~。凄い音がしてたから」

「最後にすげー光ってたな。気合入れ過ぎだぜ」


 サクラちゃんとブライトも合流。そして――


「た、助かった!」

「急に道がなくなって焦ったんですよ。外はどうなっているんですか?」


 氷の奥にいたのは五人の冒険者。

 彼らは外に何がいるのか、知らないようだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ