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64:オープン前夜なのに。

「あの、オープンは明日ですよ?」

「きゃっ。な、生悟くんっ」


 生……俺って生物?


 悪ふざけかと思った社長のグッズ販売が現実になった。

 いやあれから半月ぐらいしか経ってないのに、なんでグッズが完成してるんだよ。

 なんでも捜索隊技術部が一枚絡んでるらしくって、物凄い速さでグッズを作り続けていたんだとか。


 ポップアップショップって言うんだっけか、そのオープンは明日、金曜日の十時だ。

 今日は木曜日なんだけど、なんでもう並んでる人がいるんだよ。


 一号店は捜索隊本部の一階。

 カフェの向かい側は捜索隊の歴史――みたいなパネルを展示したスペースになっていたけど、これが無駄に広がった。

 そもそも展示品を見に来る人なんていない。『会社』なんだし、部外者は入っちゃいけないって、普通は思うからね。

 その展示スペースにちょっと手を加え、ショップに作り替えた。


「まだ十四時間はあります。ずっとここに並んでるんですか?」

「は、はい。だってグッズ、売り切れちゃうかもしれないし」

「でも夜は危ないですよ。それに、今夜は少し雨も降りそうですから」


 天気予報ではそうなっていた。小雨だってことだけど、でも濡れたままだと風邪を引いてしまう。

 列にはもう十三人並んでいる。

 どうにかなるといいんだけど。


「悟くん、おまた……まぁっ。もしかして明日のお店のために並んでるの?」

「サ、サクラちゃんっ。いやぁー、かわいいっ」

「おい、サクラちゃんだ」

「生サクラちゃん!」


 サクラちゃんも生物だったのか。


「でもでも、今夜は雨だって、さっき天気予報で言ってたわよね? 風邪引いちゃうわよ、みなさん」

「サクラちゃん優しいぃ~」

「うわぁ、夏毛でもふわもこじゃん」

「マジ天使」

「あ、そうだわ。悟くん、こういう時は整理券、よ」


 整理券? あぁ、前もって入場時間を書いた紙を渡しておくとかそんなやつのことか。

 でもこの分だと夜中にも人が並びそうだよなぁ。


「んおっ。な、なんだこの列は?」

「あ、後藤さん。この人たち、明日のショップオープン待ちだそうで」

「ご、後藤さん!?」

「声しか聞いたことなかったけど、イケオジじゃん」

「後藤さんのアクスタもあるのかな」


 後藤さんは生じゃないのか。


「しかし、今日は雨だぞ。君たち、明日改めて並んではどうだ?」

「せっかく確実に買える順番で並べたのに、明日またとかされたら先頭になれないかもしれないじゃないですか!」

「そうだよ後藤さんっ。俺なんて山口から来たんですよ。グッズ買えなかったらもう生きてる意味なんてないんだから!」


 え、そこまで?


「後藤さん、整理券を配ったらいいと思うの」

「整理券? なるほど、それはいい案だ」

「あ、あのっ。整理券貰っても、他にいくとこないですし」

「ん? ホテルは?」

「いえ、一晩中並ぶつもりで来たんで予約していません。ホテルに泊まるとお金もかかりますし」

「俺たちも」


 凄いな。グッズを買うためにここまでするなんて。

 あ、並ぶ人が増えた。


「ねぇ後藤さん。夜は会議室使ってないでしょ? 希望する人は会議室で休ませてあげたら?」

「サクラ。そんなこと、俺の一存で決められる訳ないだろう」

「コーヒー牛乳社長なら許可してくれそう」

「捜索隊の本部ビルに泊まれるの!? 泊まってみたいですっ」


 社長はコーヒー牛乳っていうのが定着しちゃってるな。この前いちごミルク飲んでたけど。


 あ、そうだ。


「後藤さん、どうせだからこの機会に捜索隊を知ってもらうのもいいんじゃないですか?」

「悟、お前までいったい何を」

「とりあえず社長に確認をとってください。いいって言ったら、その時は会議室を使いましょう。整理券は夜間スタッフにロビーで受け付けてもらえばいいだろうし」

「はぁ……社長が許可してくれなくても、文句言わないでくれよ」


 後藤さんが電話をしている間に、俺は受付に行ってパソコンを操作。

【ポップアップショップの入場列に並ばれる方へ】という案内を書いて、プリントアウト。

 受付で整理券の配布。希望者は二階会議室で休息可能という内容だ。


「こんなのでいいかな?」

「えぇ、いいと思うわ。あと二階の会議室へ、見てわかるような案内が欲しいわね」

「案内か……。ナビみたいに矢印で案内でいいかな?」

「いいと思うわっ」


 エレベーターを降りたところから矢印で会議室まで誘導すればいいな。


「はぁ、悟」

「社長の許可が出たんですね」

「なんでわかるんだよ」


 溜息を吐きながら後藤さんがやってきた。

 その溜息のせいで、許可が出たってわかるんだよ。後藤さんが面倒くさそうにしているっていうのは、そういうことだから。


「それで、お前の言う捜索隊を知ってもらうって、どういうことなんだ?」

「はい。救助に使用する担架や野宿の時に使うエアマットを使ってもらうんです。それで捜索隊員を体験してもらおうと」

「……それ、捜索隊じゃなくても使ってるぞ。エアマットなんてキャンプ用品でもあるし」


 ……え。

 俺、凄くいい案出したと思ったのに。




**************************

私も都会に住んでいたら、ポップアップショップの列に並びたい・・・

そもそもポップアップショップなんてものが激レア扱いな日本海側だからorz

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