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60:あわわあわわわあわわわ

【Sorry...僕は君の気持ちには応えられない】


 は?

 なんの気持ち?


 目を覚ますとオーランドからメッセージが二件届いていた。

 一件目がこれ。

 二件目が……。


【君とはただの友人でありたい。だからサクラちゃんとブライト一家の写真をよろしく】


 だった。

 写真?


 なんかあったかな。

 フォルダを開いて適当な写真を……。


「え……なんで俺の写真が?」


 しかも全部俺が寝ている写真だ。なんで!?


「むぅ~……おやつぅ~?」

「サクラちゃん、いつの間に……まさかこの写真……サクラちゃん、おやつはまだだけど、この写真」

「ん~」


 寝ぼけているサクラちゃんを起こしてスマホの画面を見せる。


「んふふ。よく撮れてるでしょ~」


 やっぱりか。

 メッセージの送信履歴を見ると、この写真が何故かオーランドに送られている。

 なんで……。


 オーランドからのメッセージ、既読の見直していると、寝姿の写真を送ってくれと言うものがあった。

 Sorryメッセージの直前だ。

 サクラちゃん、これを見て送ったな。


 はぁ……サクラちゃんやブライトたちの写真って意味なのに、なんで俺の写真を。

 それでオーランドのこの謎メッセージか。気持ちには応えられないって、どういう意味?


「はぁ、目が覚めた。今何時だ……二十一時三十四分……うわっ、もうこんな時間!?」


 社員食堂のラストオーダーは二十一時までなのに……はぁ、どうしよう。

 風呂にも入りたい。


「そうだ。ATORAの銭湯なら深夜一時までやってたな。あそこも食堂があったし――サクラちゃん。風呂とご飯にいくけどどうする?」

「んー……お風呂行きたいわ! あ、でも私……」

「ちょっと電話してみるよ。貸切風呂を使わせてもらえないか」

 

 同じ姉妹企業だし、なんとか融通をきかせてくれないかな。


「あ、もしもし。ATORAスーパー銭湯さんですか?」






「きゃぁーっ」

「サクラちゃん、走ったら危ないぞ」

「銭湯よ、銭湯! 私、初めてだわっ」

「めちぇー」

「ケッ。ウルセー、ウルセー」


 ブライトの息子は、すっかりウルセーが口癖になったな。


 銭湯に問い合わせしてみると、何故か「社長と変わりますので」と言われ、待っていたら本当に社長が電話に出た。

 あの人、来てたな。

 結果としては、サクラちゃんも貸切風呂を使ってもいいってことになった。

 タオルなんかは現地で購入することにして出発しようとしたら、ブライトたちも行ってみたいと。


 ぞろぞろと銭湯に行って、受付を済ませて貸切風呂へ。

 レ、タヌキやフクロウがいるからか、受付ではかなり目立ったな。


「まっ。お風呂ってひとつじゃないのね」

「ん? おぉ、本当だ。三つある」


 普通の風呂、ジャグジー付き、あと炭酸湯か。

 ん? なんか大きな桶が置いてあるな。よし、これにお湯を入れてブライトたちに使わせてやろう。


「ブライト。温度は低い方がいいのか?」

「さぁ?」

「私たち、お湯を使ったことがないからわからないの」

「そっか。じゃあかなり冷ました方がいいだろうね」


 桶に風呂の湯を汲んで、そこに水をどばどば追加して冷ます。

 雛たちのこともあるし、水位は低めに。


「にぃに、ぱちゃぱちゃ~」

「チィービ。暴れるなチィービ」


 そう言いながら小さな翼をパタパタしてしぶきを上げてるのどこのどなたか?


「きゃわわわわわわわっ」

「サ、サクラちゃん!? どうしたっ」

「あわわわわわわわわわわわわ」


 あー、ジャグジーか。


「お、おい、サクラが沸騰しているぞ!?」

「きゃーっ。サクラさんっ」

「あ、いや、大丈夫だから」

「サクラアァァァァァッ」

「サクラさぁぁぁぁぁんっ」


 いや、ただの泡だから……。






「はぁ~。ジャグジー最高だったわぁ」


 その割に大騒ぎしてたけどね。


「ったく、てっきり煮立ってんのかと思って、焦ったぜ」

「ほんと。でもよかったわ~、ただの泡だったなんて」

「あわわわ」

「アワアワウルセーぞサクラ」

「ご、ごめんなさい。みんなに心配かけちゃって」


 俺は全然心配してなかったから謝らなくていいよ。


「やぁやぁ、三石くん」

「え? あ……社長」

「風呂上りにいちご牛乳はどうだい?」


 コーヒー牛乳じゃないのか。


「今日の気分はいちご牛乳でね」

「はぁ……とりあえず遠慮しておきます」

「……そうか……美味しいのにな」


 凄い寂しそうに言わないで欲しい。断った俺が悪いみたいじゃないか。


「そうだっ。君たちは長時間勤務明けだったね。ここに来ているということは、自宅には帰らず仮眠室を使ったか」

「はい。母には連絡しているので、明日の勤務明けに帰ります」


 明日の勤務も半日だけだ。午後には帰ることになる。

 

「じゃ、夕食は? まだなのかい?」

「えぇ。社員食堂がもう終わってるから、風呂のついでにここの食堂で何か食べようと思いまして」

「よし。じゃあわたしが奢ろう」


 社長が?


「いいんですか?」

「いい。サクラちゃんやシロフクロウ一家もどうだ?」

「きゃーっ。社長ぉ、ありがとうございます~」

「よっ。社長、太っ腹だね!」

「しゃっちょー」

「っけ。じゃー食ってやるよ」

「よぉーっし。じゃあ行こう! 金森、あそこ予約しといて。個室ね」


 あ、秘書さんいたんだ。スーツじゃなくって私服なんだな。勤務時間外か。なんかかわいそう。


 って、予約ってどこに連れていく気!? 



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