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54/123

54:ユーザーが退席しました。

「つまり、捜索依頼が出てるのは六人組のパーティーで、ここにはその内四人しか登録してないってことか?」

「あぁ、そうだブライト」

「え? え? そ、それって……二人はここに到着してないってことじゃ……」

「何故登録されていないのか、理由はいくつもある」


 ひとつ。二人が登録し忘れただけ。

 ふたつ。途中でその二人は逸れてしまった。

 みっつ。途中でその二人は亡くなっている。

 あとはまぁないと思うけど、二人は途中で帰った――か。


 もし帰っているならギルドに来ているだろうし、それは考えづらい。

 ひとつめだといいんだけど、その線も低いだろうな。だって四十階、四十一階ではちゃんと登録していたんだ。この階に限ってふたりが登録し忘れるなんてあるだろうか。

 可能性が高いのは、どっちもあまりよろしくない内容。

 ふたつ目にしても、逸れた二人が生存しているかどうか。


 いや、この階層、もしくはその先にいるだろう四人の心配もしないとな。


「六人がダンジョンに入ったのは一週間前だ。予定では二泊三日で戻ってくることになっていたらしい」

「四日? 五日? 結構過ぎちゃってるわね」

「あぁ。さて、どっちを先に捜索するべきか。この階層も厄介だからなぁ」


 俺は通路の先を見て溜息を漏らす。

 ここは文字通りの迷宮で、上下左右の概念がない。

 立体的に入り組んだ階段や通路は、他の人から見ると、まるで逆さまに人が歩いているように見えたりする。

 いや実際そうなんだけど、そのせいで迷いやすい階層のひとつだ。

 

「俺はナビがあるから迷うことなく下の階層に行けるけど、普通の冒険者じゃそれは難しい」

「地図を持ってても?」

「あぁ。一度でも地図から目を離すと、もうどこを歩いていたかわからなくなるんだってさ。あぁ、そうだブライト。ここでは下手に上の方を飛んでしまうと、重力に捕まって落下するから気を付けて」

「へ? なんだよそれ」


 頭上や下にも通路がある。そこへ飛び移ろうとする者を妨害するためのシステム、なんだろうな。

 一定以上階段や通路から離れると、重力が逆転してさっきまで上だったのが下になって落下する。

 

「そ、それじゃあ飛ぶなって言ってんのと同じじゃねえか」

「俺が抱っこしようか?」

「い・や・だ。おっ、いいこと思いついたぜ」


 いいこと?


「僕が四十二階を捜索する。あそこはやたら高い木ばかしだし、凄く飛びやすいんだ」


 確かに四十二階の木は大きい。高さ五十メートルを超えるものばかりだから、上下の空間は広い。

 ブライトにとっては飛びやすいのだろう。


「僕がってあなた、まさかひとりで捜索する気!? ダメよダメ。危険過ぎるわっ」

「なんだい。僕が心配なのかい? はっ、その必要はないね。なんたって僕は、空が飛べるのだから」


 飛べることを自慢されても……。だけどサクラちゃんの意見には賛成だ。


「ブライト、危険だから――」

「忘れたのかい? 僕のスキルのことを。僕には攻撃スキルがある。それにサーモセンサーを使えば、生きてる人間なら簡単に見つけられるんだ」

「だけど」

『三石。ブライトにはドローンを付ける。どうせドローンはその階だと落下の可能性もある。それに四十二階には飛行型モンスターがいないんだ。ブライトにとって好都合なマップだろ』

「後藤さん……」

『一号鈴木です。ブライトは俺がしっかり見てるんで、安心してください』


 二手に分かれる方が効率的だ。それはわかる。

 ……そう、だな。四十二階なら、空を飛べるブライトに独壇場だろう。


「わかりました。ブライトと二手に分かれます」


――[ま?]

――[あれ? ってことはサクラちゃん?]

――[せっかくドローンが実装されたのに、サクラちゃんの活躍が見れない!?]


「ブライト、気を付けるんだぞ。何かあったら無線で直ぐ知らせてくれ」

「オーケーオーケー。二人より先に遭難者を見つけるさ」

「ブライト……」

「わかってる。みなまで言うなって。きっと生きてる。そうさ。そう信じようぜ」


 ブライトはわかっていたのか。四十二階にいるだろう二人の生存率が、そう高くないことを。

 いや、今は生きてると信じよう。


「鈴木さん、アラームをセットしてください。五時間経っても見つからない時は、いったんここで落ち合うことにしましょう」

『了解。時計セット』

「じゃ、ブライト」

「あぁ」

「気を付けるのよっ」


 ブライトはピョンピョンと跳ねるようにして階段の方へと向かい、そこからは翼を羽ばたかせて上の階へと戻っていった。

 その後ろをドローンが飛んでいく。


「サクラちゃん。俺たちも行こう」

「えぇ。この階で見つかるといいわね」


 見つかりそうな気はする。どこかで迷子になってるんじゃないかって。

 ただ、二泊三日の予定で来てるなら、食料はもう尽きているだろう。

 モンスターだっているし、早く見つけないと。





――[サクラちゃああぁぁぁん]

――[おい、視聴者数減ってないか?]

――[俺は見るぞ。きっと五時間後にサクラちゃんが映る。だから待つ!]



**************************

生配信、去年までやってた進撃の巨人のソシャゲのゲーム情報生配信ぐらいしか

見たことないんですけど、YouTubeって視聴者が退席してもわざわざメッセージとか

出てこなかったですよね?

でもなんか虚しさを伝えたくて敢えてタイトルはあんなのにしました。

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