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53/125

53:働かざるもの焼き鳥になる。

「働かざる者、食うべからずだ!」

「よくそんな日本語知ってるな」

「なんでっ。なんであんたがついて来るのよっ」

「僕が優秀だからさ」


 出動要請が来て、西区のダンジョンへと向かう。

 雨の日は誰かに送ってもらうけど、今日は晴れているので自転車で移動。

 頭上と後ろとでガミガミとうるさい。


 ブライトはスノゥと子供たちを養うために、働くことを決めた。

 どこに就職したかっていうと、捜索隊ここだ。

 スキルを持っているし、しかも飛べる。捜索・・には持って来いのアニマルだって、後藤さんも太鼓判を押している。

 それもあってサクラちゃんはご立腹だ。


「悟くんについてこれるのは、私だけなのにっ」

「いや……ブライトは飛べるし、飛行速度は結構早いからね」


 フクロウの飛行速度は七十~百キロ前後と早い。ハヤブサとかはもっと早いらしいけど。

 スキルがなくてもこの速度だ。俺がほんの少し力を抜けば追い付ける。

 それにフクロウの視力は人間の数倍。視野は狭いらしいけど、その代わり首の可動域が広いからカバー出来る。

 上からその視力で要救助者を探すには適しているだろう。


「ま、迷宮構造だとそういう機会もないだろうけど」

「ん? ん? 悟くん、何か言った?」

「いや。さて、到着だ。ブライト」

「おうとも」


 バサバサと下りて来たブライトに、追跡装置の入った小さなカバンを背負わせる。


「今日から配信用の撮影はドローンがやってくれる」

「えぇーっ。私のお仕事は? ねぇ?」

「これまでサクラちゃんの帽子にカメラを付けて撮影して貰っていたけど、それだとクレームが多くて」

「え!? わ、私の撮影が悪かったの? どうしましょうっ」


 いや、サクラちゃん見せろってクレームが多かったんだよ。

 それでドローンが標準装備になった。


「でもこのドローン、小さいのね」

「あぁ。撮影専用の小型ドローンだからね」

「それと僕の追跡装置がどう関係しているんだ?」

「このドローンは追跡装置を追いかけるんだ。要救助者がいる階層までは、自動追尾に設定してある」


 現場階層に到着したら、そこからは後方スタッフが直接操作する。

 また、ドローンが行方不明になった時も装置が役立つ。近づけば音がなるように作られているからな。

 その場合、探すのに一番適しているのがブライトってことだ。


「ふふっ。この僕の能力を、よくわかっているようだね。任せな、僕がドローンの面倒を見てやろう。さぁドローン、来るんだっ」


 ドローンがそれに応えるかどうかはおいといて、ブイィーンっとモーター音を鳴らして宙に浮かび上がった。


「ブライトは上から。サクラちゃんは地面に近い目線で要救助者を探すんだ。上からだと見えない、低い位置に痕跡があったりもするからね」

「そうね! その通りだわ! 悟くん、行きましょうっ」

「あぁ、行こう」


 はぁ……機嫌が戻ってよかった。


――[お、配信!]

――[おぉ。ブライト参戦か]

――[レッサーパンダ、フクロウ、ゴリラ]

――[おい、ゴリラ超えだぞ 悟くんに失礼だろう]

――[待てぽまえら。サクラちゃんが映ってるぞ!!]

――[神アプデキタ――(゜∀゜)――!!]






「はっはーっ! 森は僕の庭みたいなものさぁー」

「ブライトッ。あんまり離れるなよっ」

「一羽で勝手に行くんじゃないわよ! 悟くんを困らせるようなら、焼き鳥にするわよっ。私、チキンは大好きなんだから!」

「んげっ。ぼ、僕を食べようっていうのか!?」

「はいはい。ちゃんと周囲を見て」


 一週間前、西区の四十階へ向かった冒険者が戻ってこない――という報告をギルドから受けた。

 二日前にはご家族にも知らせ、捜索隊を要請するかどうか確認したそうだ。

 そして今日、要請が来た。


 四十階の端末にはちゃんと、彼らの登録があった。

 そこで念のため、四十五階の端末を調べると――登録なし。

 四十階に戻って、そこから四十一階へ。

 四十一階の端末にも登録があったから、次は四十二階だ。


 ナビに従って四十二階へと到着し、今は四十三階を目指している。

 この四十二階はオープンフィールドと呼ばれる、まるで外にいるかのような景色が広がる階層だ。

 西区は十五階もそれに近いけど、壁に囲まれた巨大な部屋がいくつもあるタイプなので厳密には違う。

 さっそくブライトの能力全開だな。


「お、悟。階段が見えたぜ」

「よし。まずは下の階に行って、端末を確認する。登録があれば四十四階を目指すよ」

「登録がなければこの階層にいるってことね」

「たぶん、だけどね。可能性は高いだろう」


 四十二階は巨木が茂る森になっている。端から端まで、全て森だ。

 ダンジョンの中だから太陽はない。なのに薄明るいのはダンジョン所以だろう。

 でもこれが迷う原因なんだよなぁ。

 太陽がないから方角がわからないし、どこを見ても同じような明るさだ。

 方向感覚が完全におかしくなってしまう。


「それにしても、こういう所だとやっぱり神速は羨ましいな」

「あ、あら、そう?」

「あぁ。俺は身体能力が高いってだけで、足元が悪ければ当然歩き難いし走るのも苦労するからね」


 何度も根っこに足を取られそうになったし。


――[その足元にあった根っこを破壊しながら走ってたのは誰だよ]

――[森林破壊www]

――[まぁリアルな森林だったら問題だけどここはダンジョンだしな]

――[悟くんが蹴り飛ばして破壊された根っこ……復元してたよな……]

――[ダンジョンの修復機能なんだろうな]

――[なんかきもかった]


「悟、端末だぜ」

「はいはい。えっと…………え?」

「どうしたの、悟くん?」

「登録……されてるんだけど……六人中、四人しか登録がない」


――[え?]

――[どういうこと?]

――[仲間割れ!?]

――[いや逸れただけだろ]


 残りの二人は四十二階ってことなのか?


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