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43/125

43:密入国。

 ――上空一万メートル弱を飛行する機内の貨物室。


「寒くないか?」

「えぇ、あなた。でもこの子のことが心配……」


 ネットで固定された箱の上で、白い塊が二つ、互いに身を寄せ合っていた。

 シロフクロウだ。

 

「君のこともこの子のことも、僕が温めるよ」


 そう言って雄のシロフクロウが翼を広げ、雌を包み込むようにして温める。

 その雌は懐で卵をひとつ、温めていた。


「ありがとう、あなた」

「もう少しで日本に到着だ。頑張ろう」

「えぇ……でも、本当に大丈夫なのかしら。その日本人……」

「大丈夫だ。きっと大丈夫。彼はスキルを手に入れたタヌキをパートナーとして、人助けをする仕事に就いている人間だ。そして……僕らの子と同じ、ダンジョンで生まれた人間。きっと助けてくれるはずだ」

「そうね。そうだといいわね……」


 二羽を乗せた飛行機はまもなく成田空港へと着陸する。

 機体を揺らす振動が始まり、ブレーキ音が聞こえ出す。


「さぁ。準備をしよう」

「えぇ」


 雌のフクロウは脇に置いてあった小さな鞄に卵を入れ、紐に頭を通す。

 暫くすると貨物室の扉が開き――


「わっ。な、なんだ?」

「い、今のフクロウか!?」


 貨物を取り出す空港職員の驚いた声が響く。

 扉が開いた瞬間、二羽は全力で飛び出した。

 西の空が赤みを帯び、時刻は夕暮れ時を告げる。

 

 大空に舞った二羽の白いフクロウは、そのまま真っ直ぐある方角へと向かった。

 その方角にあるのは、株式会社ATORAの捜索隊本部ビル。

 彼らの求める人物が、きっとそこにいる――そう信じ、二羽は疲れた体に鞭打って羽ばたいた。

 

 


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