216:チョコ
「なんで君が一緒に来るんだ」
「抜け駆けなんて許さないわよ、オーランド」
翌朝、食堂でニコールとバッタリ。
まぁバッタリと言っても、同じゲストフロアにいるのだから顔を合わせるのもおかしくはないのだけれど。
食事のあと、彼女はずっと俺たちの後ろを付いて回った。ダンジョンへ行くヘリにも乗って来た。
そしてオーランドとバトル開始。
「ボクらは01に行くわけじゃないぞ」
「嘘ね。絶対嘘よ」
嘘じゃありません。
その01ダンジョンの最下層は百階。ただ、隠しダンジョンへ入る方法はまだわかっていない状況だ。
アメリカランキング一位のジャックって人が、頑なに口を閉ざしているらしい。
他のハンターや世間の意見だと「仲間を大勢失ったのに、未だに独占しようとしているのか」って非難が多いそうだ。
俺は……違う意見だな。
たぶんその人は、大勢の仲間を失ったからこそ世間に公表すべきじゃないと判断したんだと思う。
だってランキング一位が参加するパーティーだぞ?
間違っても、中堅層のハンターにランキング一位が混ざった――なんてパーティーじゃないはず。
実際、二位の人も一緒にいて、その人は亡くなったって話だし。
隠しダンジョンに挑んだのは、同じハンターギルドに所属していた人たち。
全員、一流ハンターだろう。
俺たちの中で最強なのあオーランドだが、彼でもレベルは200。一位の228にも届いていない。
そして、隠しダンジョンのある01ダンジョンの通常エリアは最下層百階で、適正レベルは150だ。
そこではレベル上げなんて、もうできないとこまで来ている。
オーランドのレベルも上げなきゃならないしな。
「……わかった。そこまで言うならニコ、君を連れて行ってあげよう」
「ふん。最初からそう言えばよかったのよ」
「ただし条件がある」
「条件ですって。意地汚い男ね。いいわ、聞いてやろうじゃないの」
オーランド、何を言うつもりだ?
「ボクらのパーティーへ入れ」
オーランドはそう言った。そしてニコールは――。
「いいわよ」
と返事をした。
パーティーに入れてどうするんだ?
「吹き飛びなさいよ! あーっはっはっはっは」
なるほど……こういうことか。
ブルックリンのダンジョン百五十階。オープンフィールドでは囲まれやすい。
前方をニコールが、右はオーランドが、そして左を真田さんが引き受けモンスターを殲滅する。俺は後ろからやってくる奴らを、とにかく殴り続けた。
サクラちゃんとヨーコさんはみんなの真ん中で、ブライトとヴァイスは上空から援護してくれる。
そして今日から、スノゥとツララも一緒だ。
あまりにも数が多い場合、スノゥがモンスターの後ろ側に飛んで行ってアイス・フィールドを展開。
そのあまりの寒さに、モンスターの動きは鈍る。
そしてツララは、パラライズ・フェザーでこれまたモンスターの動きを鈍らせてくれた。
サクラちゃんは見えざる鎧で万が一に備え、ツララとヴァイスをガード。
ヨーコさんはナースでみんなの状態を常にチェック。怪我をすれば手当てをし、時には妖狐モードでモンスターにビンタを食らわせた。
直接攻撃できるスキルを持たないサクラちゃんだが、実は一番忙しかったと思う。
見えざる鎧だけではなく、威嚇でモンスターの注意を一瞬移したり、魅了で同士討ちをさせたり、さらには――。
「ま、魔力が……」
「真田さん、新しいポーションよ!」
「ありがとう、サクラちゃん」
「サクラちゃん、ボクも」
「あなたはさっき飲んだばかりでしょ! 頑張んなさいっ」
と、アイテム管理もしてくれている。
あとやたらと甘えたがるオーランドに喝も入れてくれた。
「お昼過ぎちゃったわ。みんな、どうするの? ここで食べる?」
「無茶言うねぇ~。僕ぁ落ち着いて食事をしたいけど」
「ウチもばい」
「じゃあ階段まで引き返そうか」
ということで、じわじわバックして登り階段へと引き返す。
階段まで戻って中間の踊り場まで上がると、群がっていたモンスターたちは俺たちの姿を捕えられなくなり散っていく。
生きた心地がしなかった……。
「うわ……たった四時間でレベルが12も増えてる……俺、最近じゃレベル1あげるのも半年かかってたのに」
「日本のダンジョンは総合的に見て、難易度低いところが多いからね」
「確かに……モンスターの数は段違いに多いね」
そうなのか。そこまで気にして捜索していなかったもんなぁ。相手にしなくていいモンスターは、放置もしていたし。
「ブルックリンレベルのダンジョンだと、日本では大阪にあるアレだけじゃないかな。東京北区も、まぁそれに近いけど」
「大阪……日本最悪のダンジョンだよ」
一階から適正レベルが60というぶっ壊れダンジョン。それが大阪にある。
低レベル帯の人が入れないせいで、生成から十年経った今でも攻略はあまり進んでいない。
「噂では、国土の大きさがダンジョンの規模にも関係があるなんて言われてる。どうだかわからないけどね」
「まぁ、それが本当だとすれば、日本のダンジョンの規模が小さいのも頷けるけどな」
「そうだね。日本は比較的国土が狭いのに、ダンジョンは多いよね」
おかげで資源は潤ってるけどな。
そんな話をしていると、ニコールがサクラちゃんのアイテムボックスに手を突っ込んでいるのが見えた。
「あの、ニコール、何を?」
「チョコ。昨日のチョコ味探してるの」
「ニコちゃん、あれはおやつなの。今はダメ」
「携帯食でしょ? いいじゃない」
「そう。携帯食を食べるのね。じゃーそのカップ麺にお湯を注ぐの、やめないと」
「……おやつの時間まで、我慢するわ」
「いい子ねぇ、ニコちゃん」
サクラちゃんに頭を撫でられているニコール。
その後ろでオーランドも頭を下げていた。
お前、撫でられることしてないだろ?
あとその携帯食、俺のだから!
やめて! 俺のチョコ味取らないで!




