201:プレゼントはくれないサンタさん。
――[ちょwww]
――[イヴだからサンタのコスでダンジョンに!?]
――[一昨日からってそれイヴじゃねーしww]
――[情報量多すぎマジで]
俺たちは立ち止まって配信に流れるメッセージを呼んだ。
「えっと、まとめるとこうか? 一昨日からサンタのコスチューム着てダンジョンに入った冒険者が、西区の三十二階で身動きが取れなくなっている、と」
――[そうです!]
――[あ、この配信か? でも岩しか映ってないけど]
――[それストーンゴーレム。撮影用のスマホ落として、ゴーレムの腕に引っかかってるらしい]
――[身動き取れないってまさか]
――[生きてるって! 音量大きくしたら声聞こえるんだよっ]
――[あ、本当だ。助けてくれって聞こえる]
「すみません。その配信のリンクをお願いできませんか?」
――[おっけー。ほいさ]
「サクラちゃん」
「音量ね……はい」
途端、ゴーレムの唸る声に交じって、確かに人の声も聞こえた。
助けを求める声。それから――。
『大きな岩山の隙間に逃げ込んでんだ』
『でもここもいつまでもつかわかんない。誰か助けてくれ』
そんな言葉が聞こえた。
「急いでいかんとっ」
「本部、聞こえましたか?」
『こちら飯田。聞こえたぞ。今後藤さんが確認中だ。念のため、階段の方に引き返してくれ』
「了解です。みんな、戻ろう」
三十二階か。ヴァイスのデビューとしては、ちょっと相性のよくない階層だな。
「戻りながら情報共有だ。三十二階はオープンフィールドになってて、ちょっと変わった構造なんだ」
「変わったって、どんな風に?」
「うん。まぁ一言で言うと、全部が岩で出来ているんだ。地面も、そこにあるものも、モンスターも全部ね」
階層の地面が全て一枚岩で出来ている。そんな感じだ。
切り出した岩ではなく、ごつごつとして歩きにくい。岩の上だから当然、木は生えておらず、岩が転がっている。
岩の上に岩だ。
生息するモンスターも岩系のものばかり。
ストーンゴーレムはあの階層で最も数の多い種類だ。
ただ、岩系モンスターだから動きが遅く、ほとんどの冒険者は無視して走り抜けるんだけどな。
『三石、聞こえるか?』
「後藤さん。救助に行きますか?」
『あぁ、行ってくれ。冒険者ギルドにも確認を取った。一昨日出発して、今日の夜には帰る予定にしていたパーティーだそうだ。今年の四月に冒険者になったばっかの、ピカピカ一年生だそうだ』
「八カ月で三十二階層って、ちょっと無謀じゃないですかね?」
『いや、それがなぁ。良いスキルに恵まれたパーティーらしくてな。実力もそれなりにあるんだと。ただまぁ、岩との相性がな』
相性――水系の魔法スキルか打撃粉砕系のスキルを持った人がいなかったのか。
ストーンゴーレムは動きこそ遅いが、斬撃スキルが効かない。あと火や風、土系の魔法スキルもだ。
一番の弱点は水。次点で打撃系と粉砕系スキルになる。
まぁ後者二つは、スキルレベルがストーンゴーレムのレベルを上回ってないとダメージを与えられないけど。
ヴァイスのトール・ハンマーも、ストーンゴーレムにはあまり効かないだろうなぁ。
「三十二階に到着しました。ブライト、上空から探してくれないか」
「了解。岩山を探せばいいんだね」
「オレも!」
「ヴァイスはダメだ。こっちに向かって来るモンスターを、俺たちの頭上からいち早く見つけて知らせてくれないと。俺たちが危険な目に合ってしまうからな」
「……オレはいなきゃダメだなぁ。ケッ」
そう言ってヴァイスが頭上でホバリングする。
ブライトがこちらに向かってウィンクするのが見えた。
危ないからダメだ――と言ったら、ヴァイスは不貞腐れるだろうしな。
あぁ言っておけば、俺たちの側を離れないだろう。
まぁ実際、少し上空から見てもらった方が、俺たちが敵を発見するより早いだろうし。
「サンタたちは地図持ってなかったん?」
「持ってたとしてもこの地形だもの。あっという間に地図と実際の位置を見誤ってそう」
――[地図は持ってなかったよ。次の階段まで真っ直ぐだからって]
そりゃ真っ直ぐだよ。迷路じゃないんだし、上階段から下階段まで、真っ直ぐ一直線に線が引けるんだ。
ただ真っ直ぐ進む方角がわかってないと、いつまで経っても階段は見つからないけどね。
冒険者デビュー一年未満。下手に実力があったもんだから、過信したんだろうな。
はぁ……年末年始って、実はこの手の冒険者がちょいちょい遭難するんだよなぁ。
「あ、親父だ」
「戻って来たか? どっちから」
頭上のヴァイスが真っ直ぐ下りてきて、俺の頭に着地する。
そして「あっちだ」と言うんだが、俺の頭の上で言われてもわかんないんですけど?
足元のサクラちゃんとヨーコさんが見つめる先に視線を向けると、やがてブライトの姿が見えた。
「見つけたよ。サンタクロースをね」




