200:新人。
「おはようございます」
「おっはよ~。お土産持ってきたわよ~」
「温泉饅頭やないけんね~」
今日はクリスマス・イヴ。一泊二日の温泉旅行から帰ってきたのは昨日のこと。
「おかえり、三石くん。せっかくの家族旅行だってのに、もっとゆっくりすればいいのに」
「赤城さん。いや、やっぱりゆっくりするなら家の方が落ち着くんで」
それに、今年はいろいろあって休みをもらったりもしているし、何より上野やアルジェリアのダンジョン生成で変則シフト期間が多かったんだ。
他の人だって休みたいだろうしな。特に今日明日は。
「赤城。そういう優しい言葉を俺にもかけてくれないか?」
「あ、後藤さんおはようございます。報告書、デスクに置いてますんで」
「……はぁ」
出勤してきた後藤さんは、大きなため息を吐いて部長室へと向かった。
「オイ、悟。オイ」
「はいはい。なんだよヴァイス」
真田さんとの特訓は終わった。だけどヴァイスは今日、俺たちと一緒に出勤してきている。
「社員証、ヨコセ!」
「寄越せってお前なぁ。ブライト、本当にいいのか?」
「いいも悪いも、ヴァイスが決めたことだからね。悟、君は時々忘れているようだけど、僕らは動物だ。動物は人間よりも早く成長する。例えスキル持ちになって成長速度が穏やかになろうとも、子供から大人になる速度は人間のようにはならないんだよ」
確かに。スキルを持たない動物は、たいていは生まれて一年で子供をつくれるようになる。
つまり大人になるってことだ。
調べてみると、シロフクロウは孵化後二カ月弱で巣立ちをするそうだ。
ヴァイスもツララも、孵化して半年以上。
自然界のシロフクロウと比べて、三倍の期間が過ぎてもまだ巣立っていないことになる。
いや、もう巣立ってもいいころなんだろうけど、スキルを持ったことで野生生物とはまったく違う状況にはなっている。
このまま巣立ちしない可能性だってあるけど、ブライトはヴァイスをそろそろ大人として見ようとしているのかもしれない。
「スノゥにも言われたんだ。子離れしろって」
と、切なそうにブライトはいう。
前言撤回。ブライトが、じゃなくってスノゥが、だった。
こっちはまだまだ子供扱いしたそうだな。
本人が巣立ちをしたがっているのかどうかはわからないが、ヴァイスの奴は捜索隊に入隊すると言い出した。
まだ短い距離だけど、飛べるようにもなっている。
でなければ、スノゥが捜索隊の入隊を許可するはずないしな。
「後藤さんの所に行って来るよ。サクラちゃんとヨーコさんは、みんなにお土産を配ってくれるかい?」
「えぇ、任せて」
「いっといで~」
で、ヴァイスを抱きかかえようとすると、
「自分で飛ぶんだぜ!」
といってふわりと飛び出す。そんで俺の頭上あたりでホバリングを開始。
もう抱っこはさせてくれないか。
ちょっと寂しい気持ちになりながらも、部長室へと向かった。
「そうか! ヴァイスがうちになぁ。そりゃ大歓迎だ」
「オレは有能だかんな!」
「あぁ。悟のチームの火力強化も出来るしな」
「僕という火力がいるじゃないか」
「親父よりオレの方が強い」
「父を越えられると思っているのか。僕はもっと強いからね」
「オレの方がもっともっともーっと強いからな」
似た者親子だろう。
社員証の方はすぐには出来ない。
写真を撮って、カードを作って、データ入力をして――と、三日はかかる。
今日は写真を撮って終わりだ。
ヴァイスの写真を撮ってから、ダンジョン内を飛ぶ練習も兼ねて一番近い西区のパトロールへと向かった。
迷路タイプだと、道が直角に曲がるなんてのは当たり前のことで、道幅だってそれほど広くない。
上手く飛べるようになったとはいえ、直角に曲がるのは難しいはずだ。
そう思っていたけど――。
「ヴァイス、上手ねぇ」
「ホバリングで一瞬止まってから、体の向きを変えとるんやねぇ」
スキルの使い方が上手い。
ヨーコさんが言うように、ホバリングスキルを使って曲がり角でヴァイスは宙で止まった。
そのままターンテーブルに乗っているかのようにくるーっと体の向きを変えると、また羽ばたいて前進。
うん。こりゃ壁にぶつかることもなさそうだ。
「なんだいサクラ。僕の息子の勇姿を撮影しているのかい?」
「配信してるのよ。新隊員のお披露目にね」
――[配信あざーっす!]
――[サクラちゃんがこのチームのリーダーのようだ]
――[新隊員ってブライト息子か]
――[あのトールハンマーフクロウだろw]
――[なぁ。このチームっていつから火力増しましになったんだ]
――[最強捜索隊すぐるww]
配信してるのか。こんなの見て、視聴者は楽しめるんだろうか?
――[緊急!! たのむ見てくれっ]
――[なにを?]
――[捜索隊見てるか!? お気に入り登録してる配信者パーティーが身動き取れなくなったんだ!!]
――[ちょ]
――[リアルタイム救助依頼キタ――(゜∀゜)――!?]
「あら大変。悟くんっ。視聴者コメントに、救助依頼入ってるわ」
「え? コ、コメントで救助依頼??」
何がどうしてそんなことに……。




