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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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174/180

174:ダンジョン無き国のダンジョン。

 第一会議室の壁に下ろされたスクリーンには、とんでもない映像が流れていた。


「ニュース番組ですね。もうネットでもトレンドに入ってます。アルジェリアでダンジョンが生成されたって」

「アルジェリアって、どこなん?」

「うぅんっとね、あ、あったわ。ヨーコちゃん、ここよ」

「ここ? えぇー、すっごく遠いじゃない」

 

 アフリカ大陸北部のアルジェリア。アフリカ最大の国と言ってもいい。

 だけど不思議なことに、アフリカ大陸全体でもダンジョンはわずか三つしかない。


「佐々木さん。アルジェリアって、ダンジョン数ゼロですよね?」

「え? あー……あ、はい。そうですね」

「それって、マズくないかな」

「そうなの? ダンジョンがなかったら何がいけないの?」


 国にダンジョンがないってことあ、その国に冒険者がいないってことになる。

 救助専用の捜索隊は日本にしかなく、アメリカでようやく支部組織が出来たばかりだ。

 基本的に「死ぬ奴が悪い」という考えが強いのもあって、救助専門組織がないのが一般的だった。


 それでも、ダンジョン生成時には一般人が巻き込まれるので救助隊が結成される。

 そのメンバーは、日本で言う冒険者。


 でも冒険者って、ダンジョンに入ってスキルを手に入れた人たちなわけで。

 ダンジョンのない国では、そもそも冒険者がいない。

 一攫千金を夢見て冒険者になろうとする人は、外国に行ってダンジョンに入るしかないからな。

 そして、自国にダンジョンがないんだ。そのまま外国に滞在するか、ヘタすりゃ移住なんてのもある。


 サクラちゃんとヨーコさんにそう話すと、二人はスクリーンに映されたニュースに視線を向けた。


「じゃあ……誰が助けにいくと?」

「警察? それとも軍人さん?」

「どっちが突入したって、一階層の捜索だけで甚大な被害が出るだろうね」

「そんな……」


 ダンジョン内では、不思議と銃器が使えない。引き金を引いても弾が出ないんだ。

 火器――火炎放射器の類は使えるが、狭い洞窟タイプでそんなものを使えば、自分たちも危険になる。

 実際、過去に火炎放射器を使った結果、違う通路を進んでいた人を焼いてしまった――という事案があった。


『あー、あー。話すぞー』


 社長だ。

 スクリーンの前でマイクを持って立っている。


『今から四十五分前だ。アルジェリアの首都にダンジョンが生成された』


 ニュース映像が消され、スクリーンには地図が映し出された。

 ダンジョンは、アルジェリアの首都のど真ん中に生成されていた。

 

 ヘリかドローンの上空写真だろう。

 石造りの風情のある建造物群の中、綺麗にくり抜かれた円形の場所がある。

 そこだけ土がむき出しになり、真ん中には見慣れた渦巻があった。

 そのサイズが……大きい。


 入り口の渦――ブラックホールのようなそれは、ダンジョンの規模によって多少サイズが異なる。

 北区の渦は直径が七メートルほどで、最近ようやく九十五階層が見つかっている。

 東区は七十五階層までしかなく、それ以下へ続く階段は見つかっておらず、渦の直径は五メートルはない。

 西区は四メートルと、他の五十階層ダンジョンもそれぐらいだから、隠しダンジョン分は関係ないようだ。


 肝心のアルジェリアの渦だが――。


『渦の直径は十メートル。同サイズの入り口がアメリカにあるが、百五十階まで見つかっているがまだ攻略中だ』


 社長の口から伝えられると、会議室はざわついた。

 百五十階級のダンジョンが、これまでダンジョン数ゼロの国に生成されるなんて……。

 しかも周辺諸国にもダンジョンがない。

 冒険者がいないこの国で、いったい誰が巻き込まれた人を救助しに行くんだ?

 

『真っ新になったあの土地には、約七千人がいたとされる。時間的に深夜だ。ほとんどの人は眠っていただろう』


 七千人……。


『救助のため、アルジェリアの軍が準備をしてはいるが……突入は見送られるだろうな。ま、知っての通り、ダンジョン内じゃスキル以外の銃は使えんしな』

『冒険者はいない。アフリカ大陸内で活動する冒険者が、そもそも少ないからな。他国から冒険者を募って救助に来てもらうにしても、なかなか難しいだろうな』


 募る――善意で来てくれる冒険者は……少ないだろう。

 国内ならまだしも、外国だしな。


『で、要点を言うぞ。お前ら、行ってくれ』


 ……え?


『全捜索隊社員の半数を、アルジェリアに送る』

『ついでに冒険者有志も募って連れて行く。各チームのリーダーは端末で参加の是非を送ってくれ。参加者が少ない場合は、悪いがこっちでチームを決めさせてもらう。多い場合は逆に指名する。以上。出発は三時間後だ。行く意思のあるチームは直ぐに準備に取り掛かってくれ』


 い、いきなりすぎ!

 いや、ダンジョンの生成は突然起こるものなんだ。

 いきなりだろうがなんだろうが、動かなければ何も出来ない。


「サクラちゃん。ブライト、ヨーコさん」

「もちろんよ」

「ボクらが行かなきゃ、誰が行くってんだい」

「ウチ、頑張るけん!」


 それを聞いてすぐにスマホを取り出した。


 参加――と。



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