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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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162:ハリー⑤

「ねっ、ねっ。何探してるの? ね?」

「うわっ。ス、スキル持ちのシベリアンハスキーか。今お仕事中だから話しかけないでやってくれな。な?」

「わんわん。わぉわんわん」

「ふーん。そっかぁ」

「え? ど、どうしたんだい? うちの相棒、何言ってるかわかるのかい?」


 殺された人の血が付いたナイフがないか探しているらしいけど、原っぱには血のニオイなんてない。

 相棒にそう話したいたけど、言葉が通じないから困ってるのかぁ。

 よし!


「あのねっあのねっ! 原っぱに血のニオイはないんだって! オレも原っぱからは血のニオイしないぞ! でもあっちからはしてる!」

「え、あっち?」


 あっち。向こうにいるいっぱいの人間の中。みんな違う服を着てる。警察って人じゃないみたいだ。

 でも変なのは、血のニオイがしているのにその人のニオイとは違うんだ。


「あ、血のニオイの人、向こうに行っちゃった」

「ど、どいつだ!?」

「えぇーっと。もう見えないぞ!」

「追えるか!?」

「追えるぞ! ウオオォォォォォ。追いかけるぜ!」


 血の人、やっぱり怪我をしているんだ!

 だから警察の人、心配して追いかけろって言ったんだ。

 待ってろ! オレが見つけて病院に連れて行ってやるぜ!


「あ、ニオイが右に行った!」

「君はそのまま追いかけろっ。俺は左から回り込むっ」

「わかったぞ! オレは右。左から回り込む! 右から左――み……どっち!?」

『オレが左だ!』

「じゃあオレは右だ!」


 あ、れ?

 なんかシベリアンハスキーがいたぞ。オレと同じ声だった。

 ん?


 でもいいや! オレは右。あいつは左!

 走って、走って――見つけた!

 あ、前から警察の人だ!


 あ、あれ? 怪我の人、なんか危ないニオイがする。危険。危険がキケン!


「警察の人、キケンだぞ!」

「け、警察だ! 止まれっ」

「クソっ。なんでバレたんだよ! あんたも死ねよっ」


 死ね? 死ねって言うのは、悪いこと!

 悪いことを言うのは、悪い人間!?


 怪我した人が包丁持ってる!

 あんなもの振り回したら危険! 警察の人に向かって危険なもの振り回してる!


「ウオオォォォォッ。悪い人間だ!」

『悪い人間だ!』

「ウォンウォンッ」

「包丁危ない! 危ないものは捨てさせるぞ!」

『噛みつく? 噛みついていい?』

「ウォン!」

『じゃあ噛みつく! ガブッ――』

「いってぇぇーっ!!」


 よし、包丁が落ちたぞ!

 悪い人間! お仕置きだぞ! それーっ!!


 前脚パンチ!


「んげっ」


 後ろ蹴り!


「がはっ」


 頭突き!


「ごばっ」


 ふぅー。なんだか知らないけど、体が凄く軽いぞ!


「ハァァァーリィィィィーッ」

「キャウンッ。キ、キキキキ、キコ」


 あっ、あっ。バイト忘れてみんなから離れちゃった。

 怒られる。お、おこ、怒られる!


「あんたあぁぁぁーっ!!!! あたしのぉぉぉーっ」

「キャウウゥゥン」

『クゥクゥンクゥン』

「あたしの寝床にいぃぃぃ、何してくれてんのよぉおぉぉーっ!!」


 キコが……光った。

 オレ……死んじゃうのかな。


「ほげぇあぁぁぁぁっ」


 どこーんっと凄い音がした。

 でもオレ、生きてる。

 後ろを振り返ると、悪い人間がゴミ箱に突っ込んでいた。


 あ、れ?


「おーい、ハリー。大丈夫か」

「クロベェ。オレは大丈夫だぞ!」

『大丈夫だ!』

「ぶはっ。ちょっと、ハリーが二匹になってるじゃない!」

「ん?」

『ん?』


 オレが、オレ。


「ウオオォォォォォ!?」

『ウオオォォォォォ!?』


 オレだ! オレだったんだ!

 オレがもう一匹!


 なんで?


「暑っ苦しいのよぉぉぉーっ、ピヤァーッ!」

「痛い痛い痛い」

『オレ痛そう。あっ、こっちこないでっ。痛い痛い』

「なんで増えてんのよ!」

「いや、あの、君たち? えっと?」

「あ、お巡りさんあいつらは無視してくれ。そんで吹っ飛んだあの人間、悪い奴でいいのか?」

「い、いや、それは……これから……」


 キコにいっぱい突かれたけど、警察の人がいっぱい来たから止めてくれた。

 警察の人が吹っ飛んだ悪い奴から血のついた包丁を取り上げてた。


 凶器――とか言ってたな。

 秀さんが警察の人とまた話してて、それからこっちに来た。


「どうやら、あいつが殺人犯で間違いないらしい。しかもな、さっきの原っぱに犯人っぽい奴が何かを捨てたって通報した住人ってのが、奴だったらしい」

「捜査をかく乱させるために、偽の通報をしたってのか」

「でもだったらなんで現場に来るのよ。捕まえてくださいって言ってるようなものじゃない」

「偽情報に踊らされる警察を見て、鼻で笑いたかったんだろうよ。刑事ドラマじゃよくあることだぜ」

「オイラ、ドラマなんて見ないし」


 ドラマ……ママさんがよく見て泣いてた!


「それでハリー。あとで警察が事情聴取をとりてぇんだと」

「……ん?」

「あー……だから状況説明だ。どうしてあいつが犯人だとわかったのか。どうやって追いかけて、どうやって捕まえたのかってことだ」

「どうやって……走ってだ! オレが走って、オレも走って、オレが……オレが増えたんだ!? なんでだ!?」

『なんで!? オレもわからない!』

「そりゃスキルだろう。鑑定はしてねえのか?」


 鑑定?


「あー、わかったわかった。ちょいと知り合いに鑑定を頼んでやるよ。まぁとりあえず今日は警察に協力してやってくれ」

「わかったぞ!」

『わかった――』

「ウォン!? オ、オレが消えた!? 死んだ!?」

「心配するな。どうせ制限時間とかがあるんだろう。時間が経過して消えただけだ。死んだわけじゃねえ」


 そっか。死んだわけじゃないならよかったぞ!




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