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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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148/180

148:四足と二足の事情。

*今日は夜も更新します。




「中への案内は自分がします」


 西区の最下層に到着すると、冒険者が六人待っていた。

 彼らが隠しダンジョンを発見したメンバーで、ボス討伐担当チーム。


「中って、あなた隠しダンジョン側にも行ったことあるの?」

「あ……サク……あ、はい。俺ら、交代制だったんで」


 サクラちゃんの問いに、案内を申し出た人が答えた。

 メンバーは六人。うちひとりが案内役で、残り五人でボスを討伐する。

 互いに無線でやり取りをし、タイミングを合わせてだ。


「すみません……俺らが欲をかいたばっかりに……」

「仲間を、頼みます」

「せめて……せめて……」


 せめて亡骸だけでも。彼はそう言いたいんだろう。

 当たり前だ、そんなの。

 だけどそれは亡くなっていたらの話。今は生存を信じる時だ。


 ボス討伐隊と別れ、俺たちは案内人――沢木さんと一緒に、隠しダンジョンへの扉が現れる地点へ向かった。

 そこに到着するのに五時間。

 向こうではまだボスが出現していないらしく、ひとまず休憩することになった。


「俺はやるぜ!」

「俺もやるぜ!」

「俺だってやるぜ!」


 休んでいる間、シベリアンハスキーのハリーが分身を出して周囲を警戒してくれる。

 分身を出す瞬間に魔力が消費されるタイプで、出しっぱなしにしたから疲れるなんてことはないらしい。

 

「なぁサクラ。あんたどうして二足歩行なん?」

「なんでって、むしろヨーコちゃんは何で四足のままなの?」


 食事の準備をしている時に、サクラちゃんとヨーコさんがそんな会話を始めた。

 そういえば、ヨーコさんはなんで普通の動物と同じように四足のままなんだろう。スキル持ちになると二足歩行が出来るようになるのに。


「なんでって、なんで?」

「えぇー……ヨーコちゃん、スキルを手に入れたら、後ろ足で立って歩けるようになるの、知らなかったの?」

「ボクはいつでも二足だけどね」

「鳥は黙ってて」


 ピシャリと言われて、ブライトがとぼとぼ歩いて壁際に行ってしまった。そのブライトをカラスやハト、インコたちが慰める。


「俺も四足だぜ!」

「アタイは二足で歩いてるわ」

「ぼ、ぼく、走るときは四足の方が楽、だなって思いますっ」

「それはあるわよねぇ」


 へぇ。案外、動物たちによって――いや、個々によって歩くスタイルは違うのか。


「サクラちゃんも走るときは四足だったね」

「そうね。後ろ足だけだと早く走れないもの」

「じゃあなんで歩くときだけ、後ろ足なん?」

「んー……手が汚れるから、かしら? だってご飯食べるとき、汚れちゃうじゃない」


 え、そういう基準で普段、二足歩行なのか?


「汚れた手でご飯を食べると、ゴミや砂も一緒に食べちゃうでしょ?」

「そりゃそうだけど。これまでもそうだったんだし、気にせんやろ?」

「それがねぇ、気になってくるのよぉ。それに、お行儀だって悪いのよ。動物園に来てたお客さんも、子供にそんなこと言ってたわ」


 後ろ足で歩く理由って、そういうこと!?


「あー、わかるわぁ。昔はほんっと気にもしなかったのに、なーんか『ジャリ』ってのが気になっちゃうのよねぇ」

「うんうん。ぼくも気になります」

「俺っ俺っ。ご飯前に前脚洗う! すっごく洗う!」

「ワイもやな。肉球の間まで洗うぜ」


 へぇ。でも出先だとどうやって洗うんだ――と思っていたら、アイテムボックス持ちの人、動物たちが桶と水を取り出した。

 水が注がれた桶に、動物たちが手をつけ洗っている。


「はい、ヨーコちゃん。四足でも別のいいのよ。歩きたい方で歩けばいいんだから。でもご飯の時はしっかり手を洗いましょうね」

「サクラ……ウチのために用意してくれたん?」

「他の子たちがそうしてたの見てたから、私も持ち歩くようにしてたの。私のためでもあるんだから」


 そう言ってサクラちゃんも桶で手を洗い出す。


「悟くんも洗う?」

「俺はウェットテッシュあるから」


 動物たちも衛生面を気にかけているんだな。


 そうして食事を終え、ボス出現の報告があるまでここで休むことになる。

 

 五時間ほど過ぎたころ、無線が入った。


「ボス出現だそうです。普段だとニ十分ほどで倒し終えるのですが、待ってもらいますか?」

「いや、十分で片付け終えるからスタートしてくれていい」


 経験豊富な秋山さんの指示で、ボスの討伐が開始された。

 寝ぼけ眼を覚まさせ、荷物を片付けていつでも動ける準備をする。

 しばらくして、動物たち、特に犬たちが反応した。


「音っ。カチって鳴ったっ」

「このあたりだな」

「アタイには音しか聞こえなかったわ。よく場所まで……あ、なんかあの岩、不自然よ」

「そう、それは隠し扉を開くスイッチだ。スイッチ自体は五分で消えてしまうんで」

「じゃあ押す?」


 と、猫のミーナが手を伸ばす。秋山さんが「開けてくれ」と言い、ミーナがボタンを――。


「と、届かない……ちょっとボブ! こっち来なさいよっ」

「わかったよぉ」


 犬種はわからないがハリーと体格が似たボブが呼ばれ、ミーナの足場にさせられている。

 ようやくスイッチに手が届いたミーナは、満足そうに笑みを浮かべてスイッチを押した。


 地響きからの、ボタンのあった周辺の壁がスライドして扉が開く。


「五分です!」


 扉は開いてから五分で閉じてしまう、ということだ。

 すぐさま俺たちは扉の中へと入り、奥へと進む。少し進むと小部屋になっていた。

 背後で扉が閉まる音がする。


「よし、ここに通信アンテナを設置します」

「了解。設置が完了するまでみんな、もうしばらく待機だ」


 その設置は十分ほどで完了。通信機が使えるかの確認もし終え――。


「よし。それじゃあ各自、捜索開始」

「「はいっ」」





***********************

二足で歩けるから、職業訓練施設なんかではスキル持ちの動物に

二足歩行の練習をさせたりしています。

施設職員的には「二足歩行したそうだから」という親切心からだったり。

そこで歩き方を学んだ動物たちも「人間はご飯の前に手を洗っているから、その方がお行儀がいい」と思うようになり、結果、二足で歩いてなるべく手を汚さないようにしよう! となっている・・・そんな感じです。

でも急ぐ時には四足の方が早いので^^;


夜の更新は20:10です。

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猫のミーナに呼ばれたのはボス?orボブ?
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