表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

146/180

146:西区ダンジョンの新展開。

「じゃあスキルって、使えば使うだけレベルってのが上がると?」

「そうよ。でもナースのスキルって、レベルが上がるとどうなるのかしら?」

「知らんばい」

「あんたが知らないのはわかってんのよ!」

「何でキレるん! 何で!」

「「キィーッ!」」


 タヌキとキツネって、やっぱり犬猿の仲なのかな。

 二人とも立ち上がって、小さな手でポコポコと殴り合っている。

 殴り合う――とは言ったものの、実際に殴っていると言うかじゃれている?

 道行く人も何事かと思って見ているが、その顔はゆるゆるだ。


 ヨーコさんの尻尾を見て驚く人もいるが、不思議と「あぁ、捜索隊の人か」の一言でスルーしてくれた。

 捜索隊だから、納得してる?

 え、どういう意味で?


 ま、まぁモンスターと間違われないのはよかった。


「このまま上野のダンジョンへパトロールに行くから。ヨーコさんに仕事内容を覚えてもらうためにもね」

「昨日の続き?」

「そういやマッピングも途中だったよね、悟」

「あぁ。八階と九階のマッピングをさっさと終わらせたいしね」


 自転車を本部の駐輪場に置いたままなので、そっちに寄ってから上野へと向かう――が。


「あら、着信だわ」

「俺もだ。ということは出動か」


 駐輪場を出発して五分と経たないうちに胸ポケットに入れたスマホが鳴った。

 自転車を止め、スマホを取り出す。


「ん? 緊急招集? 出動じゃないのか」

「戻って来いってこと?」

「らしい」


 ブライトは――戻って来てくれたか。


「おい、どうしたんだ?」

「戻ってこいってさ。何かあったのかもしれない。ブライトは先に本部の待機室の方に飛んでくれ」

「何か? うぅん。ま、戻ればわかるか。じゃ、お先に」


 こちらも自転車を反転させ、来た道を引き返した。






「捜索依頼だ」


 本部へ戻ると、会議室の方へ向かうように受付スタッフに言われた。

 会議室にはブライトも到着していて合流。


 全員が揃うと、後藤さんが説明を始めた。

 どこか苛立っているようだ。


「人探しってことなん?」

「そうよ。でも複数のチームが集められるって、珍しいんじゃない? ね、悟くん」

「そうだね。普段は多くても三チームぐらいまでだし」


 複数同時とか?


「実はな、西区に隠しダンジョンが発見された」

「え、隠しダンジョンって……ある一定の条件下でのみ扉が開くタイプの?」

「そうだ。五年も前に発見されていたが、発見者がずっと黙っていたんだとさ」


 なるほど。後藤さんが苛立っているのは、それが原因か。


 西区のような比較的浅いダンジョンには、追加のダンジョンが隠されていることがある。

 さらなる下層へと下りる階段には扉があり、その扉そのものが隠されている場合もあって見つけるのは困難。

 そのうえ、扉を開くためには何かしらの条件が必要ときている。


 日本でも四つのダンジョンで隠しダンジョンが発見されているが、どれも出現条件が違う。

 共通しているのは、隠しダンジョンの向こう側には美味しい素材をドロップするモンスターが多いってことだ。

 資源も豊富で、冒険者にとっての稼ぎ場でもあった。

 五年前にその隠し扉を発見した冒険者は、自分たちだけが甘い汁を吸うために存在を隠していたんだろう。

 それ自体は犯罪でもないし、罪に問われることもない。

 ま、他の冒険者から恨まれはするだろうけど。


 ただ、扉は開きっぱなしではない。一定時間しか開かないので、一度入ると出るのが大変だ。

 時間経過で閉ざされた扉は、その仕掛けが発動するのに数日かかる。

 それまで出られないってことだ。


「扉の発生条件は、最下層の五十階にいるボスを倒すことだ。だが扉はボス部屋じゃなく、五十階のX1、Y1の位置に現れる」

「ボス部屋から一番遠い座標じゃないですか」

「そりゃ見つからないわけだ」


 ボス部屋は地図で見ると右下付近にある。X1、Y1は地図だと左上。一番遠い場所だ。

 そんな場所までボスを倒してからどうやって向かうんだ?

 誰もがそう思っただろう。だから後藤さんは言葉を続けた。


「ボスを倒すチーム、隠しダンジョンに入るチームに分かれてやっているそうだ。西区は最短だと四十八時間、最長でも八十時間だ。中の連中と息を合わせるために、ボスを独占できる体制を作っているそうだ」


 最短でボスが湧いてもわざと倒さず、五十時間が経過してから倒す。

 もし四十八時間でボスが湧き、他の冒険者が来た場合には自分たちが先に到着した――と主張して独占するとのこと。

 そして二時間待つ。他の冒険者が来れば同じように主張して引き返らせるそうだ。


 逆に、五十時間が過ぎてもリポップしない場合、中のメンバーは出口で待機する。

 ボス討伐チームもボス部屋で待機するってわけだ。

 こうなると、他の冒険者に譲っても問題がない。倒されれば扉が開くのだから。


「隠しダンジョンには四周期に入ったらしいが、中に入ったメンバーが出てこなかったそうだ」

「それで捜索依頼を?」

「あぁ。既に隠しダンジョンに入って九日だ。食料は一週間分持って入ったらしいが……」


 切り詰めればなんとかなる日数だ。

 だけど出口で待機していれば、当然だけど戻ってきているはず。


 隠しダンジョン側で遭難したと考えるのが妥当だろうな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ