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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
7章

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136/180

136:攻撃的な警備員。

「あれ? 今日って何かあるのかな」


 帰国後数日。

 自転車で出勤すると、本部ビル前に行列があった。


「あら、知らないの悟くん。今日は新作グッズの発売日なのよ」

「……一時的なものだと思ってたのに」


 なんか定期的に新作出してるみたいなんだよなぁ。

 というのを、ニューヨークのヒュー氏の娘さんに教えてもらった。

 彼女はパパ=ヒュー氏におねだりして、毎回ネット通販でグッズを購入してもらっているらしい。

 

 日本から通販したら送料が凄いんじゃないかと思ったけど、他のATORA製品と一緒にまとめてアメリカに輸送されているので送料はアメリカ国内配送と同じ価格なんだとか。

 ただ、まとめ配送だから届くのに二週間ぐらいかかると言ってたな。タイミングが悪いと三週間待ちって。

 今日発売のも買うのかな?


「そうだわ。ヒューさんとこのメリアちゃん、今回の新作も買うのかしら」

「あー、俺も今それ考えてた」

「あの子かぁ。ずいぶん僕らのこと、気に入ってくれてたなぁ。抜けた羽根をプレゼントしたら、さっそくアクセサリーにした写真を送ってくれたぜ」

「お母さまが器用な方だったわねぇ」

「でも通販してダブったらいけないしなぁ」


 本部の中に入ると、ショップ前にはハトたちとカラスたち、あと犬たちがいた。

 何をしているんだ?


「あ、三石さん。おはようございますポ」

「おはようございます。どうしたんだ、みんなして?」

「ぼくたち、警備員です。新作が並ぶ時は横入りする人とか、ひとりで何度も入ってこようとする人がいるので」


 転売&迷惑客対策要員になってる!


「俺もやるぜ! 俺も!」

「ハリー? ハ……え?」


 ハリーじゃ……ない。

 ぬいぐるみだ。

 捜索隊のベストを着たシベリアンハスキーのぬいぐるみが、ハリーの声を出していた。


「あ、それ新作なんです。ハリーくんの音声が十種類入っているんですよ」

「なんで……」

「ハリーくんたちの配信、結構人気なんです。いつも元気で癒されるって。あとキコちゃんとのボケツッコミも」


 ただこの人形、まだ販売は始まっていないらしい。今日から予約開始なんだとか。

 それで見本としてここに置かれていると。

 で、これを盗まれないよう――。


「我々がハリーを守る」

「イエッサー!」


 シェパード犬とカラスが二羽、ハリー人形を警護するそうだ。

 おさわりOK。抱っこNG。

 台座から持ち上げようとした瞬間、一匹と二羽が警告を発し、持ち逃げしようものなら――。


「襲う!」

「突く!」

「蹴る!」


 攻撃的だ……。まぁ窃盗罪に該当する行為だし、やった奴が悪い。同情はしない。


 なんか俺がアメリカに行ってる間に、みんな頼もしくなったなぁ。






「他県でも就職を希望する動物たちが支社ビルを尋ねに来たりしてるんだよ」

「へぇ。そうなんですか」

「捜索隊だけじゃなく、ATORAグループのあちこちで就職して貰っているそうだよ」


 と、赤城さんが嬉しそうに話す。

 動物好きとしては、スキル持ち動物が安全に暮らせる環境が出来ることが嬉しいんだろう。

 オーランドとも話が合いそうだ。


「それで上がってる案があってな。ダンジョン前の入場者監視員に動物を使ってはどうかって」

「夜間は夜行性動物に頼めばいいしな」

「監視といっても、入口の端末に冒険者カードをかざしたかどうか見るだけ。かざしてない奴を呼び止め、冒険者かどうか確認。冒険者じゃねーなら、追い返すってな」

「追い返すんですか?」


 秋山さんや青山さんも来て話に加わる。

 なんでも今後はスキル獲得目当てでダンジョンに入る日時を決め、団体ツアーとして開催されることになるようだ。

 国会にも上がっているようだから、可決されれば無断侵入すれば逮捕される。まぁ罰金で済むから、交通違反程度のものだけど。


 ただそれをするとなると、今度は一般人が無断で侵入しないか見張る必要がある。

 実際今でも入口に人を置いてはいるんだけど、わりとこれが……いない時間も結構あったり。

 人件費だの人手不足だのなんだので、公務員が来ない時があるんだよなぁ。

 ギルド職員だって二十四時間の監視は、やっぱり人手不足で難しいし。


 でも動物なら――。


「言い方は悪いが、安い給料でも働いてくれるからなぁ」

「住む場所と三食あれば、彼らは喜んでくれるからね。もちろん、労働環境は人間と同じにするって条件だけど」


 動物たちはATORAに就職し、そこから各方面に配属される。

 ダンジョンの入り口監視員は本来、国の管轄だ。ATORAが国に動物たちを派遣するってわけ。


「で、どの動物たちもATORAの専用社宅で暮らすことになる」

「専用社宅?」

「あぁ。カプセルホテルみたいに、小さな個室をずらっと並んだ社宅を各県に建てるんだとさ」


 社長の鶴の一声で決定したらしい。

 

 社長……ダンジョンに関しては、お金にならないことも平気でやるよなぁ。

 社長の家族も、ダンジョン生成に巻き込まれて亡くなったと聞いたけど、それもあるんだろうな。


 あの人がいたから、今の捜索隊があるわけだし。

 

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