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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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133/180

133:何故だ?

「ぶわっはっはっは。三石、お前モデルもやったのか。ウケルーっ」


 ほらみろ。やっぱりモデルは恥ずかしいじゃないか。

 戻ってから社長にモデルの話をしたら、何かツボに入ったようで大笑いされた。

 あと、モデルの報酬で服を貰ったと話すとそれも笑われた。

 金森さんからは、ちゃんとお金で報酬を貰えと怒られたし。

 いいじゃないか。買ったら合計で3000ドル以上もするんだぞ。


「うふふ。私も服いただいたの。人間の子供服なんだけどね、サイズが合うから」

「もらったのぉ~」


 サクラちゃんは薄いダウンベストとマフラー、それからニットの帽子を貰っていた。

 その場にサイズを手直しする人がいて、サクラちゃんの耳を出すための穴を作ってくれた。

 ブライトたちもマフラーを貰っている。親子でお揃いのヤツだ。

 ブライトは最初、暑いから嫌だっていってたけど、親子お揃いのヤツだと知って喜んで巻いている。


「いいか、お子様たち。仕事をしたら、必ずお金で報酬を受けとれ。お金があれば服は買える。ご飯も買える。だが服では服が買えないしご飯も買えないんだぞ」

「え……そ、そんな……」

「ご飯たべらりぇないのぉ。ちょんなの嫌ぁ~」


 おいおい、金森さん。何変なこと教えているんだ。

 いやまぁ、その通りなんだけどさ。


「ツララ。飯は親父が買ってくれるぞ! 親父に買わせればいい」

「にぃーに頭いい! 父ちゃん、ご飯買ってぇ」

「父ちゃんが美味しいご飯を買ってやる。安心しろ、ツララ」

「うわぁ~い」


 その肉を買いに行く(・・・・・)のは俺なんだけどな。

 まぁオーランドのおかげで、比較的近くにペットショップがあって、買いに行くのも楽なんだけど。


「講習会は残りあと何回だったか?」

「講習会ですか、えぇっと……」

「あと三回です。来週二回、再来週の月曜日に一回で終わりですよ」

「おぉ、さすが金森。スケジュールは全部把握済みかぁ」

「あんたが把握してないから俺が暗記しているんだろうがっ」


 金森さん、頑張ってください。


 あ、再来週で終わりってことは、日本に帰れる?






「日本に帰る? 何故だサトル」

「何故だというオーランドのセリフに、何故と言いたいんだけど」

「何故?」

「だから何故――いや、やっぱりいい」


 ……堂々巡りになりそうだからツッコミを入れないでおこう。

 ビル内のレストランで夕食を食べている時に、講習会が終わったら日本へ帰るっていうことをオーランドに話したらこれだ。


「ニューヨークで暮らすのかと思ってた」

「いやいや、何でそう思うんだよ」

「……サトルは帰っても、サクラちゃんとブライトとスノゥとツララちゃんとヴァイスは残るんだよね?」

「帰るわよ」

「ここは涼しくていいが、まぁ日本もこれから涼しくなるしなぁ」

「そんな……」


 なんで俺だけ帰って、サクラちゃんたちは残りと思っているんだ?

 むしろオーランドの願望だろ、それ。


「そんなに寂しいなら、あなたが日本に来て暮らせばいいじゃない」

「いいね、それ」

「いやいや良くねえだろオーランド! サクラちゃんよぉ、オーランドに変なこと言わないでくれよ」

「あらエディ。あなたもご飯なのね。ここ席開いてるわよ。どうぞ」

「お、サンキュー」


 いつの間にかエディさんが合流した。

 料理が運ばれてくるまで、オーランドに「日本に行くな」と説得している。

 

「まぁでも、オーランドがどうしたいかが重要なんじゃないかな」

「サトルまで余計なことをっ。オーランド、お前はうちのエースなんだ。いなくなられたら困るんだよっ」

「わかってるよエディ。ボクは日本にはいかない。日本は稼ぎが悪くなるから」

「あら意外。オーランドはお金に興味なさそうだと思ってたのに」

「ふふ。サクラさん、オーランドくんはあなたが思っている通りよ。でもお金は必要。だって牧場で暮らす、動物たちが安心して暮らせる場所が必要だもの。ね?」


 スノゥの言葉に、オーランドが頷く。

 牧場では入場料を取り、宿泊施設もある。収入はあっても、牧場の経営ではそれ以上のお金がいるそうだ。


「あー、オーランドんところの牧場な。入場料も宿泊料も安いんだよ」

「だけどエディ。安くしないと利用客が減るだろう。ボクは動物たちのことを、たくさんの人に知って欲しいんだ。あそこで暮らす子の中には、人間に虐待をされ、捨てられた子もいる。酷いことをするのはいつも人間だ」


 そう話すオーランドの表情は、珍しく怒っているように見えた。

 拳をぎゅっと握るオーランドに、サクラちゃんがそっと手を添える。


「でもね、オーランド。助けてくれるのも、人間なのよ」

「あぁ、そうだぜ。僕らを拉致して卵を奪ったのは人間だが、こうして家族揃って暮らせているのも人間のおかげだからな」

「えぇ。悪い人間はいるけど、いい人間もいます。オーランド。あなたは私たち動物にとって、確実にいい人間だわ」

「いい人間? オーランドにぃにはいい人間?」

「そうだぞツララ。こいつは良い人間だ。でもツララ。惚れちゃだめだぞ」


 サクラちゃんたちの言葉に、オーランドの表情はいつもの無表情に戻って行った。

 いや、薄っすら笑っているのかも?



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