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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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130/180

130:怒られた。

 ビルの窓から見えた資源オブジェはひとつだけ。

 あくまで予想だってことだけど、あのビルに資源オブジェが潰された可能性もあるだろうって。

 その場合、オブジェを潰す行為が採掘したという行為になるのかならないのか。


「なる場合、ここでの採掘量は少なく見積もる必要がある。じゃないと、またスタンピードが発生しかねないからな」

「慎重に採掘しなきゃならないんですね。あれ、それだけしか掘らないんですか?」


 採掘班の人がオブジェをツルハシで叩いて取り出したのは、握り拳の黒い石。たぶん原油だろう。


「あぁ。一旦持ち帰って鑑定するのさ。まぁ見た目からして原油石だろうけど、質とかもな」

「今日は一旦、オブジェから何が出るのか確認するのと、ここの階層の資源オブジェの総量を調べるのが目的だ」

「どのくらいの資源が採掘出来るかによっては、ハンターに解放することもあるからな」


 オブジェの量が少なければ、ハンターの小遣い稼ぎ用になる。多ければギルドで一括して採掘する。

 そういう仕組みらしい。

 それだけが目的じゃない。

 過剰な採掘がスタンピードの原因になるんだ。オブジェの総量を調査して、どのくらいまでならスタンピードが発生しないのか計算する必要がある。


 通路を奥へと進むとまたオブジェが。ここには大きなものが五つ並んでいる。


「資源がある場所って、記憶しているんですか?」

「いや。生成時の救助で、この辺りまで来ただけだ。この先に行っても生存者はいないだろうってんで、その時はここで引き返したのさ」

「だからここから先は、歩いてみなきゃわからないんだ」


 エディさんとオーランドが交互に話す。

 各階層の探索は始まったばかり。上野だって、上層は俺が走り回って地図を作ったんだもんな。


 ……走るか?


「エディさん。俺、オートマッピングするために、その辺走ってきます。測量にまだ時間かかるでしょう?」

「お。いいのかサトル。助かるぜ。けどここに戻ってくれるか?」

「ナビスキルあるんで大丈夫です。じゃ――」


 サクラちゃん、ブライト行くよ――と言いかけて口を閉じた。

 サクラちゃんは熱心に、採掘班の人の作業を見ていた。ブライトもだ。

 始めて見るから、面白く見えるんだろうな。

 あと二人の後ろでオーランドがスマホを手にして立っていた。


「サクラちゃん、ブライト。俺、地図を埋めるために走って来るよ」

「え? えっと、何て言ったの?」

「ちょっと走って来る。ここで測量の仕事の様子を見てなよ。勉強にもなるだろうし」

「わかったわ。あまり遠くに行っちゃダメよ」


 遠くに行くんだけどね。

 ま、たまにはひとりで走るのもいいだろう。

 壁や天井も走れるし、モンスターもほとんど無視出来ると思う。






 適当に走りながら、モンスターがいたら無視してすり抜けるか天井を走ってやり過ごす。

 さすがに洞窟タイプの中じゃ全力で走れない。それでも結構スピードを出して走りまくった。


「地図は……うぅん、適当に走り過ぎて全部中途半端な描き込みになってるなぁ」


 更に走って、角を曲がったところで突然、前方に明かりが見えた。

 いや、アレって……。


 その場所へと到着して、初めてのことに戸惑ってしまった。


「本当に……資源のある階層って、オープンフィールドだったんだ」


 明かり=洞窟の出口。

 その先に広がっていたのは、草木一本生えない荒野だった。

 岩と石と土だけしかないフィールドだ。

 上を見上げれば青い空があるけど、白い雲はなし。


「どうしようか、サクラちゃん」


 と、足元を見下ろすも、誰もいない。


「しまった。俺ひとりで来てるんだった」


 うっかりサクラちゃんを呼んでしまった。 よし。ここをサクっと走破して戻るか。ここなら全力で走れるだろうし。


 地図を描いている途中の紙を折り畳み、しっかりと握ってから走り出す。

 とにかく真っ直ぐだ。


 おっと、意外と壁まで近かったな。

 壁まで行ったら右手に向かって五十歩進み、また元来た方角へと戻る。

 洞窟になっている部分は大きな岩山――まるでエアーズロックみたいになっているんだな。

 岩山にぶつかったら、また五十歩横に移動してまた走る。

 何度か繰り返すと、階段を見つけた。

 地図にメモをして、走る。


「よし、荒野のマッピング終わりっと。オープンフィールドは楽でいいなぁ。さて、帰るか、ブライ――っと、いないんだった」


 サクラちゃんとブライト。一緒にいるのが当たり前になって、どのくらい経ったんだろう。

 いや、まだそんなに経ってないぞ。

 サクラちゃんとだって、出会ってまだ五カ月程度なのに。


 ずいぶん長いこと一緒にいる気がする。

 いるのが当たり前。俺自身がそれに慣れてしまっていたんだな。


 そんな風に考えてると、なんか無性に寂しくなってきた。

 早く戻ろう。


 そしてみんなが待つ採掘ポイントに戻って来ると――。


「どこまで行ってたのよぉ。遅いから探しに行こうと思ってたのよ」

「ボクは大丈夫だって言ったんだけどね」

「で、どこまで行って来たのさ」


 地図をブライトに見せると、彼は首をぐるんっと回転させて傾げた。

 そして――。


「おまっ。バカじゃねーの! なんなんだよその地図! 埋めすぎだろ!!」

「いや、この辺りは全部オープンフィールドで」

「そこ全部走ったのかよ! だから埋めすぎだって!!」

「んもうっ。ひとりでそんな所までいったの!? 遠くに行かないようにって、私言ったわよね!」


 何故か怒られた。




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― 新着の感想 ―
「サクラちゃんとだって、はだ五カ月程度なのに。」→はだ?はだかの付き合い?( *´艸`)
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