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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
6章

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124/180

124:ブライトのピンチ。

「じゃあ、六十八階建ての高層ビルがまるごと入っているんですか?」

「そ。あと四十五階建てのビルも、原型を留めて残っている」


 ダンジョンに入って少し歩くと、そのビルが見えた。

 生成に巻き込まれた建物は、その全てが残っているわけじゃない。むしろほとんど存在が消えてしまうのだ。


「スタンピードの原因って、建物が綺麗に残ったことに関係しているんですかね?」

「いや、それはどうだろうね。過去にも建物が綺麗な状態で残っているなんてのは、間々あったからね。それに、残っている方が生存者も多いんだよ。建物内に逃げ込めるからね」

「まぁ、それは納得ですが」


 逃げ込める場所があれば、生存率も高くなる。

 東京の上野ダンジョンだってそうだ。亡くなった人も多いけど、助かった人もまた多い。

 ここのダンジョンでもそうだったらしい。


 ダンジョン専門の科学者と話しつつ、ビルの中へと入った。


「気をつけてね、サトル。ここ、少し傾いてるのよ」

「みたいですね。このぐらいの傾斜なら大丈夫でしょう。サクラちゃんはどう?」

「えぇ。このぐらいは平気よ。でも床がつるっつるだと大変かもね。ふふ」

「僕ぁ大丈夫さ。飛べるからね!」

「天井にぶつかるなよ、ブライト」


 傾斜は急ではない。でも斜めになっているのがわかるほど。

 どこかの会社のオフィスだったんだろうな。机がずらりと並んでいる。

 だけど椅子はあったりなかったり。

 傾斜の下方にある椅子はどこかへ行ってしまっている。


「これ、落ちて来たりしないんですかね?」

「ちょっと心配よねぇ」

「まぁ調査が終わったら、少しずつ運び出すかって話にはなってるんだがな。なんせ六十八階だぜ?」

「全部のフロアにオフィスがある訳じゃないけど、それでも膨大な数のデスクとチェアがあるだろうな」


 うわぁ。考えただけで嫌になりそうだ。


「あら。運びださなくたって、私のアイテムボックスならその場で入れられるわよ」


 と、サクラちゃんが足元で言う。そして実際に、そこにあった机をアイテムボックスへと収納した。

 アイテムボックスに物を入れるのは、そう難しくはない。

 サクラちゃんのように『持ち上げることが困難』は場合は、広げたアイテムボックスの口を押し当てればいいだけだ。

 アイテムボックスの容量はまちまちだけど、最低でも四畳半サイズがある。

 サクラちゃんのはそれより少しだけ広い、大型コンテナサイズだ。


「ひとりじゃこの部屋の机と椅子を回収したらパンパンになっちゃうけど、アメリカにだってアイテムボックススキルを持ってる人がいるでしょ?」

「あ、あぁ。そりゃもちろん。うちのギルドだけでも三人はいるし」

「俺んとこも三人いるな。ひとりは特大サイズだしよ」


 特大ってことは、たぶん体育館サイズか。

 アイテムボックスは全部で五段階のサイズがあると言われている。

 下から四畳半、大型コンテナ、コンビニ、コンビニ二軒分、そして体育館だ。

 日本だとこう説明している。


「いやぁ、ミス・サクラ。君のおかげで調査後の憂鬱な作業に光が差し込んだよ」

「素晴らしいアイデアだ。キュートなだけじゃなく、クールでもあるんだね君は!」

「あ、あらやだ。ふふ、そんなに褒めないで。きっとこれは、アイテムボックスのスキルを持っているからこそ思いつけただけよ」


 いやいや、グッジョブだと思うよ。

 これで荷物の運び出しら一気に楽になるのだから。

 それでも六十八階分だ。作業は数日かかるだろう。


 俺たちはビルの非常階段を使って下へと向かう。

 階段を下りるのを止め、フロアの方へと移動したのは――四十五階か。


「よし、ここで一度休憩だ」

「え、ここでですか? 昼食にはまだかなり早いと思いますが」

「違う。ただの休憩だ。あっち見ろ」


 ヒューが顎で示したのは、床に座り込んだ科学者たちだ。


「彼らは一般人よ。私たちスキル持ちはその恩恵で身体能力も体力も増えてるけど、彼らはそうじゃないの」

「昔だったら二十三階も階段を降りてきたら、足が棒になっただろうな」

「あ……そうですね」


 そうだ、忘れていた。

 普段だと、救助した人を最寄りの五の倍数階まで誘導したら転移装置を使って地上に出るだけだったし。こんな長い階を上り下りするなんて、俺ひとりの時だってしたことはないもんな。


 科学者一行の息が整ってから再び移動。

 なぜここなのかというと――。


「これだ」

「なんだぁ? 壁に穴が開いてらぁ。これってもしかして……」


 ブライトが床に下りて、その穴を覗き込む。

 これ、もしかしてダンジョンの階段か?

 

 ここはビルの一番端。壁の向こうはだ。その一番隅の角に穴があった。覗けばそこには階段も見える。

 ただし半分。いやそれ以下かな。

 人がひとりやっと通れるほどしかない。


「そう。たぶんこれは下層への階段なんだ」

「そしてここはおそらく、地下十三階だ。まぁ一階層の平均天井高を五メートルと計算してだがね」


 ダンジョンは各階層が独立した空間になっている。

 だけど生成に巻き込まれたビルの高さと階層の高さは、不思議と一致していた。

 オープンフィールドも、建物の高さ五メートルで一階層分ということになる。


「実はなサトル。今回のスタンピードは三カ所で起きている」

「え!? さ、三カ所って……」

「ボスモンスターが三体いたの。だから間違いないわ」

「その一カ所ってのが、ここからひとつ下の階層だ。ビルで言うと地上四十三階。ダンジョンだとおそらく地下十二階の位置する」

「そのひとつ下ってのがな、オープンフィールドだったのさ」


 オープンフィールド……。


「この階段が機能しているのかいないのか。それを調査したくて今日は来たんだ。じゃヒュー。頼むよ」

「あぁ。おい、集まってくれ」


 ハンターが集まって、全員、荷物をその場に置く。


「サトル。階段を使って下に行くわ。それが出来るかどうか確かめるの」

「階段の機能って、そういうことですか」


 分断された階段。機能していれば下の階に下りれるはず。していなければ下りれない。

 狭いから荷物を置いて最小限の装備だけで下りるのか。


「あら。エディやトムみたいにムッキムキじゃなくて細マッチョさんやスレンダーな人ばかりだったのは、こういうことなのね」

「ふふ。正解よサクラ。ブライトは飛んでいけないから、私が抱っこしてあげるわ。うふふ」

「野郎に抱っこされるよかいいね!」


 お前……帰ったらスノゥに言いつけるぞ。


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