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116/124

116:おやつは300円まで。

「えっちょ、えっちょ」

「おやつは三百円までだぞ!」

「さんびゃくえーん」


 どこでおぼえたんだ、おやつは三百円までって。


 ツララとヴァイスがごねた結果、スノゥ含めて一家も一緒に行くことになった。

 まぁニューヨークに行っても、ダンジョンに入る時にはいつも通り留守番なんだけどさ。


 父さんと母さんは、急に家が静かになるから寂しいと言ったが、ツララたちに「初旅行ね」と言い、旅行を知らない二羽に意味を教えると、ツララもヴァイスもうきうきで旅行の準備をしている。

 母さんが二羽用に作ってくれた小さな鞄に、お気に入りのハンドタオルや手作り枕を入れては出し、また入れては出す。その繰り返しだ。

 間違っても「おやつ」は入れていない。


 フクロウは完全な肉食で、食べるのは肉のみ。

 獣医さんのお勧めで冷凍うずらやヒヨコ、あとマウスだったりする。

 そんなものを鞄に入れて持って行けるわけがない。空港で止められてしまう。

 だから飛行機の中ではご飯を我慢してもらうしかない。

 まぁ今でも一日二回の食事で足りているし、獣医さんの話だとそろそろ一日一回の食事でもいいって話だ。

 家を出発するまでにしっかり食べてもらえば、アメリカまでもつだろう。


 そのために、今日は夕食を少なめにする。


「ツララちゃん、ヴァイスちゃん。今日は早寝するのよ」

「はーい。お荷物入れたら寝るのー」

「寝るぞーっ」


 ツララたちが鞄に入れたハンディタオルは、後で取り出して綺麗に畳んでやらないとな。

 荷造りはサクラちゃんもやっている。こちらはちゃんと服を着ているし、着替えが必要だ。

 サクラちゃんは干し芋をおやつに持って行くが、機内では食べないと言っている。


「だってツララちゃんたちが食べれないのに、お姉さんの私が食べるなんておかしいでしょ?」

「その理屈だと、俺も機内でおやつを食べちゃダメってことか」

「当たり前じゃない! 一番お兄さんなんだから、ダメに決まってるでしょっ」


 怒られた。


 普段より早くベッドに入り、目を閉じる。

 アメリカかぁ。

 ハワイとグアム、オーストラリアなら家族旅行で行ったことがある。でもアメリカ本土は一度も行ってない。

 ニューヨークって、物価が物凄く高いって聞くしなぁ。

 でも持って行ける現金には上限があるし。節約生活しないとなぁ。





「キャッシュレス決済にすればいいじゃない。私はアメリカでも使えるキャッシュレスのアプリ入れたわよ」

「い、いつの間に……」

「僕も入れたぞ」

「私も入れました」

「いれたー」

「お前はスマホ持ってないだろ」


 え……サクラちゃんもブライトもスノゥも、キャッシュレスに対応しているのか。

 もしかして俺だけ現金派?


「悟、お前一ヶ月以上滞在するかもしれないのに、現金だけでどうにかしようと思ったのか?」

「無理に決まってるじゃない。もう、出発当日になってそんなことぉ」

「おばさま、大丈夫よ。悟くんのお金の世話は私がするわ」

「ごめんなさいねぇ、サクラちゃん。もうぽやぁっとしてるんだから、悟はぁ」


 ぽやぁって……。

 はぁ。でも早いうちにアプリとか入れておくんだった。今からやっても大丈夫かな?

 母さんの車で空港に向かう間にネットで調べてみたけど、面倒くさくなってしまった。

 アメリカにいる間は、サクラちゃんに養ってもらおう。はぁ……。


 空港に到着したら、専用ゲートへと向かう。

 普通の飛行機に乗るのなら、周辺の乗客に配慮してケージに入れなければいけない。貨物室じゃないだけマシなんだろうけど。

 だけど今日乗るのは――。


「来たな三石。荷物は彼らに預けてくれ」

「お、おはようございます、社長」

「おはようございまーす、安虎社長さん」

「ひっこーき! ひっこーき!」

「ツララ、こいつは飛行機じゃねーぞ」


 社長のプライベートジェットでアメリカに渡る。

 それを知ったのは今朝だ。急に電話でそんなこと言うから驚いてしまって……。

 空港でチケットを渡すと聞いていたのに、まさか専用機だとは。


「言ってなかったか?」

「聞いてませんよ」

「そうか。俺の飛行機でアメリカに行くぞ。ほら、言っただろ」


 あー、うん。今言ったね。


「だからわたしが三石くんに伝えるって、あれほど言っただろ。自分が伝えるって聞かないからこんなことになるんだ」

「金森さん、いつも大変ねぇ」

「あぁー、ほら。サクラにまで同情されてる。あー、わたしかわいそうっ」


 そう言いながらも、金森さんは俺たちを飛行機へと案内してくれる。

 ゲート前でパスポートのチェックを受け、それから飛行機内へ。


 え……ソファーがある。テーブルも。


「悟くん、見て! この飛行機、ベッドがあるわ!!」

「え? どこっ。うわぁ、本当だ」

「椅子がたくちゃんのお家みたーい」

「これが飛行機? おっちゃんの話と違うぞっ」


 ツララとヴァイスは、父さんに飛行機のことを聞いたようだ。

 俺もこんな飛行機、知らない。


 こ、これが金持ちのプライベートジェットなのか。

 

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