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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
4章

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115:ビエェェーン!

 三日後。またオーランドから連絡が来た。


「Hi、サトル。さっきボスを倒したよ」

「じゃあまだスタンピードは収束していないんだな」

「そうだな。でもボクはもう引き上げる」

「え、なんで?」

「かなりの数のハンターが来ているからな。もうボクの出る幕はない。早く帰ってローラを吸いたい」


 ローラって誰だよ。まぁどうせ飼ってる動物なんだろうけど。


「それじゃあサトル。近いうちに会おう」

「え? 日本に来るのか? ……おい、おーい。あっ、切りやがった」


 電話の音で起こされたのに……あいつ、最後までちゃんと言わずに切りやがった。

 まぁ無事にスタンピードのボス討伐が出来たのならよかった。


 この日、出勤するとすぐに後藤さんに呼び出された。


「三石です。失礼します」

「おう、入れ」


 待機室じゃなく、部長室に呼ばれるなんて珍しいな。


「どうしたんですか、わざわざこっちに呼ぶなんて」

「あぁ、ちょっと座れ」


 と言われて、人をダメにするクッションに腰を下ろす。

 なんでこの部屋はソファーじゃなくて、人をダメにするクッションが四つも転がっているんだ。


「実はな、社長がアメリカに捜索隊支部を作ることにしてな」

「え、アメリカで捜索隊ですか!?」

「あぁ。ただ日本の捜索隊と違って、依頼があった時だけ登録ハンターが出動するって仕組みになるそうだ。まぁ副業みたいなものだな」


 副業で救助活動か……。

 でも確かに、俺たちも待機してるかダンジョンでパトロールするかないもんな。

 なんだったら余裕をもって救助出来るように、そして下層での救助活動も出来るようにって、最近はレベル上げしてるぐらいだし。


 ハンターだって毎日ダンジョンに潜ってるわけじゃないだろう。

 いや、潜っている時に要請があれば、そのまま現場へだって向かえるはず。

 悪くないシステムなのかもしれない。


「それでだな。捜索隊に登録したハンターに救助研修をやってくれと社長と、それから登録ハンターから依頼があってだな」

「救助活動の研修ですか? なにか必要でしたっけ……」


 ハンターならモンスターの対処だって慣れてるし、人助けの方法なんて別に特別なことはないんだけどな。


「主にうちの製品の使い方とか、優先順位だとか、そういったことだそうだ」

「はぁ……」

「それでだ。まずはニューヨークに支部を建てるから、お前、行ってくれないか?」

「ニューヨークにですか? えっと、それって転勤?」

「違う違う。出張だ。まぁ一ヶ月、長くても二カ月か。ついでに、アニマル隊の方も作れないかって依頼があってな」


 ん? 依頼?

 ニューヨーク……アニマル隊……。


「それって、オーランドですか」


 俺がそう言うと、後藤さんが「はぁ」っと溜息を吐いた。


「技術部で開発したアイテムの中には、量産可能になったものも結構あるんだ。だが日本には冒険者が仲間同士で連合を結成するというシステムがない。今だとパーティー単位がせいぜいだ」

「はぁ」

「だから、売れないんだよ。製品が」

「はぁ……」

「それでだ、アメリカのハンターギルドと取引することになったんだ」


 大きなギルドだと数十人規模になる。そしてお金もある。

 うちの技術部が開発したアイテムは高額だ。そもそもの素材がダンジョン産だし、研究開発に使う機材もダンジョン産素材を使ったもの。

 作るだけでも結構なお金がかかっている。


 ポーション一本数千円。ハイ・ポーションだと数万円。

 安いと思われがちだけど、冒険者なんてしょっちゅう怪我をするんだし、こんなもの一回の探索で数十本も使えないだろ。

 昨日の帰還石は百万円単位だし。まぁアレは消耗品じゃないから、エネルギー充電で何度でも使える。一度の充電で十回ぐらい使えるそうだしな。


 で、作ったのに売れなければ経費が回収されない。

 捜索隊で使うアイテムは、ハッキリ言って回収なんて不可能だ。


 ATORAグループの中でも、捜索隊部署は赤字なんだよなぁ。

 それでも捜索隊がつぶれないのは、社長のおかげだろう。

 

 その社長命令っていうなら、行かないわけにもいかない。


「でもなんで俺なんですか……」

「そりゃあ、協力してくれるハンターギルドが『ブラッディ・ウォー』だからさ。仲良しだろ、オーランドとは」


 仲良しっていうのか?


「出発は十日後だ。サクラとブライトも同行してもらう予定だ」

「サクラちゃんたちもですか? パスポート持ってないはずですよ」

「お前、忘れてはいないか?」

「忘れるって、何をです?」

「サクラとブライトは動物だ。動物はパスポートがなくても渡航出来るんだよ」


 ……あ。

 スキル持ちの動物たちは、いろいろ扱いが変わったとはいえ戸籍はない。

 戸籍がないからパスポートも作れないってわけだ。


 そうだったそうだった。動物だったんだ。


「というわけだから、両親への説明をしておくんだぞ。」

「了解です」






「ヤァダァァァァァ。ビエエェーンッ」

「ツ、ツララァ。そんなに泣くなよ。一、二カ月で帰って来るから」

「ヤアァァァァァァァーッ」


 帰宅してうちの両親に出張の件を話す後ろで、ブライトも家族にその話をした。

 ツララはぎゃん泣き。ヴァイスはクールだなと思ったら、泣きながらブライトを突いていた。


「もう二羽とも、お父さんが困ってるでしょ」

「お母しゃぁぁん。チュララも一緒いくぅぅぅぅ」

「クソ親父と顔合わせてる時間短けぇのに、完全に会えなくなる――と、ツララが泣くだろ!」


 お前も泣いてるけどな、ヴァイス。


 確かに、捜索隊の仕事で朝早くから夕方遅くまで子供たちとは顔を合わせない。遊んでやる時間も少ないのに、一ヶ月か二カ月、完全に会えなくなるのはかわいそうかもしれないな。

 それに、ツララもヴァイスも、二カ月会わなかったらどんだけ成長するのか。

 人間の子供とは違うからなぁ。


「イグゥゥゥゥゥゥゥーッ」

「連れていってやれぇぇぇーっ」


 これは……明日、後藤さんと相談だなぁ。


「イヤアアアアァァァァァァッ!!」



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