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114/123

114:日本語って難しい。

「いやいや、唐揚げは鶏肉じゃないか。ブライトのことじゃないって」

「だから鳥肉なんだろ? 僕だって鳥さ」

「いや、鳥じゃないんだって」


 なんでわからないかなぁ。

 帰宅途中、会社で鳥たちが騒いでいた理由をブライトに聞いたら「僕らを唐揚げにしたいのか!?」と、涙目で言われた。

 なんでブライトたちを唐揚げにするんだよ。

 たぶん美味しくないぞ。


「もうあなたたち、さっきからとりとりって。鶏肉食べたくなるじゃないっ」

「サ、サクラ、おめぇまで!? なんて野郎だ!」

「うるさいわねっ。だいたいあんたたち、会話が微妙にズレてるのよ! 悟くんの言ってる鶏肉は、にわとりのことでしょ!」

「だからそう言ってるんだよ、俺は」

「に、にわとり!? いやいや、悟はずっと『とり』って言ってたじゃないか」


 鶏はとりにくって言うだろ。


「なんだ、にわとりかよ……はぁよかった」


 どこで誤解されていたんだ……あ、家が見えて来た。






 帰宅して部屋に荷物を置いてリビングへ。

 うぅん。香ばしいニオイだ。


「ただいま。唐揚げ、間に合ったんだね」

「みんなおかえり。スーパーまで直ぐだもの」


 家からスーパーまで、車で七分ぐらいだもんな。いい立地だ。


「サクラちゃんとブライトたちにも鶏肉買ってきたから、みんなで食べましょうね――って、どうしたの、ブライト」

「あぁ、鶏肉のことを、鶏じゃなくって鳥だと勘違いしてたんだよ」

「まぁ!」

「ははは、そりゃ発音は同じだからなぁ」

「あ、父さん。ただいま」

「あぁ、おかえり」


 車椅子に乗った父さんの膝の上には、ツララとヴァイスが。肩にはスノゥがいる。

 ブライトとスノゥは、家の中ではなるべく飛ばないようにしていた。

 理由を聞くと、飛ぶ時に羽根が落ちてしまうからだって。あと埃も舞う。

 気を使ってくれているんだな。


「なぁ悟。上野のダンジョン内の建物って、そっくりそのまま残っているのか?」

「ん? どうだろう。元の建物のことがよくわからないから」

「でもそのままだと思うわ。救助の時フロアガイドの地図貰ってたけど、その通りに移動しても迷わなかったじゃない」

「けどさ、間にダンジョンが割り込んでたとことかもあったよな」

「そうね。ショッピングモールにダンジョンが割り込んでたけど、面積は少なかったじゃない」


 父さんは彼らの話を聞きながら、何か考えているようだった。

 建築家として気になったのかな?


「さ、ダンジョンの話はここまで。ご飯にしましょう」

「わぁーい。ごっはん♪ ごっはん♪」

「ごっはん♪ ごっはん♪」

「飯だ飯ー」

「ははは。ツララはサクラちゃんの物まねが上手だねぇ。ヴァイルは誰の影響かな? 貫禄のある男の子になるだろうなぁ」

「えへへ~」


 父さんの膝の上でヒョコヒョコと踊っていたツララは、撫でられてご満悦だ。

 それを見てヴァイスが、どことなく父さんにすり寄っているように見える。もしかして自分も撫でて欲しいってことなのか?

 ヴァイスって……甘えん坊だった?


「そうそう。お父さんがね、みんなのためにテーブルを作ってくれたのよ」

「え、父さんが? っていうかブライトたちのテーブル?」

「あぁ。犬や猫もな、床に置いたご飯を食べると胃を圧迫してなのか、吐き戻ししやすいってネットにあったんだ。だったら他の動物もそうかなと思ってな」


 食器の位置を少し高くしてやるといいらしい――というのもネットで見たらしく、それでブライトたちように食卓となるテーブルを作ったと。

 まぁ五、六十センチほどの、小さな長方形のテーブルだ。足の高さも二十センチほどしかない。

 なんとみんなの分の椅子まである。サクラちゃんの椅子には背もたれもあって、小さな子供でも使えそうだ。


 犬猫も食器の高さは高い方がいいのか……。


「ね、父さん。そのテーブルさ、たくさん作れないかな?」

「あっ。本部住みの子たち用ね!」

「うん。食器は捜索隊の経費で買ってあるけどさ、テーブルがあるとみんな食べやすいかもと思って」

「アニマル隊かぁ。よし、父さんに任せろ。必要な数を用意してやろう。端材がいろいろあるからな、材料費はタダで作れるし」


 職場で余った資材だからタダで使えるんだろうけど、普通はお金取られるんだろうな。

 

「ほぉら、お話してないでご飯でしょ」

「おっと、そうだった。母さんに怒られるまでに夕食にしよう」


 俺たち三人はダイニングテーブルで。サクラちゃんとブライト一家は横に置かれた小さなテーブルへと着席に、みんなでいただきますをした。


 夕食後、風呂にも入ってベッドで寛いでいるとスマホが鳴った。


「Hi、サトル。東京に四つ目のダンジョンはどうだ?」

「オーランド? どうと聞かれても、冒険者じゃないから探索はしてないし」

「What`s!?」

「オートマッピングのスキルで、上層階から順番に地図の作成をしているんだよ。冒険者が迷わないように」

「ナルヘソ」


 ナ、ナルヘソ?

 また変な日本語を覚えたなぁ。


「悟、実は昨日、ニューヨークにもダンジョンが生成されたんだ」

「え!? ニューヨークにも!?」


 しかも昨日って……いや待て。なんか向こうの方で唸り声が聞こえてんだけど。


「オーランド、お前、今ダンジョン内か?」

「YES! 今、生成に巻き込まれた人の救出・・作戦中なんだ」

「きゅ、救出作戦って……電話なんかしてる場合じゃないだろうっ」

「大丈夫。ボクは休憩中だから。それよりさ、君たちはどうやってスタンピードの早期鎮圧を成功させたんだい?」


 オーランドのその言葉で、ニューヨークで新しく生成されたダンジョンでも、スタンピードが起きていることがわかった。

 

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