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110/122

110:見えてきた終わり。

 スタンピードのボスを倒して四時間経過。

 ようやく……ようやく終わりが見えて来た。


 終わりといっても、実際にはモンスターがゼロになることはない。

 ダンジョン内は常に一定の数が生息している。それ以下になれば必ずどこかに湧いてくるからだ。


「じゃあどうやってスタンピードが終わったって、判断するの?」

「階段だよ」

「階段?」


 食事休憩のため、乱戦地帯から少し離れた場所へと来ていた。

 

「平常時には、モンスターって階段を上ってこないだろ?」

「えぇ、そうね。上って……あっ」


 階段を上ろうとするモンスターがいなくなれば、スタンピードは終了だ。

 だから今は、階段のところをわざと空けてある。


「ふぃ~。やぁっと一息付けるぜ」

「お疲れ、ブライト。ツララたちは?」

「子供たちはショッピングモールだぜ。さっき無線で聞いた。ぐっすりおねんねさ」


 ボスの登場が早かった――といっても、なんだかんだと二十時間以上は経ってるからなぁ。みんな疲れてるし、眠くもなるさ。

 まだまだ赤ちゃんといってもいい月齢なのに、ツララもヴァイスもよく頑張ってくれたもんだ。


「さぁ。あともうひと踏ん張りだ。頑張ろ――」

「あー、いたいた。サクラちゃん、だったわよね。ジェネラルスケルトンと戦ってたの」


 そう言って女性の冒険者がやってきた。


「えぇ、そうです」

「スキルの覚醒した自覚は?」

「あるわっ。きっと何かあるの!」

「んなっ。サクラお前ぇ、ズルいじゃねえか!」

「だってあんた、他の鳥さんたちと別の場所で雑魚処理してたじゃない」

「はいはい。ここで口喧嘩しないで。それでね、私、鑑定スキルを持ってるの。だから何のスキルを手に入れたのか見れるのよ」


 なんだって!?

 鑑定スキルはレアな部類なんだけど、スキル持ちがここにいたのか。

 ただ鑑定スキルで分かるのは、スキル名だけ。

 スキルの中にはパっと見だと、なんのスキルなのかわからないものもある。冒険者ギルドで装置を使って調べるやつは、その効果や発動条件も調べることが出来る。

 まぁ名前だけで内容がわかるものもあるから、鑑定してもらって損はない。


「あの、俺もスキル覚醒したんですけど、一緒に鑑定してもらっていいですか?」

「もちろん。じゃ、ひとりずついくわね。まずはサクラちゃん」

「ドキドキしちゃう~」

「んー…………。あ、このスキルは知ってるわ。スキルは『見えざる鎧』。防御系のスキルで、全身を包み込む目に見えない魔法の鎧を付与するものよ。一定ダメージを無効化するの」

「凄い。いいスキルじゃないかサクラちゃん」


 ヘイト取って敵を魅了し、ダメージ無効まで。小さな体で最前線に立てるスキルだぞ。

 けど……サクラちゃんはどこか浮かない顔だ。


「あの……このスキルって、本人限定のものよね?」

「えぇ、最初はね」

「え、最初?」

「スキルレベルが上がっていくと、任意の相手にも付与できるようになるわ。私の知り合いがこのスキルを持っててね。彼、今じゃ十人ぐらいまで付与出来るの。彼の話だと――」


 どうやら最大で十人なんじゃないかって話をしているようだ。

 というのも、使い始めて数日で自分以外の人にも付与出来るようになり、三ヶ月ほどでその人数は十人になったと。


「でも彼、冒険者になって七年なのよね。そのスキルを手に入れたのは二年前なんだけど、それからもう付与対象は増えてないって」

「そうなのね! 十人……もっと多かったらいいのに」

「何言っているんだサクラちゃん。十人って凄い人数だぞ。確かにこの現場を見てると少なく感じるだろうけど、普段は四人から六人のパーティーが多いんだ。十分な人数だよ」

「そ、そうね。贅沢言っちゃダメよね。私……攻撃は出来ないけど、みんなを守る事は出来るのね!」

「あぁ。それに攻撃だってさ、開発部が作ってくれたものがあるじゃないか」



 ヘイト管理して魅了して、みんなを守って。

 先頭に立ち、ファイア・ロッドで攻撃する。

 最強布陣じゃないか。


 浮かない顔をしていたのは、誰かの役には立てない――そう思ったからだったのか。


「あっ。悟くん、悟くんのスキルは?」

「はいはい、今から見るわ――――えっと、これは知らないスキルだわ。『ストーン・ウェーブ』。名前からだと、岩を波のように?」

「やっぱりそんな感じか。あ、実際に使ったんで、スキルの効果自体はなんとなくですがわかっているんです」

「そうですか。でも後日、ちゃんとギルドで鑑定してくださいね。はぁ~、まさか十八人もスキル覚醒したなんて……羨ましい。私もジェネラルに触っとくんだった」


 じゅ、十八人も……。


「このスタンピード自体、発生理由が変だし、何か他と違ったのかしら。まぁスタンピード中は確率アップって話は聞くから、それかもしれないけど」

「あ、そうなんですか」

「あくまで噂レベルだけど、ここまでスキル覚醒した人が多いと、その噂も信じちゃうわよね」

「でもだからってスタンピードを故意に引き起こすわけにもいきませんしね」

「あったりまえよ! 今回はスタンピードでの犠牲者が出なかったけど、本来なら――。たぶん発生源が上層階だったからでしょうね」


 もし下層の方から始まっていたら、高レベルのモンスターが上がって来ていたはずだ。

 そうなれば甚大な被害が出ていたに違いない。


 幸運だったんだ。今回のは。


 スキルの名前がわかったところで、俺の方はやることは同じだ。

 拳を地面に打ち付けて、範囲攻撃の練習にいそしむ。

 扇型や、俺を中心に波紋のように広がる形にしたりと、いろいろ試してみた。

 結果――直線や扇型に広がるヤツが使いやすいことが判明。


 そもそも俺ひとりが囲まれる状況がないしなぁ。

 大ジャンプしてモンスターの真っただ中に飛び込まない限り……。


「ふんぬぅーっ」

「サ、サクラちゃん。何しているんだい?」

「スキルを使ってるのぉ。どうやったら発動するのかしら」

「あー……スキルってさ、イメージが大事じゃないか。あと気持ちとか」

「気持ち?」


 んー、防御系スキルだからなぁ。


「守りたいっていう気持ちとかさ」

「守りたい……やってみるわ! んんーっ」


 あ、サクラちゃんが光った。出来てる出来て――ん?

 なんで俺も光っているんだ?


「はぁ、やっぱり無理みたいぃ。ギルドで詳しく鑑定してもらわなきゃダメね」

「……いや、たぶん成功してるよ」

「え? そうな……悟くん、うっすら光ってるわ。どうしたの?」


 俺が光っている――というより、光の膜につつまれている感じだ。

 これ、サクラちゃんの『見えざる鎧』じゃないかな?



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― 新着の感想 ―
高【れべる】のモンスターが→高【レベル】のモンスターが の方が良いと思いますよ\(^_^)/
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