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11:真顔でツッコミ。

――[今のなに!?]

――[爆発してね? パンチで爆発? は?]

――[爆発したんじゃないな。ワーウルフがマッハでぶっ飛んで背後の壁にめり込んだ時の衝撃音だ]

――[それはわかる。わかるけど今一瞬何がどうなったのかカメラで追いきれてないだろ?]

――[残像しか見えんってwww]






「俺、殴った……だけ……」

「キャァァァ~ッ。やったわ。やったじゃない悟くん! あなた、やっぱり強いのよ。すっごく、すごぉ~く! あ、悟くん、あっちの犬っコロもやっちゃって!」

「犬……ワーウルフだよ、サクラちゃん」


――[はい天然天然]

――[真顔でツッコミwww]


「そんなのどうでもいいのっ。あ、ヤダこっちこないで。来ないでって言ってるでしょ!」

「サクラちゃん、それダメッ」


 サクラちゃんが後ろ足で立ち上がり、威嚇ポーズをとる。

 威嚇のスキルは敵意を自分に向けさせるスキルだ。残った十数頭のワーウルフが一斉にサクラちゃんを見た。


――[ん? 何がどうなった? 犬っコロがぜんぶサクラちゃんガン見?]

――[なんかカメラの端っこが光った?]

――[サクラちゃん、威嚇のスキル持ちだって話してたよな?]

――[サクラちゃああぁぁぁん逃げてええぇぇーっ]

――[ちょまっ。ワーウルフが次々と画面から消えてんじゃんwww]


 威嚇ポーズをするサクラちゃんの横を抜け、一頭、二頭と拳を叩きこんでいく。

 銀色のワーウルフを殴ったときもそうだった。重みがまったく感じない。

 ワーウルフって、確か平均的な体重は百八十キロぐらいだったはず。


 俺の握力って、いくつだっけ?


 ……あれ? 握力測ったのって……いつだ?

 確か十三歳の時に計測器を壊してしまって、その時は古いから壊れたんだろうって言われたけど。

 予備が見つからないからその年は、計測なしって書かれたはず。

 十四歳の時にも計測器を壊してしまい、十五でも……担当の人に「もうお前は計測しなくていい! 何台新しいのを買い替えさせる気だ!」って怒られて……。

 つまり十二歳の測定が最後か。


 いくつだったけっか?

 スキル持ちの人は、高いと握力二百三十なんてのもいる。だから計測器では最大、三百まで測れるんだけど。

 十二歳の時、担当の人が「そろそろ限界か」って言ってたような。


――あなたは強いの。強すぎて気づいてないのよ。


 サクラちゃんの言葉が頭を過る。

 確かに、ダンジョンで生まれた俺は、普通の人よりは強いだろう。

 身体能力だけで言えば、スキル持ちの中でも優れた方だ。だって身体能力を強化するスキルを、二十二年間持ち続けてきているのだから。


 身体能力って……パンチ力とかも含まれるのか?

 いや、含まれて当然だ。

 骨はめちゃくちゃ硬い。そんな俺が時速百キロ近い速度でぶつかれば、モンスターが吹っ飛ぶのも……当然なんだ。


 なんで今まで考えなかったんだ。

 攻撃スキルを持ってないから戦えない。ずっとそれしか考えてこなかった。


「次はどいつだ!」


 一匹も逃すわけにはいかない。ここで全部片づける。


「もういないわよ、悟くん」

「……え?」

「全部ぶっ飛ばしちゃったわよ。ぜーんぶ、ワンパンで」

『悟うぅぅぅーっ。無事かぁぁーっ。息子同然のお前に死なれたら、俺は……俺はぁぁぁぁ』


 イヤホン越しに後藤さんの悲鳴が聞こえてくる。遠くで佐々木さんや他の社員が、後藤さんを宥める声が聞こえていた。


「ふぅ~ん。悟くんが今まで自分の強さに気づかなかったのは、後藤さんの過保護のせいかもねぇ」


――[ごとさん]

――[悟くんを一番に抱っこしたの、後藤さんなんだよな]

――[親父かよww]


 まぁ、確かに後藤さんは心配性ではある。

 ゴブリンをぶっ飛ばしたって言ったら「危ないから二度とやるな!」って怒られたし。


「後藤さん、ワーウルフの討伐完了しました。秋山さんたちの位置は?」

『無事だったか!? ワーウルフどもがフェードアウトしたように見えたが?』

「ぶっ飛ばしました」

『は?』

「輸血した要救助者の意識がまだ戻りません。意識があっても自力での歩行は無理ですし、秋山さんたちと合流しないと移動できないんです」


 トラップ部屋は、今や部屋とは言えない状態だ。ただの行き止まりの通路だからな。

 さっきの銀色のワーウルフは、ここのネームドモンスターに登録されてある個体だ。

 あいつが次に湧くのは数日先だけど、普段から生息しているモンスターならいくらでも寄って来る。


 早く地上に出て、彼らを休ませないと。

 そのための目的地は十五階の転送陣。そこまで行けば転送陣で一階まで瞬間移動出来る。


――[うおっ。ドロップでてんじゃん!]

――[これダイヤじゃね?]

――[ピンポン玉サイズwwww]

――[何千万すんだよw]

――[億だろ億]


「さ、ささ、悟くん! ちょっとこれ見てっ」

「ん? お、おお。ダイヤの原石出てたんだ」


 サクラちゃんが壁を指出す。そこにはキラリと光る透明な石が埋まっていた。

 ワーウルフの死体はもうない。

 モンスターを倒すと、その死体は数秒、長くても一分程度で煙になって消える。

 その時にドロップアイテムをころんっと落とすのだ。


 あいつ、落としていかずに壁に埋め込んで消えたんだな。最後までいやらしい奴だ。



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