109:勝ち確。
な、なんだ? 誰かの魔法スキルか!?
それにしても……タイミングが良すぎる。
お、俺のスキル?
さっき富田さんが、あのスケルトンはユニークモンスターだって言ってたし。
まさかスキルが覚醒……した?
「さ、悟、今のはなんだ?」
「後藤さん。今のは……なんでしょう?」
「なんでしょうってお前」
「さっきユニークモンスターを倒したんです。もしかしてスキルを手に入れたのかも」
「な、なんだと!? よ、よし、もう一度やってみろ。今度はちゃんとサソリの腹の下を狙えっ」
やってみるしかない。
えっと……拳を地面に突き立てるのか?
あとイメージも必要なんだろう。
さっきは尖ったドリルが地面から何本も突き出していた。
けどドリルのサイズが一メートルぐらいだったか……あれじゃあサソリの腹に届いても、ひっくり返すことは出来ない。
なら。
ドリルは一本でいい。その分長くなれ!
「ウオオオォラアァァァァッ!!!」
ドンっと地面に拳を打ち立てる。
一瞬、ずんっとした振動を感じ、それからイメージ通りのドリルが――生えた。
ただ、イメージと違ったのはその後の。
サソリをひっくり返すはずだったのに、サソリの腹に突き刺さってしまった。
その結果、サソリは体が斜めに傾いたまま固定。
「……ちょ、ちょっと予定とは違ったが、腹が出てることに変わりはねぇ。みんな、殴れ!!」
「「お、おぉー!?」」
ま、まぁいいよね。足元に拳を叩きつけるより縦になってる分、殴りやすくなるはず。
「オラオラオラオラオラァッ!」
「無ぅー駄無駄無駄無駄ぁ!!」
十数人が一斉に殴り始めると、殴るための場所がなくて傍観することになってしまった。
腹が丸見えになったことで、遠距離スキル持ちも一斉に攻撃しはじめる。
「三石、スキル効果が切れそうだ。もう一発打てっ」
「あ、はい。じゃあみなさん、少し下がってくださいね」
オラオラ無駄無駄していた人たちが数歩後退する。
それとほぼ同時に、岩ドリルが消滅した。
「ウオオオォォォッ!」
で、もう一度ドリルを生えさせる。
このスキル、最初は一メートルぐらいのドリルが数本生えて来た。で、今は大きなのが一本と、イメージ通りに形というか本数や大きさを変えられている。
イメージで変えられるなら、あの複数バージョンの展開図を変えて……は、範囲にならないか!?
範囲。
範囲!!
ざ、雑魚モンスターで試したい。範囲になるのか試したい!?
そ、それじゃあ、まずは縦一列!
ドカんと拳を打ち付ける。
ドンッ、ドンッ、ドンッと、ドリルが一列に並んで生えて来た。
ん? これ、一斉にじゃなく一本ずつ時間差で生えてくるのか。
ウェーブみたいな感じかな。
ドリルの本数は――今は五本だ。大きさは一メートルほど。
ちょい短くすれば?
「っせい!」
ドカンと拳を地面に打ち付けて――あ、六本になった。
今度は縦じゃなく横。
おぉ! なんか壁みたいにできるな。
一本目は地面に打ち付けた拳の位置から、一メートルほど離れた場所にドリルが生えてくる。そこから横にって感じで生えてくるけど、横をイメージしたら左右同時に二、三本目、四、五本目が生えてきている。
ドリル! ドリ……微妙な範囲だな……。
一本につき一体ぐらいしか突き刺せないし、本数も少ない。ドリル同士に隙間もあるし、躱すのも簡単そうだ。
ドリルの長さを短くすれば、足に突き刺さる程度。まぁ小型モンスターなら一撃で倒せるだろう。
でも長さを短くすると本数が増えるって……もしかしてドリルに使っている岩の総面積が固定なのか?
だったら細くすれば――。
「――くんっ。悟くんってば!」
「え? サクラちゃん。あ、あれ?」
「サソリが死んだわよ! 私たち、スタンピードのボス討伐に成功したのよ!」
「え、サソリ……あ」
あ、れ……いつの間にかサソリがひっくり返っていて、その腹にはいくつもの穴が開いていた。
その穴から黒い煙がのぼっている。死んだ証拠だ。
「やったぞーっ!」
「スタンピードのボスを倒したぁぁぁぁっ」
「あとは雑魚を一掃するだけだ! 最後まで油断しないで、気合入れていけぇーっ!!」
「「おおぉー!」」
雑魚の一掃……スキルの能力を知る機会だ!
「悟くんあのね、私ね」
「サクラちゃん。俺、スキルが増えたんだ!」
「そうなの!? 私もなのっ。それにいろんな人がスキルに覚醒したのよっ」
「え、いろんな?」
「そうなんですっ。俺も新しいスキルを手に入れたみたいで」
嬉しそうに話すと富田さん。
もしかして……富田さんの『幸運を手繰り寄せ』スキル……なのか?
そういや、ブライトがスタンピードのボスを見つけたってタイミングに、富田さん、俺たちと合流してるよな。
……この人のスキル、恐ろしいレベルで幸運を手繰り寄せてる気がするんだが!?
あぁ、もうこの一掃戦、負ける気も、犠牲者を出す気もしない。