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108/121

108:サクラちゃん視点。

――格闘系スキル持ちたちがサソリを囲み始めた頃。



「富田さん、これ使って!」

「こ、これ? どうやって使うんだいサクラちゃんっ」

「ファイア・ボールって唱えながら振るの! 火の球は杖を振った向きに飛んでいくから気をつけなさいっ」


 ファイア・ロッドは彼に手渡した。

 彼は戦闘系スキルを持っていないから、彼に持たせるのが一番だと思って。

 私は富田さんの頭の上から魅了チャームでモンスターの動きを止めることに徹する。役割分担ってやつね。


「えっ、やだ何あれ!?」

「ど、どうしたのサクラちゃん!?」

「すぐそこに骨が湧いたのっ」

「ほ、骨?」

「そう、骨よ! スケルトンってモンスターよ! しかも腕が六本もある。凄いわぁ、絡まないのかしら」


 六本の腕は盾が二つ、残りは剣を握ってる。あんなの動かしてたら、私ならぜーたい絡まっちゃうわよ。

 それにしてもあのスケルトン、なんだか大きいわね。大柄な青山さんよりもっと大きい。

 あのお髭のおじさん、名前忘れちゃったけど、光る紐の――あ、あのおじさんよっ。こっちに来てたのね。

 献身だったかしら、あのスキルのおじさん。あの人も大きいものねぇ。でもスケルトンはあのおじさんよりも少し背が高かった。


「マズい。あれってネームドなんじゃ?」

「え、そうなの!?」

「い、いやわからないけど。でも普通のスケルトンと全然違うだろ? そういうのって、ネームドモンスターの特徴じゃなかったっけ?」

「い、言われてみたら……キャーッ。こっち来てるわっ。と、富田さんっ」

「うわあぁぁぁ――痛っ……くない?」


 振り下ろされた剣のさきっぽが、富田さんの腕を掠めた――ハズなんだけど、無事?

 あ、光の紐! 私にもくっついてる!


「大丈夫か」

「おじさん、助けてくれたのね。でもおじさんの方は大丈夫なの?」


 あ、ポーションたっくさん持ってるんだったわ。おじさんにかけてあげなきゃ。


「あぁ、これぐらいは大丈夫だ。しかしまさかネームドモンスターまで出ているとは」

「やっぱりあれ、ネームドモンスターですよね?」

「あぁ。あれはジェネラ……ジェネラルスケルトンだ」


 ポーション一本で大丈夫かしら。おじさんの頭からどばどばーってかけてみたけど。


「サ、サクラちゃん!? な、なんでこの人にポーションをぶっかけてるんだ?」

「このおじさんはね、献身ってスキルを使うのよ。ほら富田さん、あなたの腕に光る糸が絡まってるでしょ?」

「え? あ、本当だ。献身ってもしかして、他人の怪我を身代わりになって受けるって自己犠牲スキルですか?」

「あぁ。継続回復のスキルもあるが、間に合わない時はポーションを掛けてもらう必要もある。おい、ジェネラルスケルトンだ! 応援を頼むっ」


 んまっ。おじさんの声、凄く響くわね。

 おじさんの声を聞いて何人かが応援に駆け付けてくれたわっ。


 みんなでかかれば、骨なんて!


「富田さん、右よ! ゴブリンだわっ」

「ファイア・ボール! ファイア・ボール!!」

「私たちはヨワヨワコンビよ。ネームドなんて倒せっこないから、せめてみんなの邪魔をする雑魚を倒すの! こっちみなさいっ」


 私がチャームで動きを止める。


「ファイア・ボール! ファイア・ボール!!」


 富田さんが杖の力を使ってゴブリンを倒す。

 私も何か……アイテムボックスにないかしら。トレントの杖以外に、もう少し範囲の狭いものが。

 でも私の手じゃ、細いものか小さいものしか持てないわ。


 あぁ……どうして私には攻撃出来るスキルがないのかしら。

 もどかしいわ。


「くっそ。骨の癖にっ」

「六本の腕で同時に攻撃してくるから、なかなか決定打を入れられないっ」

「腕を切り落とせ! それが無理なら武器を叩き落とすんだっ」


 あっ。これだわ!

 サクランボサイズのビリビリ弾!


「これでも喰らいなさい! えいっ」


 ビリビリ弾でジェネラルスケルトンを痺れさせれば、武器を落とすはず!

 落とす――あ、ら?


「サクラちゃんっ。電撃系はスケルトンには利かないっ」

「え? そ、そうなの富田さん?」

「だって骨だから! 焦がすほど強力な電撃ならいいけど、ビリっとする程度じゃ利かないんだよ!」


 そんなっ。

 あっ。でもビックリしたのかしら、ジェネラルスケルトンが後ずさりして――!


「キャーッ。悟くん!」


 ジェネラルスケルトンが、悟くんの方に!?


「ん? サクラちゃ――邪魔っ」


 ええぇー!?

 パ、パンチ一発でジェネラルスケルトンを、ただの骨にしちゃった……。

 で、でも武器をいっぱい持ってたし怪我してるかも。


「悟くん、大丈夫だった?」

「サクラちゃん。大丈夫って、何が?」


 はぁ。大丈夫そうね。 


「三石さん。さっきのスケルトン、あれユニークモンスターですよっ。腕が六本あったでしょ!?」

「え……そう、だっけ?」


 見てなかったの!?

 まったくもうっ。抜けてるんだから――ん?


「あら……なにかしら、これ」

「サクラちゃん、何か落ちてた?」

「ううん。そうじゃなくって……えっと、これって、ダンジョン生成に巻き込まれた時みたいな……」

「おい悟! もう一回やるぞっ」

「あ、はい! 富田さん、少し下がっててください。危ないですから」

「わ、わかりました」


 そう。これって――。


「サクラちゃん、俺……もしかするとスキルを――」

「富田さんも!? 私もよっ。私も初めてスキルを獲得した時みたいに、体がほかほかするわっ」


 新しいスキルなの!?


「これは……スキルの覚醒反応!?」

「え? ひ、髭のおじさんも!?」

「もってことは、君もかい?」

「ま、待ってくれ大塚さん。オレもスキルの覚醒反応がっ」

「私もよ。でもなんのスキルかわかんない」


 え? え? どういうこと?

 こんなに一度にスキルが覚醒するものなの?

 ジェネラルスケルトン一体で、こんなに?

 幸運過ぎない???

 

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ジェネラルスケさん一体で複数人のスキル覚醒の兆し…。スケさんの経験値がかなり高い=そんだけ強いやつだったのか、たまたま覚醒のタイミングが合っただけなのか? なんにせよ兆しがあるな…
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