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106/126

106:パンチだ!

――[うはっ。サソリでかすぎやろ]

――[胴の部分だけで五、六メートルあるんじゃね?]

――[スタンピードのボスって、実は意外と早くご登場してた?]

――[これ始まってまだ十五時間ぐらいだろ?]

――[今までだと最速でも四十八時間じゃん]

――[お前ら。大事なのはそこじゃない]

――[どこだよ]

――[カラスとハトとインコがTUEEEEEってことだよ!!]

――[まぁたしかにww]

――[まだ鳥類のデータ、捜索隊公式に載ってないんだよな]

――[載ってたとしても見分けつかんってww]

――[にしてもさ、やっぱ冒険者って凄いな]

――[だな。まぁ映ってるの上位ランクばっかりだろうけど]

――[一般モンスターが、ゴミのようだ]

――[吹っ飛びすぎwwww]



 いいな……範囲攻撃。

 俺もさ、力いっぱいモンスターを殴り飛ばした時、一体二体巻き込んでぶっ飛ばせるけどさ、でも吹っ飛ばせるだけで倒せていないんだよな。最初に殴った奴以外は。打ちどころ悪いと倒せてるけど。

 宙を舞うモンスターを見ながら、そんなことを考えていた。


 ボス討伐に参加しているのは、レベル80超えの冒険者ばかり。

 冒険者っていうのは、必然的に攻撃スキルを持っている人しかいない。

 あ、防御系や回復系だけって人もいるけどね。


「さ、悟くん。わ、私、どうしたらいいかしら? 私、攻撃スキルなんて持ってないし」

「サクラちゃんは……そうだ。富田さんだ。彼は戦闘系スキルをひとつも持っていないから、彼に近づくモンスターをチャームで動きを止めるんだ。そうすれば近くの人が倒してくれる」

「つまり富田さんを守っていればいいのね」

「あぁ。他の人が倒してくれるまでの時間稼ぎをするんだ。乱戦になるから、あの杖は使えないしね」


 トレントの杖は効果大だけど、周りに人がいる時には使えない。

 

 サクラちゃんはトテトテと富田さんの方へと歩いていき、彼と話をした後、彼の肩に上った。

 俺は……。


「おい悟。ぼうっとするな。打撃スキル持ちはメイン火力なんだからな。サソリに接敵したら、隙を見て攻撃しろ」

「わ、わかってますよ後藤さん」

「拳の硬質化、忘れるな。硬いだろうからなぁ」

「どのくらい硬いんですかね。岩ぐらい砕きやすいといいんですけど」

「……岩ってのはな悟。普通は物凄く硬くて、早々砕けるものじゃないんだぞ」


 ……そうだった……かな?

 いや、そうだ。

 インパクトのおかげで砕けるようになって、感覚がバグってるな。

 でも凄く硬いと言っている後藤さんは、強化ガラスをパンチで砕いてるし。

 

 そういえば父さんが言ってたな。 

 ギルドに登録していないスキル持ちが、犯罪者になって――というか犯罪者グループにそういうスキル持ちがいるせいで、最近は強化ガラスを凌ぐ強度の窓ガラスなんかが開発されてるって。どのくらい硬いんだろう。


 っと、そんなことよりだ。

 サソリまであと五メートルほど。その間にも一般モンスターがわらわら。なんだったらサソリのにもいる。

 サソリの腹は、地面から一メートルほどの高さにある。その隙間に小型モンスターがわちゃわちゃしているんだ。

 ひとまず近接攻撃が出来る距離まで来たら、まず腹の下の掃除だ。もちろん、殴れるならサソリも殴る。


「悟っ。躱せ!」

「うぇっ」


 躱す。何をかっていうと、サソリのハサミ!

 サソリまで約五メートル。けど、奴のハサミまでは距離に考えてなかった。

 その大きなハサミは、十分俺たちへと届く距離。


 大きいくせに、動きは意外と素早い。

 慌てて身を屈めて躱すと、今度は腹の下の小型モンスターが襲って来る。


「っらぁっ!」


 後藤さんは低い姿勢から、まるでアッパーカットのようなパンチを繰り出して小型モンスターを吹っ飛ばす。

 サソリのハサミが振り回されないタイミングで、俺も周囲のモンスターに拳をぶつけた。


「ハサミだっ」


 すぐ傍で青山さんの声が。

 青山さんはファイア・ボールとシールド・バッシュ、そして右ストレートの打撃スキル持ち。

 実戦での場数を踏んでいる青山さんが、横降りされたハサミを掻い潜ると、頭上を通過するハサミを殴った。


「くぅーっ。かってぇ」

「殴り続けるしかなかろう。ハサミでもなんでも、とにかくぶん殴れ!」


 そう。殴るしかない。殴るしか。

 そうだ。


「後藤さん。サソリって腹の下側が柔らかかったりしませんか?」

「あぁ。確かに弱点ではあるがな、あそこに潜り込んで拳を振るえるか?」


 後藤さんに言われてサソリの腹の下を見る。

 あー……ちょっと、いやかなり厳しいな。

 隙間は高さ一メートルほど。ちょっとしゃがめば入れる――とはいかない。結構、しゃがむ必要がある。

 周囲に小型モンスターがいるのに、そんな体勢でまともに戦えるわけがない。

 それにだ。

 奴が大人しく、ずっと体を起こしたままにしてくれるとも限らないんだから危険だ。

 万が一、プレスでもされようものなら……。


 なら、何も考えずとにかく表面を殴り続けるだけだ。


「インパクト!」


 拳の硬質化。

 振り下ろされようとするハサミをギリギリのところで躱し、そこに拳を叩き込む。


 うぉ。確かに硬い!

 だが俺は見た。


 奴が俺のインパクトを喰らったその瞬間――わずかに体が浮かんだ。



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