表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/121

105:ハサミを持った柴犬?

「と、富田さん。富田さんですよね?」

「そうです、三石さん! 顔を合わせるのは久しぶりですね! うひっ。モンスターだらけっ」

「あははは。凄い状況だね三石くん」

「もう少し広い場所はなかったのかっ。青山、頼むっ」

「うっし。ファイア・ボール!」


 青山さんのファイア・ボールは、火球が最大で十何発か出るって言ってた。スキルレベルが上がることで数が増えるんだって。

 一瞬で弾けたその数は、たぶん十四発。それが十四体のモンスターを薙ぎ払った――のではなく、その倍以上の数を薙ぎ払った。


「じゃ、第二段行ってきます」

「よろしく頼む」


 川口さん、また戻ってった。他にもこっちに呼ぶのか。


「あ、富田さんはどうしてこっちに?」

「いても経ってもいられなくって、東北から駆け付けたんです。たまたまだったんですが、秋田と岩手の捜索隊と合同訓練してて」


 そしてそのメンバーとそのまま東京の救援に駆け付けてくれたらしい。

 なんて有難いんだ。


 その東北メンバーが川口さんの第二段で合流した。

 範囲攻撃持ちが多く、対スタンピードに特化したメンバーだ。


「実は合同訓練ってのが、スタンピード対策だったんです」

「え、そうだったんですか?」

「えぇ。先々月、俺が就職したばかりの頃に危うくスタンピードが発生しそうだったらしくって」

「春先はほら、新入社員が増えるだろ? それで採掘隊の新人が規定の資源より少し多めに採掘してて」

「気づくのが少しでも遅れていたら、スタンピードが発生していたかも……てんで、うちと冒険者ギルドで協力して、スタンピード対策の訓練をしようってなってな」


 と、東北の捜索隊の方が教えてくれた。

 たまたまとはいえ、救援の初動が早くて助かった。

 そんな会話をしている時だ。


『三石さん。鳥さんたちが戻って来ますから、放射器を止めてください』


 そんな無線が入った。


「大丈夫です。もう何十分も前に消えているので」


 するとブライトが階段下から戻って来た。


「見つけたぜ! たぶんだけどな。ひと際でっけーのが現れたんだ」

「現れた?」

「あぁ。一度休憩しようと思って戻ってきてたんだ。そしたらついさっき、急にデケーのが出て来たのさ!」


 つい、さっき……。


「いやぁ、ビックリしたね。ほんと突然だったよ。ポンってね、ポン」

「どの辺りに現れたんだい、ブライト」

「お、赤城の旦那。こっち来てたのか。ボスはすぐそこだぜ。階段降りて二百メートルぐらい先だ」

「ほんとにすぐそこだな」

「よし、ここを拠点にメンバーを集合させよう。川口さん」

「了解。じゃあオカさんの周辺を開けててくださいね」


 ついさっき……ま、まさか。


「ス、スタンピードボス戦……お、俺はみなさんを応援することしか出来ませんが、頑張ってください!」

「富田っちの応援が一番利くんだよ」

「そうそう。富田っちの幸運に期待してるぜ」


 富田さんがこっちに到着したタイミングで、ボス湧いてるよねぇ。



「それでブライト、ボスの外見だが、どうだった?」

「それがさ青山の旦那……よくわかんねぇんだ。カニ、みたいなハサミがあってな、でも体は四角じゃねえし、立ち上がってもいねぇんだ」


 な、何を言っているのかサッパリわからない。


「尻尾が長くてよ、柴犬みてぇにくるんっと上に巻いてんだ。先っぽがなんか針みたいになってたぜ」

「し、柴犬の尻尾……」


 ハサミがあって、もふもふなくるんとした尻尾を持つモンスター?

 んんんん?


「ねぇ。それってサソリじゃないかしら?」

「え、サソリ?」


 カニのようなハサミがあって、くるんとした尻尾に針。

 もふもふじゃない尻尾!?


「私がいた動物園の昆虫館にいたのよね、サソリ。もちろん動物園にいた頃に本物は見たことないんだけど、来園者の常連の子供がよく図鑑を見せてくれたの。ふふ、当時の私にはわからなかったけど、今ならその時の記憶から、あれがサソリだってことがわかるわ」

「ブライト。その尻尾っていうのは形がくるんとしているだけで、毛はなかったのか?」

「形だけだな。なんでわかったんだよ、白川の旦那」


 毛はないのかよ!!


「サソリ決定だね。後藤さん。ボスはサソリタイプです。解毒スキル持ちがいたら優先して送ってください」

『わかった。サソリか……厄介だな』

「そうですね。僕の斬撃系スキルが通るかどうか……」


 そう。サソリは皮膚が硬い。刃が通りにくいことで有名だ。

 まぁ武器の性能次第なところもあるけど。

 あと、関節部を狙えば刃が通らなくもない。とはいえ、関節をピンポイントで狙うには腕が必要だ。

 赤城さんほどのレベルなら可能だろう。


 まずは階段を拠点にして周囲のモンスターを蹴散らす。

 川口さんの絆スキルで面子が揃ったら、階下の整地・・を開始する。

 同時に飛行部隊でサソリの前に並ぶモンスターを少しずつでもいいから削ってもらう。

 隙間が少しでも出来ればサソリが前進。

 

 奴が階段の近くに来たら――。


「スタンピード、ボス攻略開始!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ