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はい、こちらダンジョン捜索隊~自分はレッサーパンダだと言い張る相棒の♀タヌキが、うっかり記録用録画を配信してしまった件。  作者: 夢・風魔
4章

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100/151

100:赤城さんの幸せ。

「秀さぁぁぁぁぁんっ」

「んあ? あにゃあああぁぁぁぁぁぁ!?」


 何を驚いているんだ、秀さんは。


 生存者、それから赤城さんたちとも合流でき、無事に後退を開始した。

 だが秀さんが絶対領域を展開したまま動いていない。いや、動けないのだ。動くとスキルの効果が消失するタイプだから。


 それで俺が全力疾走し、秀さんを抱えた後は壁走りで引き返す。


「ほっ。到着」

「ぐにゃ、にゃ、みにゃあぁ」

「秀さん、どうした? なんか猫みたいになって」

「俺ぁ猫なんだよ! な、なんて無茶苦茶な走りをしやがる人間なんだ」

「スキルだよ、スキル。秀さん、来てくれてありがとう。おかげでみんな、地上に上がれるよ」


 ここにいる人たちは救えた。

 救えなかった人も、もちろんいるだろうけど……。


 ショッピングモールでも、あちこちに遺体はあった。身元のわかる物だけ回収して、あとは布を被せて来ただけだ。

 遺体の回収をしている余裕はなかったから。


 どのくらいの人が巻き込まれて、どのくらいの人を救助出来たのか。

 もちろん、下層にまだ取り残された人がいるかもしれない。


「終わっちゃいねえぜ」

「秀さん?」

「このスタンピードを止めねぇ限り、終らねえよ」


 そうだ。スタンピードが発生している限り、これ以上の捜索活動も出来ない。

 放っておけば地上にも出てくるだろう。


 ひとまず、生存者を地上に送り届けないと。


「三石くん。川口さんが来てくれた。生存者を全員地上へ送れる」

「本当ですか、赤城さん。よかった」

「今、食品フロアに冒険者が集められている。スタンピード討伐の開始だ」

「了解です」


 スタンピード中は、ダンジョン内のモンスターが異常湧きする。

 普段はひとつの階層に決められた種類のモンスターが一定数湧いているが、スタンピード中はそのルールがなくなる。

 湧く数の上限もなくなり、ずっと湧き続けるんだ。


 スタンピード中のモンスターを一定数倒すと、軍勢の中にボスが湧く。そのボスを倒せば、異常湧きが止まる仕様だ。

 異常湧きが止まれば、あとは数を減らすだけ。通常の数まで減らせば、普段通りのダンジョンになる。

 ここは新しく生成されたダンジョンだし、もしもこれまでの常識が通用しない……となれば、スタンピードの止め方を他に模索するしかない。

 だけどまずはわかっている方法からだ。


 過去に発生した外国で起きたスタンピードで甚大な被害を出したのは、ダンジョンベビーを故意に誕生させようとしたときだ。

 その時は、最下層付近のモンスターが地下一階から湧き出した。しかも尋常じゃないスピードで。

 だけどそれ以外のスタンピードでは、中層辺りの階層あたりのモンスターが湧いている。


 このスタンピード、特に強いモンスターもいない。

 なら通常のスタンピードと同じ――そう思いたいな。


『捜索隊のみなさん、聞こえますか? これより冒険者との共同殲滅戦を行います』

『ショッピングモール地下一階の食品フロアを待機場とし、地下二階を主戦場とします』

『モールの社長には許可を頂きました。店内にあるものは全て消費してもいいそうです』

「ほんと!? あのね、あのね、美味しそうな芋菓子があったのぉ」


 とサクラちゃんが嬉しそうに言う。

 芋菓子……動物が食べて大丈夫なのか?


 司令部からの説明はこうだ。

 この階層の、さっきの十字路を防衛ラインにし、三方から来るモンスターを撃破し続ける。

 体力や魔力を消耗した人は食品フロアまで下がって休息をとり、回復したらまた下の階へ。

 食料はある。上の階にキャンプ用品店の店舗が入っているからと、それも持って下りて既に休憩スペースは準備出来ていると言う。


『スタンピードの討伐作戦は、短くとも三日は続きます。長期戦ですので、無理のない範囲で休憩を挟んでください』

『関東だけでなく、近畿関西東北からも冒険者が到着しています。交代要員は十分ですので、本当に無理はしないでくださいね』


 よかった。時間の経過とともに支援の輪も広がっている。


「となると、十字路までまた引き返さないとな」

「ならいい方法があるぜ」


 そういって俺に抱っこされたままの秀さんが、お腹を揺らした。






「ほぉりゃ! 絶対領域!」

「よし、一掃しろっ」


 スタンピードの最前列で、秀さんが絶対領域を展開。

 冒険者が素早く領域内のモンスターを殲滅。そして領域外のモンスターを、防御系スキルを持つ人たちで押さえる。そしたら秀さんがまた、彼らの足元で絶対領域を展開。

 これを繰り返して、確実に二百五十センチずつ進む作戦だ。


 一気に攻撃魔法で殲滅する手もある。

 だが数メートル先のモンスターまで一瞬で消し去っても、すぐに後ろから押し寄せてくるからほとんど前進出来ないだろう。

 秀さんの絶対領域なら安全だし、十字路まではこれで進む。十字路で三方向に分かれ各個撃破……というやり方だ。


「出来ればもう一つ先の十字路まで進みたいな」

「おう、いいぜ赤城の旦那」

「じゃあボクが秀さんを抱っこして行こう」

「いや、抱っこはしなくていいんだが」

「いやいや。秀さんもお疲れだろう。僕が抱っこするよ」


 赤城さん、嬉しそうだな。

 しかし赤城さんのこの行動で、秀さんのスキルは更に真価を発揮することになる。


「つまり絶対領域を展開するためには、両手を突かなきゃいけない――という条件さえクリアしていれば、何も地面じゃなくてもよかったと」

「……だからってなんで、野郎の胸に手をつけなきゃならねえんだ」


 秀さん吸いをしようとした赤城さんを押しのけるため、両手をついたとき……絶対領域が展開した。

 そのまま赤城さんが動いても、絶対領域は展開したまま。

 秀さんが動かなければそれでいい――てことらしい。


 こうして赤城さんは秀さんを抱っこしたまま、領域展開ごと移動して布陣を広げることになった。


 順調に前進を開始したとき――。

 後ろから後藤さんの声が聞こえた。



************************

祝100話目!

フォローと★まだな方、ぜひ記念すべき100話目にお願いします!

ハートも嬉しいです!!


今日明日でどのくらい書き溜め増やせるかわかりませんが

12、13、14,15は更新予定です。

16日は・・・わかりません><

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。累計100話到達おめでとうございます! やっぱりスタンピード絶賛発生中なんですなぁ…。無論阻止しなきゃいけないんですが、悟くん達が無理しないかマジ心配ですな。 それでは今日はこの…
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