優雅じゃない毎日
11月。文化祭の季節。
エリーが持って来てくれた高級な紅茶を飲み、お菓子を食べながら、あたしたちは元気のない会話を続けていた。
あたしは
「ネコネコ動画、いつまでメンテナンスしてるの? もう2か月くらいやってるじゃない」
と言い、シュウちゃんは
「サイバー攻撃だって噂もあるわね。ネコネコ動画以外の会社もメンテナンス期間が長いから、怪しいって話が出ているの」
と、深刻そうに言った。
シュウちゃんは勉強が出来るだけじゃなくて、社会情勢にもくわしい。
「皆様、そういう時にこそ、おいしい物を食べて心を晴れやかにいたしましょう」
そう言ったエリーは変わらず明るくて、暗くなりがちなお嬢様サイエンスクラブのムードメーカーになってくれている。
「紅茶もお菓子もおいしい、じゃが麗様のカレンダーイベントには外れてしまったのじゃ」
美紅は落ち込みを隠しきれないらしい。お嬢様サイエンスクラブのメンバー全員分を応募したのに、外れてしまったのだ。
あたしが
「麗様、最近は映画でもドラマでも大人気だもの、しかたないよ」
と言うと、美紅は悲しそうな、うれしそうな複雑な顔をしながら言った。
「乙女、前の写真集の時は全員、当たったじゃろ」
「うん。ラッキーだったね」
「あの時は2次募集があったんじゃ」
「え?」
「つまり、応募すれば全員に当たったんじゃよ」
「そうだったんだ……」
「もともと麗様は舞台を中心に活躍しておられた。だから目立たなかっただけじゃ。こんなに有名になれば、誰もが麗様の魅力に気づいてしまうのじゃ……ワシらは淋しいけれど、喜ばねばならんのじゃ」
そう言いながら美紅は、少し笑っていた。うれしそうに。
あたしは心配なことがあって言った。
「文化祭どうする? 何も用意してないよね?」
「わたくしは、これを書いてきましたの」
……「アメリカの児童文学におけるマントと、日本のゲームにおけるマントの違いについて」……? しっかり書かれた、論文のような文章に、あたしは驚いてしまった。
「エリー……すごいね」
「よし、文化祭の出し物は、これで決まりじゃな」
あたしと美紅はネコネコ動画の長期メンテナンスで、すっかり、やる気をなくしていた。でもエリーの書いた論文? は素晴らしくて、シュウちゃんも感心しながら読んでいた。
だんだんとニュースに「サイバー攻撃」の文字が増えていった。国内は攻撃されてないけど、海外は大変らしい。
シュウちゃんが言うには、国内も危ないそうだ。
そしてシュウちゃんは「金融機関が狙われた時のために、紙の通帳を作ったほうがいい」というアドバイスをくれた。
あたしたちは無料で作れる通帳をいくつか作った。あたしの貯金は少ないけど、紙の通帳を作ったら気分が上がった。それに通帳のデザインがかわいいのだ。ネコネコ動画のネコネコちゃん。トラえもん。ネズミランド。
美紅はウーチューブに動画をバックアップ、じゃなくて、新しく投稿をしていた。でも気分が乗らないらしい。だって収益がもらえないのだから。
12月。「ネコネコ動画がサイバー攻撃にあっている」という発表があった。
復旧は未定。
美紅は
「高校生から、おこづかいを取り上げるなんて!」
と怒っていた。




