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44 リザルト

 態勢を立て直したキングは、回転攻撃の予備動作を取る。

 今の俺の立ち位置なら回転攻撃は届かない。

 他の近接武器持ちのプレイヤーも予備動作が始まった時点で素早く距離を取り、回転攻撃の範囲外に逃れていた。

 回転攻撃を空かされたキングが、忌々しげな視線をこちらに向けてくる。

 そして逆襲とばかりに両腕を動かし、こちらに突進してきた。

 ────きた!

 火球なら回避して次のチャンスを待つつもりだったが、もうその必要はない。

 周囲のプレイヤーはキングから離れている。ユウも俺の意図を察し、脇にどいていた。キングの進行方向に俺1人だけが残っていた。

 既にゲージは9割ほど貯まっている。

 キングの突進は攻撃力も吹き飛ばし性能も他の攻撃よりずっと高い。回転攻撃と同様、並のスキルでは相殺することもできないだろう。

 だから、俺も並ではないスキルを使う。

 凄まじいスピードで、キングはこちらに近づいてくる。だが突進が俺の体を捕らえるより僅かに早く、ゲージが赤色に染まりきった。

 その瞬間、俺の両手剣が雷光のごとき輝きを纏う。

 このスキルは両手剣の熟練度を上げた重戦士のみが習得できるスキルで、構えから発動まで30秒間のタメが必要になる。

 攻撃範囲は両手剣の刀身以上には伸びない。さらにタメの間は完全に無防備となる上、1歩でも動けばタメはキャンセルされてしまうという仕様上、プレイヤーからは実用性0のロマン技として扱われている。

 だが、厳しい条件をクリアして放たれるその一撃は────当てることさえできれば、現new world最大の攻撃力を発揮する。

 そのスキルの名は────────<天地断界斬>


「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 眼前に迫っているキングの頭部に向けて、俺は渾身の力を込めて両手剣を振り下ろした。

 衝突と同時に、閃光が弾ける。


「ギ......アアアアアアッ......!」


 凄まじい光と轟音の後、キングは苦悶の叫び声を上げながら上体を起こし────そのまま操り糸が切れた人形のように力を失って、地面に崩れ落ちた。

 キングのHPバーを確認すると、その全てが黒く染まっていた。




「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 ボス部屋を歓声が満たした。


「やった! やった! 生き残った!」

「生きてるっ......! 俺は生きてるぞぉおおおおおおおおおお!」


 両腕を上げ涙を流す者、仲間と抱き合う者、地面を転げ回りながら絶叫する者。

 皆が皆、思い思いの方法で生き残った喜びを噛みしめていた。


「よぉしぃっ!」


 俺もまた思わずガッツポーズを取っていた。

 キングに止めを刺した。フィニッシュボーナスは俺のものだ。

 今回のボス戦の貢献度ランキング1位は、間違いなく俺だ。

 ギリギリだった。本当にもう何度も駄目かと思ったが、この戦いで得た収穫は大きい。

 戦いの最中に掴んだあの感覚。

 今の俺なら他のボス相手でも同じことができるはずだ。

 このボス戦の前と後で、自分がプレイヤーとして別次元の領域に立っていることがわかる。

 ────ゲームクリア......やれる気がしてきたぜ。

 確かな手応えと充実した達成感とともに、俺は目の前で横たわるキングの死体に目を向けた。

 そしてふと、違和感を覚える。

 ────なんだ?

 何が原因なのかは分からない。だが、何か重大なことを見落としているような気がする。

 皆は気づいていない。

 ────なんだ? 何がおかしい?

 思考と同時に、視線を巡らせる。

 キングのHPバーは、確かに1ドットすら残さず空になっていた。

 これが死んだふりで、ここから突然動き出すということは流石にないはず────と、そこで俺の視線が右に固定される。

 ────待て。もうキングのHPが0になってから何秒も経っている。

 なのに何故、まだ経験値獲得のメッセージが出てこな────


「カズキッ!」


 間近でユウの叫ぶ声がした。それと同時に強く胸を押されて俺は後ろに突き飛ばされる。

 正面に視線を向けると、そこにユウがいた。

 そして、ユウの背後でキングの死体が急激に膨張し、爆発を巻き起こした。

 俺を突き飛ばしたユウの右手に向けて、俺は反射的に手を伸ばした。

 しかしほんの僅か、数センチ届かない。

 1秒にも満たない刹那の時間────俺と視線を合わせたユウは、こちらに向けて困ったような笑みを浮かべた。

 そして、爆炎は瞬く間に広がっていき、ユウを飲み込んだ。




「ぐあっ!?」


 生じた爆風によって、俺の体は地面に投げ出された。

 膝をつき、即座に顔を上げて前方を見る。

 爆炎はそれ以上燃え広がることなく、一瞬にして消え去った。そして、視界が晴れたそこに、ユウの姿はなかった。

 視界の右上に、新たなメッセージが表示されていた。


『ユウが死亡しました』

『ユウが死亡したため、パーティから離脱します』

『カオスキングブラストリザードを倒しました』

『経験値84321を獲得しました』

『ボス戦 カオスキングブラストリザード&クイーンブラストリザードをクリアしました』

『貢献度ランキング1位となりました。ボーナス経験値259265を獲得しました』


 他にもレベルが上がっただのドロップアイテムを獲得しただの、立て続けにメッセージが出現したが、俺は途中で読むのを止め、左上に視線を移した。

 幸いミキヤとサキのHPバーはあった。だが、1割ほど減少した俺のHPバーのすぐ下にあるはずのユウのHPバーが消失していた。

 信じたくない。こんなことがあっていいはずがない。

 だが、システムによって表示されたメッセージは、機械的にただありのままの事実を告げていた。


「ああ......」


 俺の口から、声にならない叫びが漏れる。

 どうして? なぜこんな?

 いくら考えても思考がまとまらない。


「あああ......ああああああああああああああああああああああああ!」


 取り返しのつかない後悔と絶望が、俺の世界を満たしていた。

ボス戦 カオスキングブラストリザード&クイーンブラストリザード

貢献度ランキング

1位 カズキ

2位 エド

3位 ミキヤ

4位 シンク(A隊の聖騎士)

5位 サキ

6位以下省略。

※ボス戦で死亡したプレイヤーは貢献度ランキングから除外されます。

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