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34 戦闘開始

「ここのボスの名前は、クイーンブラストリザードやったな。しっかし、ファンタジーの生物にあれこれいうもんじゃないかもしれんが、なんであいつらってトカゲのくせに火ぃ吹けるんや?」

「それはね!」


 ミキヤの疑問に、待ってましたとばかりに、ユウが爛々と瞳を輝かせて語り出す。


「ブラストリザードは体内に鉱物を消化・分解するバクテリアを飼っていて、鉱物を主食にしているんだけど、その中でも高いエネルギーを持つ爆発性の鉱物を好んで捕食するんだ。しかし、捕食を続けていく内に、体内には余剰なエネルギーが蓄積され、放っておくと必要以上に体温が上昇し、いずれは体内で爆発してしまう。そこで、口から余剰エネルギーを熱として放出するんだけど、それを外敵への攻撃手段に転じさせたのが、あの火球攻撃の正体なんだ!」

「ほんと、そういうの詳しいな」


 急にテンションを上げ、饒舌になった相棒に対して関心半分呆れ半分の気持ちで呟く。

 周りを見ると他の皆もユウの変わりように驚いていた。

 恥ずかしいので、設定オタクの部分を解放させるのは、時と場所を選んでほしいところだ。


「ちなみにこのカルルガ遺跡は、1000年前魔法文明で栄えたロカ帝国の地下神殿で、そこに住み着いたブラストリザード達が、地中や岩盤を掘り進めていた結果、今の迷宮のような複雑な内部構造に変わっていったんだ。ロカ帝国は侵略国家で、周囲の国々に戦争をしかけることで領土を拡大していったんだけど、当時魔王が治めていたアムール大陸北部の魔族領にまで侵攻したことで、魔王の怒りを買い、逆に滅ぼされてしまったんだ。あ、ところでこの遺跡の壁やら天井に埋まっている光る鉱石こそが、ブラストリザード達が餌にしている紅蓮石で、ロカ帝国は紅蓮石の持つエネルギーにも着目し────」

「わかった! わかった! もうウンチクはええって!」


 ユウの口から絶え間なく溢れてくる情報の奔流に、たまらずミキヤが歯止めをかける。


「でも実際今は、NPCやショップで売られているモンスター図鑑から得られる情報も大事だよね。半周年記念アプデ前なら、未踏破エリアの攻略も何度も死にながら少しずつ進めていけば良かったけど、今はそういうわけにもいかないし」

「確かにそうだな」


 サキの言葉に、俺は頷く。

 ゲーム攻略において最も重要なのは情報だ。

 このエリアではどんなモンスターが出現するのか。そのモンスターはどんな攻撃手段を持っているのか。弱点部位は。弱点属性は。

 そういった先のエリアに関する情報は街にいるNPCに話しかけたり、ショップで売られている書物を購入して読むことで、少なからず手に入る。

 とはいえ、new worldが普通のゲームだったころは、実際に先のエリアに行って、自分達で色々試し、体験すれば良かったし、そっちの方が早かった。

 しかし、今では未踏破エリアに行く際の事前の情報収集は欠かせなくなっている。そう考えると、ユウの設定オタクなところも案外馬鹿にしたもんじゃないのかもしれない。


「......それより、カズキとユウにはもう聞いたんやが、こん中で半周年記念アプデ以降のボス攻略を経験しとる奴はおるか?」

「わたしはない」

「俺とリッキーは1回だけど、あるぜ!」


 ミキヤの質問に、そう答えたのはカイト。


「ぶっちゃけ、今のボス攻略ってどんな感じなんや?」

「うーん。俺達は今回と同じで雑魚処理担当だったし、苦戦することもなくヤマトさん達があっさり倒しちまったからよくわかんねぇな。流石に半周年記念アプデ前よりは、緊迫した雰囲気だったけどさ」

「なんや、当てにならへんなぁ」

「大丈夫だって! やばくなったら帰還の水晶使えばいいし。なによりヤマトさん達は滅茶苦茶強いからさ。最悪あの人達に任せておけば勝手に倒してくれるって!」


 笑いながらカイトが言う。

 仮にも自分の命が懸かっているのに、流石にそれは楽観が過ぎるんじゃないかとも思ったが、ヤマトの実力もよく知らない上に、半周年記念アプデ以降のボス攻略の経験もない俺が口を出すべきことじゃないので、とりあえず黙っておくことにする。

 そのまま何度かの戦闘をはさみつつ、進んでいき5分後、巨大な黒色の二枚扉が見えてきた。

 誰に言われるでもなく、プレイヤー集団は扉の前で脚を止める。

 内部は全て砂埃によってコーティングされている遺跡だが、この扉には不自然なほど砂粒1つついていなかった。ボス部屋の入り口は、一目でそれと分かるようにどのダンジョンでもデザインは共通のものとなっているので、見間違えようがない。

 この先にボスがいる。

 談笑しながら進んでいた道中が嘘のように、場は静まっていた。ボス部屋を前にして、周囲の緊張が高まっていくのを感じる。


「これからボスに挑む! そこまで時間をかける気は無いが、クールウォーターのバフが切れそうな者は今の内に飲んでおいてくれ!」


 先頭のヤマトの言葉に従い、ほとんどのプレイヤーがメニューウィンドウを操作して、クールウォーターを実体化させる。

 当たり前だが、ボスとの戦闘は通常モンスターとの戦闘よりも時間がかかる。とはいえ、ボスも特別HPが多いものやHPが少ない代わりに攻撃力が高いものなど様々で、早ければ10分前後で倒せることもあるが、長ければ1時間近くかかることもある。

 俺はカルルガ遺跡に突入する直前に、クールウォーターを飲み直しておいたので、まだバフ効果は30分以上持つが、それでも念のためもう1度飲んでおくことにした。ちなみに地下ということもあってか、カルルガ遺跡の中は外に比べて気温が低く、体感温度低下Lv1で十分快適に過ごせる。

 全員の準備が完了するを見届けてから、ヤマトは再び声を上げた。


「ここまではみんなの協力もあって問題なくこれた! だが、本番はこれからだ! 俺の気持ちは出発前に伝えたことが全てだ。だから、しつこく繰り返したりはしない! 勝って、全員で生きて帰るぞ!」


 ヤマトが右手に持った片手槍を掲げると、それに呼応して周囲から鬨の声が上がる。

 ヤマトはこちらに背を向け、目の前の扉に両手を押し当てた。ゆっくりと動き出した二枚扉は、ヤマトが手を離してからもひとりでに開いていき、やがて全開となる。


「行くぞ!」

 

 ヤマトの声とともに、プレイヤーが一斉にボス部屋へと突入する。

 ボス部屋はドーム状で、壁と天井は代赭色の岩盤が露出し、地面には厚めに砂埃が積もっていた。


「広い......」


 後ろでサキの呟く声が聞こえた。

 恐らく端から端まで、100メートルはあるだろう。ボス部屋の広さは、ボスによって異なるが、これほど広いものは初めて見た。


「カズキ......」

「ああ」


 前を向いたまま、ユウの声に頷く。

 ボス部屋の奥に、体を丸めて眠っている巨大なトカゲがいた。しかし巨大トカゲは侵入者の存在をすぐに感知したようで、目を開けるとギロリとこちらを睨み、体を起こす。

 見た目は当然だが、通常のブラストリザードに酷似していた。しかし、その体の大きさは7倍近くもあり、心なしか腹部も膨らんでいる。

 巨大トカゲはボス攻略集団を正面に捕らえた。そして、その頭上に4本のHPバーと名称が出現する。

 <クイーンブラストリザード> Lv35。

 クイーンは首を大きくもたげるとキァアアアアアと甲高い叫び声を上げた。すると、周囲の地面から勢いよくブラストリザードが飛び出してくる。左右にそれぞれ3体ずつの計6体。事前に聞いた情報通りだ。

 クイーンは取り巻きのブラストリザードとともにこちらに向かってくる。


「戦闘開始!」


 ヤマトの号令とともに、ボス攻略集団もタンク部隊のA隊、B隊を先頭にクイーン達を迎え撃つ。俺達F隊も互いにアイコンタクトをしてから、右半身側のブラストリザードに向かって走った。

 こうして半周年記念アプデ以降、初めての俺達のボス戦がスタートした。

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