31 部隊分け
「それじゃあ、これから事前に答えて貰った情報を元に、俺達が決めた役割別の部隊分けを発表するから名前を呼ばれた人は前に出てきて欲しい! もちろん、部隊の分け方に意見や希望があったらどんどん言ってくれ! それじゃあまずはタンク担当のA隊だが、これは俺達────」
そうして、ヤマトから部隊分けが発表される。
交互にボスのタゲを受け持つタンク担当のA隊とB隊。ボスへのメイン火力を担当するC隊、D隊、クイーンが呼び出すブラストリザードの処理を担当するE隊。
そして、俺、ユウ、ミキヤが割り振られたのは最後に発表されたF隊だった。
F隊のメンバーは6人。他の部隊は全て5人体制なので、F隊だけ1人多いことになる。
「君達F隊は半周年記念アプデ以降のボス戦の参加回数が0、もしくは1回のプレイヤーを集めさせて貰った。F隊はE隊と同様に、クイーンが呼び出したブラストリザードの処理を行って貰う。さっきも言ったが、ブラストリザードはクイーンの左右に3体ずつ出現する。E隊がクイーンの左半身側を担当するから、君達は右半身側を担当してくれ。ブラストリザードを倒した後、次の増援まで時間があればE隊にはアタッカーとして参戦して貰うが、君たちF隊はすぐにはクイーンとの戦闘に参加せず、周りがどう動くかを見て欲しい。なんとなく分かっているとは思うが、命が懸かっている現在のボス戦の緊張感は、半周年記念アプデ以前とは比べものにならない。まずはその雰囲気に慣れることを優先してくれ。それじゃあ出発までに15分ほど時間を設けるから、今の内に話し合って、隊単位でのフォーメーション等を決めておいてくれ」
そう言ってヤマトは、自分が所属するA隊の方へと向かっていった。このボス戦を主催したヤマトを含む5人のプレイヤーは、全員がA隊となっている。
「要するに、足手まといやから大人しくしとけっちゅーことか。今回は貢献度ボーナス諦めた方がええかもな」
「まあ、でも実際俺達は初めてなんだし、まず雰囲気に慣れろってのは正しいと思うよ。場の雰囲気に呑まれたままボスとの戦闘に参加して、戦線を崩壊させたら目も当てられないし」
「しゃあないな。じゃ......とりあえず後ろに下がってから全員で円作って、自己紹介といこーか」
ミキヤの仕切りに従い、俺達は再度後方まで下がってから円陣を組む。
俺、ユウ、ミキヤ以外の3人のメンバーは全員が俺と同じくらいの年齢であった。内訳は男が2人で、女が1人だ。
「まずは言い出しっぺの俺からやな。その後は時計回りに名前とメイン職業を言ってくれ」
そうして、俺達は順番に自己紹介を始める。
「俺はミキヤ。メイン職業は軽戦士や」
「カズキだ。メイン職業は重戦士」
「俺はユウ。メイン職業はソーサラーだよ」
俺達3人の後に続いたのは、白い法衣を身に纏った女性プレイヤーだった。法衣にはところどころに赤いラインが入っており、錫杖形の両手杖を腕に抱えている。
「私はサキ。メイン職業はプリースト」
その隣に立っているのは、群青色の重金属鎧を装備した男性プレイヤーだ。背丈は少し低めで、背中には防具と同じ色の片手剣と大盾を背負っている。
「俺はカイト! メイン職業は重戦士だ!」
最後に名乗ったのはカイトとは対照的に、軽装でひょろりとした印象の男だった。袖のない黒色の薄い革鎧を身につけており、右手首には小盾がくくり付けられている。そして、腰の左側には短剣を差していた。
「俺はリッキー。メイン職業は......まぁ見ての通り暗殺者だ」
全員の自己紹介が終わったところで、ミキヤが再度口を開く。
「そんじゃ、次はこの6人でどう戦うか決めていこか」
「どう戦うも何もこの面子だと、俺とカズキがタゲ取って、リッキーが前衛アタッカー。ユウ、ミキヤが後衛アタッカーでサキがヒーラーやるしかないんじゃないか?」
「その上で、さらに細かいところを詰めてくんだよ」
カイトの疑問に、リッキーが答える。
「俺達の役目は取り巻きのブラストリザードを倒すことだ。開幕、俺とカイトで隙を作るから、ユウが氷属性範囲魔法で全体に削りを入れて、その後は防御力で劣る俺がタゲを取っている敵を優先的に狙って欲しい。当然フリーになったら、俺もすぐにカイトに加勢する。ただ道中では4体以上のモンスターと同時に戦うことになるかもしれねぇ。もし、カイトが俺より2体以上多くタゲを取っている場合には、その差が1体以下になるよう、先にそっちを処理してくれ」
俺の提案に皆が頷く。
防具は同じ重金属鎧でも大盾を装備しているカイトの方が、俺よりずっと防御力が高い。それに攻撃力は両手武器持ちの俺の方が高いため、俺が先にフリーになった方がその後のダメージ効率も良くなる。そういったことを踏まえた上で、考えた作戦だ。
「それと、ミキヤはモンスターを発見したら近づいてくる前に極み撃ちで、削りを入れておいてくれると助かる。恐らく俺とカイトの間を抜く必要があるだろうが、お前の腕ならできるだろ」
「あいよ」
「え、システムのアシスト無しで当てられるの?」
驚いた様子で聞いてきたのはサキだった。
「一応さっき120m先のハーピー打ち落としてたぞ」
「マジかよ! すげぇ変態じゃん!」
「変態だよね」
「いるところにはいるもんだな......変態って奴は」
「お前らの頭蓋骨から先にぶち抜いたろか?」
眉間をピクピクと震わせながら、ミキヤが背中の弓に手をかける。
「おいおい俺たちゃ、褒めているんだぜ?」
「分かるけど、外野に聞かれたら確実に語弊が生じるやろうが!」
肩をすくめておどけたポーズを取るリッキーにミキヤが叫ぶ。
続いて和やかな笑い声がパーティ内に広がった。
悪くない雰囲気だ。野良でパーティを組むのは本当に久しぶりだったので、メンバーと上手く打ち解けられるか心配だったがこれなら大丈夫そうだ。
「......それじゃ、パーティ申請出しとくから皆入ってくれ」
嘆息しながらミキヤはメニューウィンドウを操作し、既に組んでいる俺とユウ以外のメンバーにパーティー参加申請を送る。ほどなくして、左上の自身のHPバーの下に新たに3つの名前とHPバーが追加された。
その後もフォーメーションなどを話し合っている内に15分が経過し、とうとうダンジョン突入の時が来る。
「これからB5にあるボス部屋に向かう! カルルガ遺跡の中は、下に行くほど複雑に入り組んだ構造になっていて、あちこちに空いている横穴からモンスターが襲いかかってくる! 基本的に対処は、モンスターから1番近い部隊が行ってくれ! それと道中の戦闘で、同じ部隊のメンバーとの連携の感覚を掴んでおいてほしい! それじゃあ、出発するぞ!」
ヤマトの声に呼応して、巨大な歓声が再び湧き起こる。
そうして、総勢31人からなるボス攻略集団は、ダンジョンへの進軍を開始した。




