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28 狙撃手

「まとめて吹き飛ばすよ!」


 ユウが範囲攻撃魔法スキルの詠唱を開始する。

 しかし、そうするのを待っていたかのように、ハーピーの内の1匹が飛びかかってきた。


「うわっとっと!」


 ユウは詠唱を中断し、後ろに飛んで攻撃をかわす。


「やっぱり、まともに詠唱できるほどの隙は与えてくれねーか」


 俺が盾となり、ユウが詠唱する時間を稼ぐというのがいつもの俺達の戦い方なのだが、ハーピーは後衛を優先的に狙うよう行動パターンを設定されている。

 1体や2体程度なら、無理矢理攻撃の間に割り込むこともできなくはないが、流石にこの数相手では、詠唱が完了するまでユウを守り切ることはできない。

 俺は群れの1体に狙いを定めて、真空裂斬を放つ。光の刃がハーピィの体を捕らえ、一撃でそのHPをゼロにした。

 ハーピーは攻撃してくる時以外、常に上空にいるため、唯一の遠距離攻撃スキルである真空裂斬以外、俺のスキルはほとんど役に立たない状態だ。その真空裂斬も1度使用すると、15秒のリキャストタイムが経過するまで再使用ができないことから、この状況を打破するには少々手数が足りない。


「ア~アァ~」


 上空のハーピーが旋回しながら、歌────というより曲に近い音を出す。

 あの音を聞くとプレイヤーは<睡眠>の状態異常にかかってしまうが、俺もユウもハーピーと接敵した瞬間に<不眠薬>という3分間、睡眠を無効化するポーションを飲んでいるので、問題は無い。


「ユウ! 当初の予定通り、1体1体低威力の魔法スキルで打ち落としていこう! 俺も真空裂斬のリキャストタイムが終わったら都度使っていく!」


 new worldでは攻撃力の低い魔法スキルほど、詠唱時間とリキャストタイムが短く設定されている。加えてユウの防具には『詠唱時間短縮Lv2』の特殊効果が付いているため、サンダースピア等、低レベルで習得できる魔法スキルなら詠唱時間0で発動することが可能だ。

 先ほどのように、ハーピーの弱点の火属性か雷属性をつけば、攻撃力の低いスキルでも撃ち落とすことは可能なので、地面に落ちたところを攻撃すれば倒すことはできる。


「負ける気はしないけど、流石にうっとうしいね!」


 次々に襲いかかってくるハーピーの攻撃をかわしながら、ユウが言う。


「全くだ!」


 敵の多さに対して、こちらは攻撃手段が限られている。

 それにユウは絶えずハーピーに狙われているため、攻撃に移るタイミングも慎重に見極めなければならない。

 はっきり言って俺達とは相性が悪い相手だ。

 そのためこの3日間の狩りでも、ハーピーとの戦闘は極力避けていた。

 とはいえ幸いハーピーは防御力はそれほど高くは無いし、動きも読みやすい。時間はかかるが、油断さえしなければまず俺達が負けることはないだろう。

 それでも、面倒な展開であることに変わりはない。

 俺は、上空のハーピーを睨み付ける。

 しかし、その時、背後からV字に並んだ5本の矢が飛んできた。

 3体のハーピーが体を撃ち抜かれ、力なく地面に墜落する。


「なに!?」


 今のは<鶴翼撃ち>と言う弓用の範囲攻撃スキルだ。

 振り向くと、20m以上後方の岩の上に、弓を構えた1人のプレイヤーの姿があった。


「誰!?」

「それよりも今はハーピーの始末だ!」


 他の範囲攻撃スキルによるものだろう。何本もの矢が後ろから同時に飛来し、次々にハーピーを打ち落としていく。

 俺とユウは、片っ端から落ちたハーピーに止めを刺していった。


「これで、最後か」

「結構、経験値入ったね」


 最後の1体を倒して、ほっと一息ついていると、後ろから声をかけられる。


「もしかして自分らも、カルルガ遺跡のボス攻略に参加するつもりなんか?」


 そこにいたのは、皮鎧の上に緑色のマントを羽織った青年だった。

 歳は俺より2つか3つ上だろう。爽やかなスポーツマンといった風貌で、背中にまでかかっている髪をローポニーテールにして纏めていた。現実で男がやると結構痛い髪型だが、本人の恵まれたルックスもあってなかなかにキマっている。


「ああ。そうだが......っていうことはアンタも......」

「ああ! 俺も同じや! 目的地は同じなんやし、せっかくやから一緒に行かへんか? 俺はあんまり耐久力に振ってへんし、武器が弓やから一人旅は不安でなぁ!」


 俺は男の左手に握られている弓に視線を移す。

 弓は、連射ととりまわしに優れた軽弓と一撃の威力に秀でた重弓の2種類が存在する。男が持っているのは軽弓だ。

 弓は、ロングレンジの物理攻撃スキルを豊富に扱える唯一無二の武器カテゴリーだが、遠距離武器の宿命として、寄られると弱い。さらに耐久力にも厚く振っていないとなると、確かにソロプレイは危険だろう。

 最もどんな武器、職業であろうとも、今の状況でソロプレイは避けるべきだが。


「まあ......俺はかまわねぇが」

「俺もいいよ。助けて貰ったしね」

「そっか! おおきに!」


 男はニカッと人なつっこい笑みを浮かべた。俺もユウも人付き合いは得意な方では無かったが、男には不思議と気を許してしまうような魅力があった。


「っと、自己紹介がまだやったな。俺はミキヤ。メイン職業は軽戦士。よろしく頼むで」

「俺はカズキだ。メイン職業は重戦士。さっきは助かったぜ」

「俺はユウ。メイン職業はソーサラーだよ。よろしく」


 そうしてメニューを操作し、ミキヤをパーティに加えた俺達は、再びカルルガ遺跡を目指して歩き始めた。

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