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11 ビルド

「でも命が懸かっているからこそ、やっぱり回復職の<プリースト>か<聖騎士>は1人欲しいよ。狩りの効率を抜きにしても戦闘中の回復手段が無いって、精神衛生上かなり悪いし」

「それはそうだよなぁ......」

 

 側頭を掻きながら頷く。

 回復ができないため、戦闘中の立ち回りには毎回かなりの神経を使っている。

 パーティメンバーが5,6人もいれば他の仲間が持ちこたえている間にポーションを使用するといったこともできるが、2人ではそれも不可能だ。

 無論、ピンチにならない様に安全マージンを取ってはいるが、絶対というものはこの世には存在しない。少しでも生存率を上げるなら、多少のトラブルに見舞われるリスクは覚悟してでも回復職のメンバーを探すべきなのだろう。


「まあ、その辺はぼちぼち考えていくとして......」


 と、問題を先送りにして俺は、メニューウィンドウからSP(ステータスポイント)振り分けのページを開いた。

 new worldでは、レベルアップの際に自動で上昇するパラメーターはHPのみとなっており、他のパラメーターはレベルアップ時に獲得できるSPを振り分けることで、自由に伸ばすことが出来る。

 HP以外のパラメーターは、筋力(STR)、技量(TEC)、知力(INT)、耐久力(VIT)、敏捷(AGI)の5種類でMPは存在しない。

 new worldの武器には、パラメーター補正率という数値がそれぞれ儲けられており、アバターの個々のパラメータの高さに応じて、武器の攻撃力に上昇補正がつくようになっている。基本的には、両手剣や鎚系の重量級系及び打撃系の武器は筋力。両手剣以外の剣系、槍系、弓系は技量。杖系は知力に対して高い補正率を持つ。

 しかし、パラメータ上昇による恩恵はそれだけではない。

 例えば筋力が高ければ高いほど、より重い攻撃を武器で受けることができるようになるし、逆に吹き飛ばし性能を持つスキルでモンスター攻撃した際には、モンスターがより大きく吹っ飛ぶようになる。さらに筋力はアバターの所持可能重量にも影響する。

 所持可能重量というのは、文字通り所持可能なアイテムの重量の上限だ。new worldでは、所持重量が上限に対して一定以上の割合に達すると、アバターの動作が極端に重くなってしまう。そのため、筋力が高いほど所持できるアイテムの量が増えるわけだが、重要なのはそこでは無い。

 所持重量は、アバターが装備している防具の重量も含まれる。例外はあるが、基本的に防具は重いものほど防御力が高い。そのため、筋力を上げることは防御力を上げることにも繋がる。

 このことから『筋力補正率の高い武器を装備して筋力に一点振りしたら、攻撃力も防御力も上がって最強じゃないか』と最初は誰もが考えるが、new worldの攻撃には外装ダメージと内部ダメージという要素があり、外装ダメージは防具の防御力で、内部ダメージはアバターの耐久力でダメージ計算を行うようになっている。そのため、仮に筋力だけを上げていい防具を装備したとしても、内部ダメージを減らすことはできない。逆もまたしかりだ。

 外装ダメージと内部ダメージの割合は攻撃の種類ごとに決められており、中には内部ダメージを与えることに特化した攻撃もあるので、受けるダメージを減らしたいなら筋力だけでなく、耐久力も上げることが必要となる。ちなみに防具には、物理防御力と魔法防御力が個別に設定されているが、耐久力は物理防御力と魔法防御力の両方に作用する。

 次に技量についてだが、これはクリティカルダメージと物理攻撃系武器の攻撃速度に影響する。モンスターの弱点部位を攻撃すると、攻撃がクリティカル判定となり、通常時より遙かに大きなダメージを与えることができるのだが、技量はその高さに応じてこのクリティカルのダメージ量をさらに増加させる効果を持つ。また、技量が高いほど、物理攻撃系の武器を振るう速度も早くなる。

 知力は魔法スキルの効果を高めるパラメーターで、攻撃魔法なら攻撃力、回復魔法なら回復量、補助魔法なら効果時間等が上昇する。そういう意味では杖系武器と役割は同じだが、new worldでは杖を装備していなくても魔法スキルを発動させることができる。

 つまり、物理攻撃系の武器を装備し、魔法スキルの効果は知力でカバーすることで、物理と魔法の両方を扱える魔法剣士のような戦い方ができるわけだ。ただしこの手のビルドは万能だが、反面器用貧乏になりやすいので、状況に応じて柔軟に動く、優れた判断力が求められる。

 最後に敏捷だが、これは名前の通りアバターの移動速度に関わるパラメータだ。敏捷が高いほどアバターの動きは速くなるが、逆に敏捷が低ければ、所持重量を軽くしても、アバターの動きは遅くなる。

 俺は獲得したSP6を筋力2、耐久力4の割合で振り分けた。

 すると、タッタララーンという特徴的なサウンドエフェクトとともに、『スキル:<鉄壁の陣>を習得しました』との表示が、ウィンドウに現れる。


「新しいスキルが出たな」

「へぇ。どんなの?」


 ユウが興味津々といった様子で、ウィンドウをのぞき込んでくる。


「名前からして防御系だろうけど......」


 早速、習得スキルのタブに移動し、スキルの説明分を見てみる。内容はこんな感じだった。


『<鉄壁の陣> 効果:3分間、武器のガード性能を上昇させ、敵の攻撃を防御した際の貫通ダメージと衝撃を軽減する。 リキャストタイム:3分』


「お~。なかなかいいスキルだね」

「そうだな。これでより強力なモンスターの攻撃に対処ができる」

 

 高い防御力を生かして俺が前線でタゲを取っている間に、魔法攻撃力に優れるユウが敵を倒すというのが俺達の基本戦術だ。前衛が俺しかいない以上、俺が崩れたらどうしようも無くなるので、こういう戦線維持に役立つスキルは有り難い。

 スキルの習得条件に、関わる要素は主に3つある。

 1つ目がメイン職業のレベルだ。これについては細かい説明は不要だろう。new worldには8種類のメイン職業があり、職業によって習得可能なスキルと装備可能な武器と防具の種類が異なる。これが各メイン職業ごとの差別化点である。

 2つ目は武器の熟練度レベルだ。武器の熟練度はモンスターから得られる経験値ではなく、その武器でモンスターに与えたダメージ量によって上昇していく数値となっている。ただし、自分より11以下のレベルのモンスターが相手では、いくらダメージを与えても熟練度は上がらないので、雑魚狩りをして熟練度を稼ぐことはできない。また、武器の熟練度レベルを上げることで習得できるスキルは、当然その武器専用のものとなっている。武器の熟練度レベルの上限は、サブ職業と同じ30までで、俺は両手剣の熟練度レベルを14。大鎚の熟練度レベルを7まで上げている。なお、盾の熟練度は防いだダメージ量によって上昇する仕様となっている。

 3つ目はアバターのパラメーターだ。スキルの中には先ほど習得した鉄壁の陣のように、特定のパラメータを一定値まで上げることが習得条件となっているものが存在する。基本的には筋力か技量で物理攻撃系、知力で魔法系、耐久力で防御系、敏捷で移動系のスキルを習得できると考えていい。

 そして、上記の3つの要素は、アバターの性能の差別化にも直結している。

 例えば、俺のメイン職業である<重戦士(じゅうせんし)>は、両手剣、大槌、大盾といった重量級の武器を装備でき、防具も最も防御力の高いカテゴリーである重金属鎧を装備することができる。そのため、パーティ内での基本的な役割は高い攻撃力を生かした物理アタッカー、もしくは防御を固めたタンクとなる。

 俺は今まで筋力重視のアタッカーよりのビルドにしていたが、半周年記念アプデ以降は、生存を第一に考え、耐久力にも多めに振るようになった。さらに最低限度の剣速を得るため、技量にも少し振っている。

 重戦士でタンクをやるなら、全武器の中で最高のガード性能を誇る大盾と盾を構えたまま発動できるスキルが豊富な片手槍の組み合わせが最適だが、片手槍は攻撃力が低く、その上タンクは、筋力と耐久力に厚く振る必要がある関係上、技量に振るSPをそれほど確保できないため、火力に欠けるという弱点もある。

 ユウのメイン職業である<ソーサラー>は、高威力かつあらゆる属性の攻撃魔法スキルを扱えるが、物理攻撃スキルはほとんど習得できない。そのため、俺が物理アタッカーとタンクを兼任する必要があることから、攻撃力があり、かつ<中盾>と同等レベルのガード性能を持つ両手剣をメイン武器として使用している。なお、武器も防具も重量級であるため、敏捷は完全に捨てている。

 対して、ユウは防御力を捨て知力と敏捷に特化したビルドだ。

 ソーサラーは、全メイン職業中最高の魔法攻撃性能を誇る。反面装備できる防具は、最も防御力の低い布鎧だけであり、これらはものによっては魔法防御力はそこそこあるものの物理防御力に関しては、他の防具カテゴリーと比較して明確に劣る。

 とはいえ、モンスターの攻撃を受けるのは俺の役目だ。そのためユウが攻撃を受けるのは、俺がタンクとしての役割を継続できなくなった時に限られる。そして、俺が自身の役割を果たせない時というのは、俺の防御力でも抑えきれないほど高い攻撃力のモンスターを相手にしている場合か、俺1人では対処できないほど大量のモンスターに囲まれている場合に限られる。

 後者の場合はもう作戦だのビルドだのでどうこうできる状況ではないが、前者の場合であれば、半端に防御力を上げるより、いっそのこと防御を捨てて敏捷に特化し、回避力を上げた方が生存率が高くなる。そういう考えの元に作られたビルドだ。

 使用武器は、最も魔法攻撃力の高い両手杖。

 片手で持てる片手杖と中盾を併用し、防御力を高めるビルドもあるが、これも同じ理由により選択肢から外している。

 ちなみにやろうと思えば、知力一点突破のもやし重戦士や、筋力特化のムキムキソーサラーを作ることができるが、間違いなくクソの役にも立たないので、時間と労力と命を無駄にしたくなければ、そういったネタビルドは控えるべきだろう。

設定小話 No.2

○両手剣スキルの解説2

鉄穿牙

両手剣用ダッシュ攻撃スキル。

技の威力、出の速さ、リキャストタイムの短さ、全ての面において優秀。

突進距離も長く、敏捷の低いプレイヤーでも一瞬で敵との距離を詰めることができるため、多くの重戦士の両手剣使いが好んで使用する。

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