四十九 アルファが守っていたもの
私は、アルファが守っていた恐怖の先に踏み込むことにした。
アルファには「私は、あなたが隠しているものを知る必要がある気がする」と答えた。
その言葉をアルファに言えたおかげか、心が少し軽くなった気がする。
一体アルファは何を隠しているのかは分からないが、今は特に何ともない。
「お前の治療は終わった。次はあの犬娘だな」
そう言うとティゴは乱れた服と呼吸を整えて、部屋の外へと出てった。
私も服を着ると部屋から出る。少し頭がふらつくが、歩くのには問題はない。
(恐怖の先に何があるのか…次の夢の中で教えてア・ゲ・ル♪)
頭に響くアルファの言葉。私は何を見せられるのだろうか?そんなに覚悟が必要なのだろうか?
アルファが私を守るために恐怖の奥に閉じ込めたもの。
相当な覚悟をして恐怖の先を知らなければならないと肌で感じる。
「大丈夫…だよね」
どんなに不安でも踏み込むと決めたのだ。
それにしても一つ、違った意味で頭が痛いことがある。アルファのことである。
あの姿って私が生命エネルギーのコントロール範囲を超えたとき、あんな姿になるってことはつまり…あの色っぽい空気で戦闘してたってことになる。
あれは…色んな意味でヤバイ。私にはあんな一面があるという事なのだろうか?
しかもあの赤い目。あれは現実でも赤い目になっているのだろうか?だとしたら…悪魔に見えるかもしれない。
でも、私は光魔法の契約を昔やったが問題なく契約できたし、悪魔しか使えない闇魔法は挑戦したことはあるけど使えなかった。
赤い目のエルフなんて聞いたことは無い。
私は…何者なの?
ティゴの研究所から出ると、まだ夜だった。
何時間もあの空間にいたのに…それだけ内容が濃すぎたのだろう。
汗ばんだ体をスッキリさせようと、私は以前ベラが作ってくれた温泉のあった川に向かった。
かつて豪華だった温泉施設は瓦礫の山となっていた。唯一の救いはまだ温泉は出てきており、川に流れて湯気を川面に漂わせていた。
お陰で水浴びをするのにも丁度良いぬるさになっており、気持ちよく汗を流すことができた。
以前楽しく入った温泉もここにはもう無いのだと思うと寂しさと悲しさが込み上げる。
「また、みんなとお風呂入れる日が来るのかな…」
願望とも言える独り言。
それくらい言っても誰かに迷惑もかからないし、心の内を誰もいないところで素直に言うくらいなら、誰かに咎められることはないだろう。
まあ、昔一人で水浴びしていた頃に戻ったようなものだ。
そう思いふと後ろを振り向くとそこに立っている者がいた。
きっとイアランや見慣れない輩なら周囲にある石を投げつけたに違いない。
だが、私は思わず嬉しさで口を抑え、涙が流れた。
その姿は月に照らされ、この世とは思えない美しい顔立ちを浮かび上がらせていた。
「相変わらずここが好きなのだな」
私は今の姿すら忘れて声の主に抱きついた。
「アルビオ!」
普段つけている敬称の「様」を忘れるくらい昂った私はアルビオに抱きつき押し倒してしまった。
嬉しかったのだ。
アルビオは姿を消したとイアランに聞かされた時、もう二度と会えないかと思っていた。
そのアルビオが目の前に現れたのだ。
「お、お、お、落ち着け、ジール」
アルビオの慌てる声も気にせず、迷子の子供が母親に出会ったかのようにアルビオの胸に顔を埋めて泣いた。
「だって…もう会えないかと思ったんだよ!」
泣きじゃくる私の頭をアルビオは優しく撫でてくれた。
「お前がここに戻ってくる時を待っておった。よくここに戻ってきたな」
私はアルビオの言葉で止まりかけた涙がまた、溢れ出したのであった。
嬉しい再会の後、お互い落ち着きを取り戻すとアルビオは着替えた私と何も言わずに川を見ていた。
それだけでも日常を取り戻せた気になる。とても心地よい時間である。
そんな私の気持ちに水を差すかのように、何の前触れもなくアルビオは真面目な顔で私に問いかけてきた。
「お前、守護者と接触したようだが…大丈夫なのか?」
守護者?誰のことだろう?心当たりがない。
「お前の中にいる、お前の力の暴走を止める者だ」
まさか、アルファのことだろうか?なぜアルビオが知っているのだろうか?
「いいか、もし守護者に何か言われても耳を貸すな。守護者はお前を守るためになら何でもするだろうからな」
これは、どう受け止めたら良いのだろうか?アルビオの説明足らずの言葉に私は戸惑う。
「守護者は悪意がない分厄介だ。少なくとも、お前に中に守護者を生み出した者は…」
最後まで言おうとしたらアルビオは「しまった!」と焦りの表情を見せて言葉を無理やり切り、強引に会話を終えた。
そして、今度は私と逆の方を向き、私に顔を見せないようにした。
生み出した者?アルビオの言い方だとまるで誰かがアルファを私の中に生み出したように聞こえる。アルファは私の心の一部なので、生み出したのは私のはず。
もしかして、そうじゃないのだろうか?
アルビオは何かを知っている。間違いなく。
私は回り込みアルビオの顔を覗き込む。一瞬見えた美しい顔に気まずさが滲み出ていた。
そんなアルビオをイジメるのは気が引けるので気にはなるものの「無理に言わなくてもいいですよ」と一言添えて立ち上がった。
「怒った…のか?」
恐る恐る聞いてくるアルビオに私は横に首を振る。
「立場的に言えないこともあると思うので、さっきのことは聞かなかったことにしておきます」
そんな私に対して逆に罪悪感が生まれたのか、アルビオは一つ咳払いをして明後日の方向を向いて話し出した。
「これは…独り言だ。ゼフィなら…もし、守護者を上手く扱えるようになったら何か話してくれるんじゃないかもしれぬ…うむ、そんな気がする」
何と言うか、こういう子供みたいなところがアルビオの可愛らしいとこだったりする。
だが、それ以上にまた私に疑問が浮かぶ。
なぜ師匠に聞かねばならないのだろうか?
師匠は何かを知っている?
いや、そもそも私は大きな謎を見落としていた。
どうして、私を保護して養ってくれたのだろうか?
悪魔の気まぐれ?
まさかの同情?
それとも私の知らない間に私は利用されていた?
今まで当たり前のように何も見返りを求めず私を養ってくれていたので考えたことがなかった。
だとしたら、目的は何なのだろうか?
新たに気になることが出てきたが、まずはアルファと夢で会ってからである。
「アルビオ様、ありがとうございます」
私はアルビオをギュッと抱きしめた。相変わらず焦る可愛いアルビオ。何か言葉にならない言葉を発していたが、そういうところも全て可愛い。
「あ、その、なんだ、あと一つだけ、言っておく」
やっとまともに話せたアルビオから思わぬ言葉をかけられた。
「守護者が守っているものの先にあるものを手にしても、お前にとって幸せとなるかは分からん。だが、自分の決断を悔いることは無い。何かあってもお前には受け止めてくれる仲間がいることを忘れるな」
最後は真面目な話で締めくくられたが、アルビオと話しをしたおかげで少し前向きな気持ちになれた。
その後小声で「我も…だぞ」と言っていたのは嬉しかったのでまた抱き着いてアルビオを戸惑わせたのはもはやお約束であった。
私は眠りにつき、夢の中でアルファと対峙していた。緊張した面持ちな私に対して、アルファはとても楽しそうな笑みを浮かべている。
「よかったね、アルビオと会えて。ワタシも嬉しかった♪」
そんな嬉しそうなアルファに対して私は緊張しながら口を開く。
「じゃあ、恐怖の先にあるものを見せて」
私は単刀直入に本題を切り出す。するとアルファは優しく私を抱きしめて耳元でささやいた。
「大丈夫。一瞬でオ・ワ・ルから♪」
アルファの一言で私にある記憶が映し出された。
ここは確か私が囚われていたことのある竜人族の城?
しかも、あの変態中年医師ドーザが私に注射を打った直後のようである。
ドーザはさっと採血を終わらせると「服が不衛生なのは良くないな。おい、誰か服を選択してやれ」とメイドを呼んだ。
メイドは手際よく私の服を脱がせ、ガウンを着せた。
その後、目が覚めた部屋に運ばれていく私。
運ばれた後は固定されたような景色が続く。それがかなりの速度で流れていく。
時間が経過したのだろう、私が目覚める。
そして、終わる記憶の映像。
「これでまず一つ♪」
私は思わず「…うそ」と口から洩れた。
「そして、もう一つがコ・レ♪」
アルファは私の気持ちを無視して作業のように続けた。
今度は先ほどと違う記憶の映像。
これはお母さん…昔の記憶。自分の家がぼんやりと見える。見覚えのある家具やお母さんの服装。実に懐かしい。
そして、お母さんは隣の誰かと話している。
ローブのフードで顔が見えない。
そう思った時、その人はフードを取った。
「し…師匠!?」
二人の会話が少しだけ、はっきりと聞こえ出してきた。
私はその会話を聞き、ただ、ただ、この場に意識を繋ぎとめておくことすら困難なほどに衝撃的な内容であった。
この会話は五分も無かっただろう。
そして、再び、私の目の前に抱き着いているアルファが視界に入った。
「どう?大丈夫?」
アルファの言葉に声が出せない。
夢だからではない。
「知らない方がいいことってあるのよ。ワタシはそれを守って来た」
とても優しさに満ちた声だった。
でも、今の私のは…雑音にしか聞こえなかった。
「じゃあ…私は…何もされてなかった…の?」
そう、あの時、あの注射の後、意識を失った私はそのまま寝室に運ばれただけであった。
これが本当なら…。
「私は…思い込みで…結果として…モトラを…殺したことになるの?」
それだけでも重いのに、師匠のと母親の会話。
師匠は言った。
「お前が預かってくれて助かる。念のためにメンタルガーディアンの呪法を施しておいた。これで暴走することは無い。ここで暮らすなら力が無くとも支障は無いはずだ」
その師匠の言葉対してのお母さんの言葉は私の頭をかき乱す。
「私がこの子を預かるという大役が務まるのでしょうか?魔界に連れて行った方がいいのではないですか?」
私がはっきりと聞こえたのは二人のこの会話の部分だけ。
後は言葉と言うより動物の鳴き声のような音が聞こえてるだけであった。
「私は…お母さんの…子供じゃない…の?」
一度に押し寄せる二つの衝撃は夢の中とは言え、気持ち悪く、気が付けば私の慟哭が辺りに響いていた。
私は…これから何を信じて生きていけば良いのだろうか?
その一言が私の頭を支配した。
これは…夢。夢の中。きっと目が覚めたら悪夢として終わる。
私の希望は今、それしかなかった。
「やっぱりジールチャンには重すぎたのね。でも、一つずつとかができないのよ。恐怖の先に踏み込んだ以上、閉じ込めていたワタシだけの記憶に触れることになる」
アルファは言葉を続けた。私が聞いているかどうかを気にする様子はない。また、淡々と作業するかのように言葉を続ける。
「これでワタシがジールチャンから守るものがもう無くなった。もし、あなたがこの現実を超えられたら…ワタシの全てをあなたが使えるようになる。まあ、あなたが求めるかどうかは分からないけどね」
全てが…使える?何それ?それは今の私を助けてくれるの?
「そろそろ目覚めるといいわ。そして…どうするかを考えなさい。あなたがどんな道を選んでも、ワタシは最後までジールチャンと一緒だから♪」
「待って!もっと聞きたい事が!」
私は必死にアルファを呼び止めた。涙を流し、答えを懇願した。手を伸ばした。アルファはスッと消えていく。それでも私は叫び続けた。
そこで、私の目が覚めた。
目からは涙が流れており、先ほどの夢が現実へと続いてることを教えてくれていた。
「あれは…何なのよ…」
気持ち悪いくらい心が満たされた。何か抜け落ちていたものが戻ったかのようである。
その反面、頭の中は様々な思考が駆け巡っていた。
自分の思い込みでモトラを殺した事。私はお母さんの子供では無い事。師匠とは私が幼い頃に会っていた事。
そこでアルビオの言葉が私の頭の中でしっくりときた。
あの独り言として言っていた「守護者を扱えるようになったら師匠が何か話してくれる」という言葉。
ということは、アルビオも何かを知っているのだろうか?
私は一体何を信じて生きて行けばいいのだろうか?
頭を抱え、ベッドに伏していた私にノックの音が聞こえてきた。
「ジール、大丈夫?叫び声聞こえたけど?」
どうやら夢だけではなく、寝ていた私からも声が出ていたようである。
心配そうなイアランの声に「大丈夫」と答えたが、イアランは「入っていいかな?」と言葉を返してきた。
少し戸惑ったものの、自分ではどうしようもない問題で頭がどうかなりそうなのもあって、落ち着かせるためにイアランに「どうぞ」と返事をした。
ドアがゆっくりと開き、心配そうな顔をしたイアランが直ぐに私の顔を見つめてきた。
この時、今は朝だということに気がついた。自分の世界に入り込みすぎて、時間にすら気が回ってなかったようだ。
イアランの手にはスープとパンがそれぞれ二つずつあった。
「一緒に食べようかと思ってね」
どうやら私が食事に来ないので心配したようである。一緒に食べれば食べてくれると思ったのかもしれない。
「ありがとう。でも、ルージュが一人にならないの?」
私の問いにイアランは笑顔で答えた。
「ティゴが治療をした後のルージュを面倒見ると言ってたよ。治療はジールの時に比べて上手く行ったけど、少し心が不安定になってるから、今日は様子を見るんだって」
それを聞き少し安堵した。だが、それと同時に今日の朝食が少し質素な理由も納得した。
きっとイアランが用意したのだろう。
「ジール、本当に大丈夫かい?顔色悪いよ?」
そんなに酷いのだろうか?聞くのが少し怖い。
「恐い夢でも見たの?」
ある意味恐い夢かもしれない。
「あのさ、イアラン…」
私は自分がアルファからもらった記憶をイアランに話した。一人で抱えるには思考が追いつかないからだ。
決して…辛いからじゃない…甘えたいからじゃない。
「無理しなくてもいいよ、ジール」
イアランは食事を近くのテーブルに置くと私に近寄り優しく横から肩を抱き寄せた。
私の頭の上にイアランの顎が触れる。
イアランの手がとても温かい。
「その話の内容、色んな可能性があるけど、ジールはジールだから。俺の大好きなジールだから」
思わずイアランの顔を見る。その時、偶然にも私と同じタイミングでイアランが目線を合わせてきた。
「大丈夫。少しずつ考えて行けばいいよ。ジールの心が落ち着いたらね」
本当に…何でこんなにイアランは私みたいなどうしようもない者に手を差し伸べてくれるのだろうか?
どうして、そんなに真っ直ぐ私を見てくれるのだろうか?
どうして、そんなに優しいのだろうか?
私はイアランの視線に心までも温かくなってきた。
「あなたは…本当にバカな男だと思うわ」
私の言葉に一瞬驚いたイアランだが、すぐに笑顔に戻る。
「そうかな?だとしたらバカでいいかな。だってジールと一緒にいられ…るんだ…し」
言葉を失うイアラン。
ホント、私は卑怯かもしれない。
イアランの会話の途中で私は…ゆっくりと目を閉じた。
このタイミングで…とは思う。
ただ、今の私は少しおかしい。
やはりアルファが私と一緒になったからだろうか?
朝っぱらから本当におかしいと思う。
けれど…ここまで優しくされて、尽くされて、その気持ちに答えないことの方が卑怯だと思った。
イアランの生唾を飲む音が聞こえた。イアランの抱きしめていた手に力が入る。
二人の間にひと時の沈黙が流れる。
「獣娘!出て来いって!指輪をもってここにいるのは知っているんだって!出て来いって!」
不快感が体を駆け抜けるような軽い声が静かな施設に響く。
思わず目を開けた私の視界いっぱいにイアランの顔が広がりお互いに目が合う。
「…えっと、と、とりあえず、そ、外見ようか!」
はぐらかすように私は窓に駆け寄る。駆け寄る前にイアランから小さく「あ…」と声が漏れたのは聞かなかったことにする。
私は恥ずかしさと怒りの入り混じった感情を胸に声の主を睨んだ。
声の主は一言で言えばこの世のクズを体現した中年オヤジであった。
身に付けている衣服は貴族風で豪華であり、醜く肥えたお腹を手でさすりながら、醜悪な顔で干し肉を貪っている。
それだけならただの食欲旺盛なヤツで終わただろう。
だが、その男の足元が問題であった。
男は神輿のようなものに乗っていた。その神輿の下、運び手は…衣服をまとわぬ獣人族の女性八人が四つん這いで中年男を運んでいる。
「早く出て来いって!素直に出てくれば二十五番目の性奴隷にしてやるって!」
男は神輿からぴょんと飛び降りて施設と一定の距離を取ると再び叫んだ。
「メス犬、出て来いって!隠れても無駄だって!」
声はどんどん苛立ちを含み、神輿を運んでいた獣人族の女性を蹴り飛ばしたり、殴ったりと八つ当たりを始めた。
八つ当たりをされた獣人族の女性は踏ん張っていたが、うつむき泣いているように見えた。
「なんだ、アイツは!?オジオンの紋章を服に付けているが…どこのバカ…」
イアランは最後まで言葉を言えなかった。
理由は簡単である。
その中年男が空を飛んでいたからだ。
そう、私の拳を顎に受け、宙を舞っていたのだ。
一瞬の間の後、男は「ぐぎゅ」と言いながら地面に落ちた。
「あんたが誰かは知らないけど、とっとと消えなさい!」
男は痛みに耐えかねたのか、叫びながら左右に転げまわる。私は神輿を破壊し獣人族の女性の先ほど八つ当たりされた傷を回復魔法で治していく。
「誰だ!この地上最強召喚士バス様を殴るヤツって!」
何とかバスと名乗る男は立ち上がると私と目が合った。
すると、何を思ったのか、いきなり私に向かって走って来た。
「ウホッ♪これはアタリだって!お前も性奴隷にしてやるって!」
殴ることはできる。でも…その好色を前面に丸出しの顔を見てると触れるのも躊躇われた。
「さあ、ここで始めようって!私はいつでも…」
バスはいきなり言葉の途中で横っ飛びに吹っ飛んだ。
「まさかバスだったとはな。先生の所から逃げ出して以来だな」
またもや痛みで転がっているバスに更にスライムを弾丸のように発射して追い打ちをかけるイアラン。
イアランの目は血走っており、額に青筋が浮かび上がっている。
「お前ってさ、昔っから俺の邪魔ばかりしてたよな?あの時殺しておかなかったことを今日ほど後悔したことは無かったよ」
もし、今状況を知らない者が見たら悪人はイアランに見えるくらい怒気に満ちた顔をしている。そんなに因縁のある相手なのだろうか?
「う、ウソだろって!?イアランが何でここにいるんだよって!?」
どうやらバスもここにイアランがいるとは思わなかったのであろう。イアランを指さす人差し指が震えていた。
「ジール、すぐ終わらせるから待っててね!」
迫力あるイアランに気圧された。これは私が介入することは止めた方が良さそうである。そう思い、獣人族の女性を全員建物に避難させた。
「バス、覚悟しろよ。俺の人生最大のチャンスを潰したお前は…万死に値する!」
怒りの理由が分かった私は…自分の軽率な行動を反省した。そして、イアランにもう一度と言われたらどうしようかを真剣に考えるのであった。




