表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モンスター託児所のジール  作者: ネジマキノ ショウコウ
第三章 竜人族継承問題編
41/80

四十 悪VS悪

ここが、どこなのか分かったのは、私がリグシャにぶん殴られ壁の外へ弾き出された時であった。


ここは竜人族の城なのは分かった。ただ、私が来たことのある所とは違う場所に監禁されていたようである。


建物内部を全てを見たわけではないので分からなくて当然なのだが、自分の居場所がわからないのは何とも不安であった。


それが分かるだけで安心…とはいかない。


赤竜と化したリグシャの追い打ちのファイアブレスが自由落下中の私を包み込む。


だが、私にかすり傷一つどころか、着ているガウンすら焦げ付かせることができない。白銀竜の覇気とは実に素晴らしい。


「あんたなんかにお父様の気持ちがわかるものか!」


ファイアブレスからの体当たり。更に私は加速して地面に叩きつけられた。


「そんなもの、どうでもいい。私は愚かな抗争の巻きこまれて酷い目にあった。それ以上でも、以下でもない。だから、終わりにする、全てを!」


何事も無かったかのように私は立ち上がった。ただ、少しガウンの端に土汚れが付いていたので、軽く払い落した。


「ふざけないで!あなたがさっさと私に覇気を渡せば全て丸く治ったのに!何で邪魔するの!」


まるで子供の駄々のような言い方である。だが、それが逆に私の気持ちを苛立たせた。


じゃあ何?この覇気をさっさと手放してたら、私は犯されることは無かったとでも言うの?そうかもしれないけど、そんな仮の話はなんて今されたところで時は戻らない。


事実は変わらない。


だから、壊せばいい、全て。


騒ぎに気が付いた兵士たちが私たちの周りに集まり、各々の武器を構えた。包囲したのかもしれないが、それは意味をなさないことを理解できるほどの強者はいないようだ。


「近づくな!お前らが百で束になっても敵わない相手だ!」


そんな烏合の衆を制したのは追いかけてきたモトラの言葉であった。


兵士もモトラの姿を見て、その言葉を聞き素直に従い私たちから距離を開けた。


すると、今度はモトラが私とリグシャの間に入るとリグシャを抱きしめた。


「やめてくれ、リグシャ!お前はその力を今使ってはダメだ!」


抱きしめられたリグシャから戦意が消え、目線も私からモトラへと動いた。


そして、竜の姿から人の姿へと戻ったのである。


「ごめんなさい、お父様…」


リグシャは抱きしめ返すことはしなかったが、申し訳なさそうな気持ちは声でわかるほどであった。


だが、それを見ていると私の中に沸々と怒りが込み上げてきた。


「茶番何か見せてどうしたいの?私に対しての仕打ちは完全に無視ってことなわけ!」


私を酷い目に合わせて、自分たちは親子で感動物語にして今回のことを終わらせようとしてるの?冗談じゃない!


「分かった。今日のところは解放する。それでいいか?」


はぁ?状況を理解できているのだろうか?何かをして欲しいというわけではなが、全く謝罪も無ければ、罪の意識もない。


解放して終わりなんてありえない!


やはり、コイツは生かしておいてはダメな敵だ。


「あなたは無能なの?もうそれでは済まないことが分からないの?」


気持ちに任せて白銀竜の覇気を開放する。それと同時に体を保護する生命エネルギーも開放される。今、どの程度開放しているか…まあいいか、何にも気にならないし…。


辺りにいた兵士はそれだけで倒れていった。目の前にいるモトラは私をしっかり睨みつける。


それは威嚇というより自分自身の恐怖に負けないように私の姿から目を逸らさないように必死に睨んでいるように見えた。


その証拠に、リグシャを抱いている手が少し震えているのが私にも分かるほどであった。


「リグシャ、逃げなさい」


抱きしめていたリグシャから離れ、私とリグシャの間に立つモトラ。娘をかばうように娘を自分の背に隠して立っている。


「何?私は娘の命を狙う悪者ってことかしら?」


いちいち私の気持ちを逆なでする親子である。これでは私が勝手に暴走してリグシャの命を理不尽に刈り取ろうとしているみたいである。


どっちが悪者なのよ!


私が…私が…どうしてこんな思いをしてここに立っているか、お前等親子に分かもんか!


「お父様!アイツに対抗できるのは私しかいない!お父様こそ逃げて!私が何とかするから!」


小さな体で力強くリグシャはモトラと私の前に割り込んできた。


「もういいよ。消えて、二人とも」


私は素早くリグシャに近寄り、容赦なくリグシャの顔面を左手でわしづかみにして地面に叩きつける。地面にリグシャの頭がめり込む。


その顔面を踏みつぶそうと足を振り上げると後ろから吹っ飛ばされた。


振り返るとモトラがリグシャを抱きかかえていた。頭から血を流しているリグシャに回復魔法をかけている。


この一場面だけ切り抜くと実に親の愛を感じさせる場面である。


だが、それが余計に私の心をイラつかせる。


そんなに大事な娘が私のような目にあって平気でいられるのか?私は他人だからどうでもいいのか?いい加減にしろ!


だが、そんな親子愛を見て、私の中の闇の部分が素晴らしいアイデアを授けてくれた。


「決めた…。モトラ、私はリグシャを殺すわ。それがあなたに対する最も効果的な復讐って今分かったわ」


そう、言葉は時に最強の武器になる。


モトラの血の気が引いた。顔も驚きと恐怖のまま固まっていた。次の言葉が出ないようである。


私はそれを見て…笑みがこぼれてしまった。


「お父様…大丈夫。私が本気でやればなんとかなるから…」


止血されたリグシャは頭を押さえながらゆっくり立ち上がる。そんなリグシャの後ろでうろたえているモトラがリグシャの手を握りしめて引き止めた。


「お前の本気の力に体が耐えられるわけがない!やめるんだ!死ぬぞ!」


嘆きに近い声であった。私が始めて会った時の冷静沈着で無感情のモトラの姿はそこにはなかった。


そこには弱者として、どうにもできないことに対して叫ぶしかできない無力なモトラを見て自業自得だと心の中でつぶやいた。


「でも、あの悪魔を倒さなきゃ竜人族が滅ぼされる。それくらいの殺意を放っているのよ!」


弱々しいモトラに対して覚悟を決めた目をしているリグシャ。でもね、私の殺意を生み出したのはそこのモトラなんだよ、リグシャ。


それが分からずに戦うリグシャが哀れに見えた。いや、その健気さが今は私の殺意の炎に薪をくべるようにしか思えなかった。


「あなたは私が悪いように言ってるけど、原因はあなたのお父さんなのよ、リグシャ」


私は現実を伝えた。そう、分かっている。こんな戦いは何の解決にもならないし、意味がない。


過去、戦ってきたときに比べて最も虚しく、悲しく、意味を感じない。どうしていいのか分からない。


だが、私のそんな言葉を無視してリグシャは赤竜に変身した。そのシンプルな思考がうらやましい。


「いいわ。始めましょうか、リグシャ。あなたがそれを望むのならば…」


私は飛び掛かってくるリグシャを迎え撃つために身構えた。





どのくらい続いたのだろうか?


殴ったり、殴られたり、蹴ったり、蹴られたり。


辺りの損害は城の半壊にまでなっていた。


逃げ惑う兵士。その中には私たちの戦いに巻き込まれ負傷し、立ち上がれない者までいた。


「いい加減、くたばれ!」


リグシャの拳が私の頬を捉え振り抜く。だが、私は態勢を崩しながらも反転してリグシャに蹴りをお見舞いする。


蹴り飛ばされて城壁を更に壊して止まるリグシャ。


バカげている。


この戦い、いい加減に終わらせたい。


だが、お互いに実力が拮抗しているようで、決め手がない。こうなると消耗戦である。


「リグシャ、もう止めろ!死ぬぞ!もう限界だろ!やめるんだ!」


悲痛なモトラの叫びを無視して城壁の瓦礫から立ち上がりリグシャは再び私に向かって突進してくる。


限界とは何なのだろうか?


それに、どうしてリグシャは引き継いでない白銀竜の覇気を使っているのだろうか?


謎はあるが、そんなことはどうでもいい。


来るなら…潰すだけである!


「私はただ、お父様と静かに暮らしたいだけなのよ!!」


リグシャの拳が私の左腕のガードの上に叩きつけられた。だが、その程度では私のガードは崩せない。


それを理解したのか、リグシャの拳は次々に繰り出された。


でも、リグシャの拳は私から見て素人である。


もし、私に白銀竜の覇気が無いなら脅威かもしれないが、今の私にとっては何の脅威でもない。一つ一つ確実に対処すれば最小限のダメージで終わる。


一方リグシャはただ勢い任せで戦っているため、呼吸が荒くなっている。実力は確かに拮抗しているが、戦いが長引くほど私に有利になっていく。


それを理解しているのがモトラかもしれない。先ほどからリグシャに「逃げろ!」と連呼している。私もそうして欲しいところである。


だが、リグシャは退かない。


無駄なことだと分かっているかは分からないが、攻撃を止めない。


その攻撃の一つ一つが、静まりかけた私の心を逆なでする。


お前の戦っている相手は、お前の父親のせいでこうなったことを理解しない子供に怒りが生まれてくるのだ。


「私はお父様のために退くわけにはいかないのよ!」


その言葉で私の怒りは頂点に達した。


あなたの愛するお父様が今の私をここまで追い詰めたことも分からずに、私の行動を悪者扱いするこの子供に対して私は容赦ない殺意を手にして構えた。


「じゃあ、絶対退かないでよ、世間知らずのお嬢様!」


拳に全エネルギーを込める。それを見たリグシャの動きが一瞬止まる。


私の拳を見て危険を感じたのだろう。回避しようと体を飛び退かせようとする。


だが、こういう実力差がない戦いで一瞬の迷いは致命的なミスと言えた。私は完全にリグシャの動きを見切り、体の中心目掛け矢のように飛んでいく!


「遅い!拳技『大筒』」


閃光が走った。


私の拳から放たれた閃光は城を突き抜け、空へと飛んで消えていった。


その閃光が消えるとそこには想定していた光景とは違ったものがあった。


「お父様!!」


鮮血を吐き倒れるモトラ。


どうやら私の大筒が当たる直前にモトラがリグシャを突き飛ばしてリグシャへの直撃を防いだようである。


だが、その代償に、そこに残ってしまったモトラの体に私の大筒が防御する間もなく直撃した。


これに耐えられるほど、モトラは強くはない。回復魔法でもかけてやればいいのだろうが、周りにそんなことができる者はいなかった。


何より白銀竜の覇気で受けた攻撃である以上、手当する手段はない。


回復する方法があるのかも知れないが、私はその術を知らない。


リグシャも知らないのであろう。弱っていくモトラを抱きかかえてモトラの名を呼ぶばかりである。


「どうしてこんなことをしたの!あんなの、私なら耐えられるのに!」


赤竜の目から涙があふれている。そんなリグシャを見て私は思わず嘔吐した。


胃の辺りがキリキリと痛んだ。どうして?アイツは私に酷い事をしたのに!どうして?


あ、そうか。


私は幼い頃、私のお母さんを奪っていった野蛮な人間と同じように、リグシャから父親のモトラを奪ったのだ。


私の覇気は消えた。


人に戻り、弱っていくモトラに声をかけるリグシャを見て、私の戦意は消えた。


もう、この戦いは終わった。


残ったのは、残骸となった城と、戦いに巻き込まれ傷つき倒れた兵士たちと、父親を抱きかかえ泣く少女。


そして、私が私自身に抱く嫌悪感。


やはり、私はこの力を持つべきでは無かった。


だが、今更である。それも分かっている。


この後、この国はどうなるのだろうか?


リーンが戻ってきて再建するのだろうか?


それとも、新たな派閥がまたリグシャを頭にして国を分かち、争いが始まるのだろうか?


それを見てオジオンは動くのだろうか?


疑問は浮かぶが、もう私には関係ない。


私はそこから何も言わずに離れた。


その場にいると、あの嫌悪感が蘇る気がして早く離れたかった。


そして、私は託児所に帰ることなく、姿を消したのであった。


何もかもから逃げるように。


何もかも捨てるために。


何もかも忘れるために。


もう、誰とも関わらないために。


その時、私が覚えているのは、頬に当たった冷たい感覚。


雪。


そして、冬の訪れがこんなに悲しいと感じたことはない、ということだけであった。



第三章 竜人族継承問題編 完


まずはここまで読んでくださったあなたにお礼を言いたいです!ありがとうございます♪


今回、本当に悩みに悩みました。


オチ、どうしようかなぁと。


いや、みんなハッピーエンドでも良かったのですが、それ、本当にいいのかな?と思ったんです。


その理由が、派閥が別れて戦ったのにすぐに仲良しなんて普通有り得ませんよね。だからと言って責任を誰が取るか?ジールが女王様?いや、ヘキサが女王?どれもしっくり来ない。


で、今回のように最後は過ぎた力を扱いきれなかったジールにも相応の心の傷を負うのも仕方ないかと思ったのです。


そして、それを託した女王にも当然ミスジャッジとして何かあるでしょうし、モトラ軍にも求心力が無くどうしようもなくなる。


ジールが白銀竜の覇気を持って行った以上、誰も覇権を握ることができない。


だが、皮肉にも、女王のいない統治の可能性を生んだという結果は残った形にしました。


まあ、この後どうなったかは四章で触れていきますが、後味は良くない終わり方ですよね。


ですが、歴史を見ても王位継承問題なんてそんなもんです。それは本人よりも周りの権力に群がる亡者達のせいかもしれませんがね。


何はともあれ謎が残ってモヤモヤだらけの三章となりました。


どうしてリグシャは白銀竜の覇気使えたの?


どうしてオジオンはリグシャを作ったの?


どうしてジールは白銀竜の覇気をつかえたの?


多分普通の小説なら別視点とか間話とかで描くのでしょうが、あくまでジール視点の体験記みたいなものなので、本編ではジールの知らない事は読者も知らないという不親切極まりないのが本作なのです。


だからかな?逆に多くはないですが、ちゃんと最新話まで追いかけて下さる方がいるのは。


本当にモヤモヤ抱えさせてすみません。


ですが、何でもわかる神様視点って気持ちはいいかもしれませんが、リアリティに欠けるかな?と思ってこのようにしています。


だから、読んでくださっているあなたには、ジールと同じモヤモヤを体感してほしいし、体感して下さったなら幸いです。


あ、ちゃんと伏線は手書きノートに残してるので、回収忘れをしないようにはしていきます。


ただ、この先は当初の予定には無かったお話なんです。


本当はこの第三章でまとめようかと考えてはじめたのですが、思ったより読んでくださる方が多く、私も書きたい話が増えてきてます。


ゆえに、第四章に突入しました。


どこまで書けるかわかりませんが、お付き合いしていただければ嬉しいです。


では、恒例(?)のキャラネーム由来と勝手に声優決めちゃおうをやって行きます。


今回の名前の由来はほとんど機動戦士Vガンダムです。あの作品は個人的に考えさせられて成長の糧にさせていただきました。


あれも覇権だったり後継とかの話で近い感じがしたから選んだわけですけどね。


というわけで、今回はこんな感じです。


リーン…リーンホース


ブラス…ガンブラスター


バスタ…バスターガンダム


リグシャ…リグシャッコー


ビゴル…アビゴル


ロアット…ゾロアット


ゾーラ…ゴッゾーラ


ザンネ…ザンネック


モトラ…モトラッド


ベリン…ジャベリン


ゾーラ…ゴッゾーラ


でした。ヘキサがVガンダムヘキサからだったのでこうなりました。今回、サブキャラがいすぎて、専属声優さんは何か悪いなぁとは思うんです。


こういう時に新人さんにチャンスなんてのもアリだなぁと。


主要キャラだけCVいきますね。


リーン…榊原良子さん。気の強い、しかも何か企むような切れ者女性はやはり榊原良子さんのイメージですね。まあ、リーンは野心があるわけではありませんけどね


ベリン…小山美紀さん。女王の貫録もありつつ、母親の部分が見せられそうな気がします。ジールといい雰囲気で話し合ってくれそうです。


ザンネ…安元洋貴さん。圧倒的な強さを演じてくれる気がします。ジールたちが苦戦するのを不敵にあしらう声は渋い方がいいかと。…でもイメージは諭吉なんだよなぁw


モトラ…櫻井孝宏さん。クールな最初と、後半につれて感情が表に出てくるどころのスイッチを上手くやってリグシャと絡んでくれる気がします。


リグシャ…豊口めぐみさん。最初のやる気ないリグシャから、ジールとの戦いの熱いリグシャまでのイメージに合うかと思いました。


今回はオチに悩んだのもありますが、私には大きな壁が立ちはだかったのです。


それは、新作ゲームラッシュ。EPISODEアイギスにメタファー、ロマサガ2リベンジオブセブン…さらには11月にドラクエ3。


誘惑がいっぱいあり過ぎて、まだ、EPISODEアイギスしかクリアできてません(やってんかいw)


現在はメタファーに着手しており、浮気でロマンシングサガ2に手を出すか…眠れない日々ですね。どうしたんだろう、今年の後半は…。


メガテンVもユニコーンオーバーロードもガマンしたのに…。


誰か一日を48時間にしてくれないかなw


さて、次からは四章ですが全く何も決めてません。これからメタファーしながら…メタファー丸パクリしないように頑張って書きますのでよろしくお願いいたします。


あなたも、睡眠はちゃんと取らないと私のように小説逃避しちゃいますので気をつけて下さいねw


2024年10月 ネジマキノ ショウコウ



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ