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モンスター託児所のジール  作者: ネジマキノ ショウコウ
第三章 竜人族継承問題編
36/80

三十五 お風呂で楽しく♪

この世に天国があるとしたら、お風呂とおいしいスイーツを食べられるところである。


私の自論ではあるが、反対する女子は少数派だと思う。


ここで私はまた新たな事実を知る。アルビオはお風呂が初めてとのこと。ベラがお風呂好きなので、てっきりアルビオもそうなのかと思ったのだが、それ以前の話であった。


風呂に誘うとティゴは「ふざけてるのか!?」と恐い顔で睨んできたが、温泉と言うと態度を急変させ、乗り気になった。


いいなぁと連呼するイアランを無視してティゴと私はすっかりお風呂大好き仲良し女子となっていた。


ただ、ウィン様はもう水浴びをしたらしく、次の機会と言われてしまった。


まあ、ウィン様は基本早寝早起きの健全生活。無理強いは良くない。


それよりも問題はヘキサであった。


今日はなぜか、初めて会ったときのように私を見て震えていた。しかも「おいで、お風呂行くよ」と言っても距離を取られた。


それを見かねてティゴが助け船を出すとティゴにしがみつき、私から身を隠すようにティゴの後ろにくっついてお風呂に向かうのだった。


私、何か嫌われるようなことをしたのだろうか?


そこに更なる問題が…やって来た。


なんと、ベラがやって来たのである。しかも、私に対してさっきベラに似た誰かがしたような気がする目線で私を見ている。


「ジール、今日は共に風呂で少し話をしましょう。とても大切な話をね」


もう内容は察しが付く。そんなベラにアルビオが鼻で笑う。


「白銀竜の覇気のことか?それならば、我がジールに話しておる。用が無いなら早々に帰るがよい」


アルビオの言葉にあからさまな不機嫌さを顔に出すベラ。本当にこの二人は仲が悪い。


似た者同士ほ自分を見ているようでイヤだからお互い嫌いになると何かの文献に書いてあったっけ。


「それだけじゃないの!今ゼーたんはどこにいるの!まさか女のところじゃないでしょうね!!」


どうやら大事なのはそちらの方らしい。まあ、ベラならそうだとしてもおかしくはない。


でも、仮に女性だとしたら姉として喜んであげて、弟を解放することを考えてあげてもいいのでは?と思うのだが、言葉にすると怒るより泣き出しそうなので止めた。


どの神様でもいいですが、少しは世界のこと真剣に考えてくれませんか?


「いえ、竜人族の街を見て帰るとのことです。今日は遅いので明日には帰ってくるとは思います」


私の言葉でベラはほっぺたを膨らませた。子供がふてくされるように。


正直あなた何歳なんですか?と言いたいけど、アルビオにしてもベラにしても美人補正は卑怯だと思う。


私が男でこんな彼女いたら、間違いなく振り回されてしまいそうである。実に可愛らしいが、同時に理不尽も感じてしまう。


そんなベラに見惚れていた私にティゴが肘で私の腕をノックする。


「おい、あれ…邪神…だよな?」


私が説明をしようとするより先に、ベラはティゴの前にやってきた。腰を曲げ、ティゴに目線をあわせる。


今にもベラの唇がティゴの唇に触れそうな距離であった。


そしてティゴのアゴを人差し指で優しくなぞると、口元だけニヤリとさせた。


「人間界のゴッドキラーか。実に可愛らしい。しかも優秀らしいな」


私はもしかしたら、ここで何かやるのでは!?と警戒したが、少しの間二人は見つめ合ったまま、何も言わずにいた。


「邪神様、私に精神操作の魔法をかけるのはやめてくれませんか?」


それを聞いたベラは「フフッ」と笑いをこぼしティゴの頭を撫でた。


「ベラと呼んで構わないわよ、ティゴ。その年でそこまで綺麗にレジストできるのは本当に優秀ね。優秀過ぎて思わずお持ち帰りしたくなったの。ごめんさなさいね」


そう言うとベラはティゴの頬に軽くキスをして耳元で何かをささやくと、お風呂へと向かって行った。


「何、言われたの?」


気になった私はティゴに聞く。するとティゴはため息を吐き答えた。


「ん?聞きたいのか?」


これ、聞いていいことなのだろか?そのティゴの一言で聞くのを戸惑ってしまった。


そんな私の気持ちを察したのか、仕方なしにティゴは答えてくれた。


「まあ、大したことではないさ。『もし、その気があるなら私が飼ってあげる』だそうだ」


…ベラって見境ないのかもしれない。いや、別にそう言う意味ではなくて部下に欲しいということなのだろうか?


とりあえずトラブルは回避できたと思ったのだが、今日は運が悪いのだろうか?お風呂に入ろうとみんなで来ていたところを竜人族の兵士に見つかった。


「女王様、入浴されるのですか!?急いで付き添いの者をご用意致しますので!」


竜人族の兵士は言うだけ言って全速力で走って行った。


「大変だな、女王様」


ティゴはニヤニヤしながらこちらを見ている。そんなティゴに隠れるかのように私をみているヘキサ。


「ジール、女王様に…なったの?」


この声は決して喜んではない。むしろ、戸惑いと不安の入り混じった声。


私がヘキサに声をかけようとすると、ヘキサはティゴの後ろに隠れてしまった。あんなに懐いてくれてたのに、ちょっと寂しい。後でちゃんと話を聞いてみよう。





女湯の脱衣所にこれだけの人がいたのは初めてである。


ベラにアルビオ、ティゴにヘキサ、そして私と…リーンが来た。


話を聞くと竜人族の女王はお風呂…というより自分の体を拭くことを仕えてる者にしてもらうとのこと。


さすがにそれはお断りした。


ただでさえ、風呂の前に警備兵を用意され、仰々しい雰囲気にされた上に、体を洗われたらもっと落ち着かない。


そんな戸惑う私の姿を見てベラとティゴは面白そうに笑っている。


いじわるな二人は放っておくとして、アルビオのサポートに回ることにした。


私はまたアルビオの初めてとなる体験をさせることとなる。


お風呂が初めてとのこと。


どういうものかは理解しているものの、実際入るのは初めてらしく、動きがぎこちない。


服を脱ぐ手伝いをしてあげて、全裸のアルビオを私は掛け湯の場所へと案内する。


初めて服を着替えた時に全裸になることへの抵抗は無かったのを覚えていたので、そこは大丈夫と安心していた。


「ここで何をするのだ?」


概要は知ってても、何をするのか分からないとのこと。私は掛け湯の説明をしてアルビオに優しく掛け湯をする。


「温かい…これは気持ちが良いな」


どうやらお湯の気持ち良さにご満悦らしく、目を閉じて柔らかな笑みを浮かべている。


次に体を洗うと説明をしたのだが、アルビオは基本的に汚れることはない。なので、そのまま湯船にともおもったのだが、せっかくなので頭と体を私が洗ってあげることにした。


リーンが「女王様自らそのようなことを!」と止めてきたが、私がやりたいからいいと言うと引き下がった。


しかし、リーンも改めて見ると無駄のない引き締まった体である。ウィン様に近いのだが、こちらは筋肉質。かと思えば胸が案外大きい。体格が大きいからかもしれないが、多少胸があっても大きく見えなかった。


何より下手な男より男前な顔。その上筋肉質の引き締まった体。近くにいるだけで胸ときめく女性がいたとしてもおかしくない。


私としても最近見る美人や可愛いタイプと違うタイプのリーンの裸体に思わず見とれてしまっていた。本当にカッコイイと思えた。


よそ見するのをやめ、私はアルビオの体を石けんを使い優しく洗っていく。


「きゃ!」


子犬が鳴くかのようなカワイイ声を出すアルビオ。急に私の方に振り返ると顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。


「じ、じ~る、い、今のヌルっとしたものは何なのだ!?」


もしかして気持ち良くないのだろうか?それとも、アルビオのくすぐったい所を刺激してしまったのだろうか?


アルビオはまるでイタズラ好きの男の子にお尻でも触られた年ごろの女の子のような顔で私を見てくる。


「そ、それはやらないとダメなのか!?」


まさかの抵抗。というより、かつて経験のない刺激に戸惑っているのだろう。嫌がっているというより驚きの表情であった。


「アルビオ様は体に汚れが付かないので別にいいですけど、これ、慣れると気持ちいいし、この石けん、いい匂いしますよ」


あたふたするアルビオの鼻の近くに石けんを近付けた。まるで縄張りを確認する肉食獣のように石けんの匂いをくんくん嗅ぎまくっていた。


「確かに良い匂いだ。ま、まあ、それならば我慢しよう」


再びアルビオが私に背を向ける。私は手に石けんを付けて優しくアルビオを洗ってあげた。


まあ、この後数回、アルビオのカワイイ奇声が何度かしたが、それが聞きたくてちょっとだけくすぐったのは内緒である。


次は髪の毛なのだが、こちらも私なんかよりとても艶やかで光沢のある長い黒髪は実に美しい。こちらも洗う必要が無いと言えば無いのだが、お風呂体験として洗ってあげることにした。


ゆっくりとまずはお湯をかけ、汚れを…と言っても無いのだが、頭髪用の石けんで泡立ちがしやすいように満遍なく濡らしていく。


触れば触るほど思うのが上質な髪の美しさはまさに神様ならではである。シャレじゃなくてである。


子供ですらここまでキレイで美しく、艶があり、まるで羽ペンで気持ちよく一直線を描いたような髪の持ち主はいない。


最近、毛先が荒れることもあり、どうしたもんかと悩んでいる私とは大違いである。


こちらもいい匂いがする石けんで丁寧に洗う。髪の毛は体を洗う時のように奇声は無く、すんなりと髪を洗い終えた。


最後に洗い終わた髪をまとめ、頭にタオルを巻いてあげた。


「アルビオ様、どうぞ湯船に浸かってください」


アルビオはとても顔が緩んでいた。


「うむ、いい匂いであり、お湯も心地良い。風呂とはこのようなものなのだな」


とても幸せそうで普段見ない穏やかで、明らかな笑みを浮かべている。私も嬉しい。お風呂に誘って正解であった。


「ヘキサ、洗ってあげるよ。おいで」


私はいつものようにヘキサを呼ぶ。だがやはり来ない。


困った私を見かねてリーンがヘキサに話しかける。その時、私は初めてリーンが戦士とか、軍を束ねる者ではなく、優しい姉の顔になってることに少し驚いた。


あれは演技とかではないだろう。その証拠にヘキサはリーンの腰にしがみつき、リーンが気恥ずかしそうにヘキサの頭をなでていた。


どこにでもいそうな仲の良い姉妹。私にはそう見えた。


リーンとヘキサが私に会う前どのような関係かはき聞くまでもなさそうだ。


ヘキサはリーンに体を洗ってもらい、ヘキサもリーンを洗う。少しリーンに嫉妬してしまった。


私も洗ってあげていたが、あのようにヘキサから私を洗いたいと言ったことは無かった。


家族との長い期間の絆と私との短い期間の絆では天地の差はあるのは頭ではわかっている。でも、何だが急にヘキサが遠く感じてしまう。


本当にヘキサから避けられる理由が分からない。


これも白銀竜の覇気のせいなのだろうか?


女王は親しくしてはいけないのだろうか?


ヘキサに聞く前にリーンに相談してみようか?


私はヘキサについて何をしたらいいか、全く答えが出ないでこない。


まあ、託児所をあれだけ長くやっていて、子供達の心を掴めたと実感できたことがないし、当然と言えば当然…か。


「ひゃっ!」


いきなり私の背後から手が伸びてきて、私の胸を触り出した。びっくりして振り向くとディゴが不満そうに私を見ている。


「ちょっ、何するの、急に!?」


「何を食ったらこんなに大きくなるんだ?」


私は慌てて離れてティゴと距離をとった。するとティゴはどこで学んだのか、中年の酔っ払いおじさんよりもいやらしい手つきで両手で胸を揉む仕草をした。


「大丈夫、心配するな、私は医者だからなぁ」


そんなの自分のを…と思ったが、それは禁句だとティゴの胸を見て私は出そうな言葉を止めた。


でも、ちょっと楽しかった。


こうやってふざけあうのは子供の時以来である。


まあ、ティゴは「エルフは滅多に触れないからな」と本気で喜んでいるように見えたが、さすがにそれは無いと思いたい…よねぇ。


少なくとも女の子でなければ本気で拳をお見舞いしてるレベルのじゃれ合いである。


ふざけ合いも一段落して、私とティゴも湯船に浸かる。ここは本当に天国である。私は目を閉じてお湯の温かさに癒されていく。


「で、白銀竜の覇気使って大丈夫だったの?」


目を開けると目の前にベラが隣に来ていた。


ちょっと変な質問である。「大丈夫だったの?」とはどういうことなのだろうか?


「何ともないですけど?何かあるんですか?」


今は少しでも情報が欲しい。私は素直に聞き返した。


「あれはね、コントロールを失うと凶暴化するのよ。歴史にはあまり出てこないから知らないでしょうけど、コントロールを失って暴走した竜人族もいたのよ」


ベラの言葉に湯船の側で控えていたリーンの顔がこわばった。


「どうしてあなたがそんなことを!?あなたは何者なのですか?ただの悪魔ではありませんね?」


警戒しているリーン。


まあ、自分の部下を全裸で魅了し、竜人族のことを知る者である以上、博識な悪魔程度には思っていたのだろうが、それだけではないと思う何かがあったのだろう。


「その話はまだ竜人族が百もいない時の話です。かなり昔の話で私も言い伝えでしか聞いたことがない。あなたは何年生きているおられるのですか?」


自分でも気がついているのだろうか?リーンはいつの間にかベラに対して脅威を感じ出しているのを。


話の内容に夢中になり、近づいては来たものの、歩みを途中までで止め、それ以上近づかない。いや、近づけていない。


その足を止めた場所は話すには不自然な距離。


つまり、それ以上進むことをためらったのだ。


まあ、ある程度の強さがあるなら、その態度は普通だとは思う。私は慣れたから、こうして近くにいても…いや、私も少し魅了されたことがあるので、レジストは忘れていない。


また、変な約束させられては困るから…。


「ん?私?一万年以上は数えるのやめたから分からないかな?」


まるで小さい子が数字を数えられないかのように年齢が分からないと言い放った。


ひょっとして、この世界が出来てからいるのではなかろうか?


「あなたの名前を聞いたことがない。それだけ長く生きてれば名のある悪魔だとは思うのですが」


風呂の湿度のせいではない。リーンの額から汗が流れている。これはかなり警戒している。


「ジール、言ってもいいの?」


どちらにせよ、リーンの警戒が解かれることはないだろうから、思い切って言ってあげた方が良いのかもしれない。


私はベラに向かって呆れた顔で頷いた。


「私は、ゼーたんの幸せのためにその身を捧げている姉で、その合間に魔界で暇つぶしに神やってる悪魔なの」


理解できてないリーンがそこにいた。


分かる、分かるよリーン。今の言い方だと、お姉さんが弟の世話を焼いている間にちょっとパン屋さんで働いてますみたいなノリで神様やってるとか言われても意味通じないよね。


てか、暇つぶしだったんだ、邪神やってるの…。


「ホントはゼーたんと一緒にいたかったけど、ゼーたんからお願いされたから仕方なく引き受けたって感じなのよね。あ、あなた、私の代わりにやってくれない?神様を♪」


だから!そんな軽いノリで神様譲らないで、ベラ!


「え、あ、その、ジール様、もし宜しければ説明をしていただけると助かるのですが…」


ごめん、リーン。私の判断は間違ってた。と言うか、どちらにしても正解の無い選択肢だったかも。


私はベラは邪神様で、師匠が弟で、それでも愛していて…はちょっと伏せといて、とんでもない方だというのは説明した。


「そうですか。ベラ様、数々のご無礼、お許しください」


リーンはベラに深々頭を下げた。そんなリーンを見てベラはクスクス笑いだした。


「気にしなくていいのよ。ここでベラとして来ているときは邪神ではなく、お風呂好きの普通の悪魔だから♪それにジールには返しきれない恩もあるのよ。そのジールに仕えるっていう者に怒るなんてありえないわ」


今度は私を見るリーン。でも何か顔色悪くなってきている。大丈夫だろうか?


「そうだ、気にするな。その色バカはそのような些細なことでは怒りはせぬ」


邪神をバカ呼ばわりするアルビオを見るリーン。再び私に説明を求めるかのように青ざめた顔を向けてくる。


「あー。アルビオは…死神様…なのよ。ベラと同列だから、気にしなくていいよ」


あれだけ大きく感じたリーンがとても小さくなっている気がする。しかも小刻みに震えだした。きっと、私がいないならさっさとこの場から逃げたいはずである。


だが、ちゃんとここにいる忠誠心、信用していいかもしれないとは思った。


「大丈夫だよ、リーン。アルビオ様もベラ様もいつもこんな感じだから恐がらなくて大丈夫だから」


可愛そうになったので湯船に誘ってあげた。断ろうとするので「んじゃ命令ってことでいいかな?」と言うとしぶしぶ湯船に浸かってくれた。


最初はガチガチに固まっていたリーンも少しずつ慣れて来たのか腹をくくったのか表情が戻ってきた。


「ジール様、あなたは本当に何者なんですか?少なくとも、ここまで凄い力を持った者はいないかと…」


「そうじゃないのよ、リーン」


私はリーンの言葉を割るようにワザと入った。


「ここにいるのは神様じゃなくて、同僚と師匠のお姉さんってだけなの。あなたのような考え方をする人は多いようだけど、私にはそんなつもり全く無いのよ」


私の言葉にリーンは黙ってしまった。何かを考えているようだ。


まあ、気を遣ってはいるけどね。私の力じゃあ暴走されたら止められないから。


しばらくすると何か納得ができたのか、私に笑顔を向けて話し出した。


「前の女王があなたにその力を継承した意味、少し分かった気がします。竜化できなくとも、あなたにはこのような不思議な力があるということを見抜いたのでしょうね」


不思議って…私は普通にしてるだけなんだけどねぇ。まあ、権力や戦力に全く興味がないか?と言われたらそうではないけどね。


自分のやりたいことをやるにはこの世界ではある程度強さは必要である。


強さが無いなら権力が必要になる。


両方あれば難易度は下がるだろう。


それに、やりたい事なんて言えばキリがない。


もっとたくさん本が読みたい。おいしいスイーツを週に二回は食べたい。みんなと平和に暮らしたい。もう少しお腹周りを減らしたい…なんて力や権力関係ないが私のやりたい事の大半を占めている。


だが、大きなこともある。


同族を助けたい。天変地異で苦しまないようしたい。戦争が無い世界にしたい…


これらは何か行動をしているわけではないが、叶うなら叶えたい。


特にこの中なら「同族を救いたい」だろう。


今もこの世界で私のような思いをする子供があるかと思うと胸が苦しくなる。


だからと言って何をしたらいいか分からない。


その点、イアランは前進した。


エアマスの城でハーフエルフを保護する。まだまだ始まったばかりだが、イアランはちゃんと自分の夢に向かって進んでいる。


普段、あんなにおちゃらけているが、イアランは本当に凄いと思う。それに、真面目にしてる時は…カッコ良かったりするし。


私なんか追いかけなくても、あのルックスなら言い寄る女性はいるのではなかろうか?


そう言えばエアマスの城でも案外人気あるみたいだし。


まあ、大切なことだしね、主が支持されることは。それに、イアラン、ちょい鈍感なとこはあるものの、結構細かい気遣いできるし、頭いいし、別にルックス以外にもモテ要素あるもんね。


いや、ちょっと待って!何か考えがズレてきた。今はそうじゃない。大事なのは竜人族についてだよね。


「そう言えばジール、イアランとどこまで進んでるんだ?」


まるで心が読めるかのようにティゴが聞いてくる。私は流石に動揺が隠せず意味のない身振り手振りを交えて返答した。


「べ、別に何も無いよ!何よりイアランは仲間だし、そう言うのとは違うのよ!」


私の言葉にニヤニヤするティゴ。と言うか、お風呂入ってティゴ、酒場にいるおじさんみたいだけど本当にティゴ、だよね?


「とりあえず一度抱いてみて決めたらいいんじゃない?」


嬉しそうに口を挟むベラ。いや、私から行く前提ですか!?自分と一緒にしないでほしい…。


「今晩辺りどうだ?私がお前の部屋に連れて行こうか?」


黙れ、子供おやぢ!まだ未成年なのになぜ…あ、まあ医者だもんね。そりゃあ知識は豊富でしょうね。


「ジール、バカに付き合う必要はないぞ。まあ、お前がその気なら我も止めはせぬがな」


アルビオ、そこは後ろの言葉はいりません。


「女王様には想い人がおられるのですか?」


リーンまで加わってきた。誰か私の味方はいないのだろうか?このままでは今晩ティゴは本当にイアランを連れてきそうだ。


しかも、この場合、絶対イアランは乗ってくる。何とかしなくては!


「はいはい、この話は終わり!そんなことよりもっと大事なことあるでしょ!」


この話は半ば無理矢理終わらせた。これ以上私の色恋を話のネタにされては困る。


まあ、私としても自分で自分の気持ちがよく分からないところもあるので困るというのが本音なんだよね。


多分、私にそういう事を考える余裕がないのもあるけど、結論を出すのを避けている自分もいる。


異性として好きならいいけど、もし違うのなら、それを言うべきか、言えば今の関係がどうなるか、考えると複雑な気分になる。少なくともイアランのことが好きなのは好きだから、失いたくないのもあるんだろうな。


でも、結論を先延ばしにするのも、まるでイアランの気持ちを弄んでるようでもある。


そんなことを考えて、今に至る。


ムズカシイよね。恋愛なんて本で読んだだけの知識しかないんだから。


それに、これが恋愛なら初めての恋愛になるわけだし…。


「どうした?黙り込んで?湯あたりか?」


心配そうな声でアルビオが話しかけてきた。湯あたりなら、涼んで冷たい水を飲めば治ることもあるが、この問題はなかなか解決できそうにない。


「あ、大丈夫です、アルビオ様。心配して下さってありがとうございます」


そんなに長い間黙っていたわけではないが、どうやら傍から見て心配されるような表情をしていたのだろう。アルビオには余計な心配をかけてしまったようだ。


「ホント、アルビオ様ってみんなの細かいとこまでよく見てますよね。子供たちの小さな変化もすぐ気が付きますから、本当に助かってます」


「なっ!?それは…し、仕事として当然だからだ!別に…特別な事はしていない!」


今度はアルビオが湯あたりしたように顔が赤くなった。こういう所が神様っぽくないからかな?何だか昔からの友達のように思えてきている。可愛い所もあるしね♪


私は思わずアルビオの隣に行き、抱きしめてしまった。私の行動に慌てふためくアルビオ。もう何を言ってるのか分からないくらいに動揺している。


そんな私たちを見て「今夜はイアランじゃなくアルビオを連れ込むのか?」と大笑いのティゴ。


抱き着かれたアルビオに少しムッとしたベラ。


ちょっと元気がなさそうだったが、久々身内とのお風呂に笑みを浮かべているヘキサ。それに笑顔を見せているリーン。


今夜のお風呂はとても楽しく過ごすことができた。今度はウィン様も呼んでまたやりたい思う時間であった。

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