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モンスター託児所のジール  作者: ネジマキノ ショウコウ
第三章 竜人族継承問題編
29/80

二十八 強襲、竜人族

息一つ乱れない。表情も変わらない。だが、私の生命エネルギー20%の猛攻を羽虫をあしらうかのようにいなす。


更に私を馬鹿にしているのか、全く攻撃をしてこない。エアマスのように「気」を使っているわけでも、ティゴのように強化魔法を使ってるわけでもない。


純粋に、己の鍛えた体で私の攻撃をあしらっている。それが基本能力の大きな差を嫌でも理解させられる。


師範はブラスといい勝負をしている。そんなブラスの身体能力の高さにも驚かされる。


ヘキサと接するようになり、改めて竜人族のことを調べたことがある。


竜人族とは、元々竜の肉を食べる人間の一部族だったらしい。


だが、それは時間をかけて、血肉に竜の力がしみ込んでいって、少しずつ竜の力を体に宿すようになった。


その一族は少ないために近親交配も行われ、濃い血を生み出すことにより、より人間離れした体と変身能力を会得した。


つまり、人間の小さな体に竜の能力。最強の戦士であり、ゴッドキラーすらも凌駕する者も存在するとも言われている。


戦って分かるのは、まさに「化け物」であること。


私は生命エネルギーを30%解放まで引き上げる。


先ほどと何も変わらない攻防が続く。ここまで歯が立たないのは初めてである。


「もういいか?ではこちらから行かせてもらおう」


リーンは拳を固めた。どうやら剣は使わないようである。それだけ、私が弱いと見たのかもしれない。


悔しいが、今のままでは負ける。私は更に生命エネルギーを解放する。少し生命エネルギーが薄いピンク色になる。


「少し早くなったのか?不思議だな、その技は」


余裕は全く変わらない。私とリーンの差は全く埋まらない。ここまで差があると普通にやってては勝てそうもない。


やはり、もっと上を使うしかないようである。


「どうした?なぜ笑う?実力差があり過ぎておかしくなったか?」


あぁ、私、笑ってるんだ。気が付かなかった。まさかこんなことで笑顔が出るなんて思わなかった。


更に生命エネルギーを解放する!55%!生命エネルギーは濃い桃色である!


桃色の閃光はリーンの表情を動かした。この戦いで初めて険しい顔をした。


「どうなってるんだ、このエルフは?」


スピードでリーンをかく乱する。だが、リーンはこのスピードにも付いてきている。


だが、ここで私は一瞬60%まで解放して地面を蹴り、リーンに特攻をする。その瞬間的な速度の変化を予想できなかったのか、私の拳をリーンが喰らった!


「リーン様!」


槍を背負った男がリーンを受け止めたが、威力を相殺できず、二人まとめて吹っ飛ばされた。


「キモチイィ♡」


あぁ。私はシアワセである。これまでのカイカンを凌駕するこの戦い。立って!立ってよリーンちゃん♪


「ジール!もう止めるんだ!その状態は危険だ!」


師範の声が聞こえる。でもね、師範、もう、ムリっ♪こんな楽しい事、ヤメラレナイでしょ♡


私は気が付くとリーンを蹴飛ばしていた。リーンは面白いように跳ねて飛んでいく。


立ち上がるリーンの額から血が流れている。これは効いている。私は間髪入れずに拳を燃やす。


「フランメぇ・フィストぉ!!!」


反応して受け止めたリーンだが、拳の熱で思わず手を引いてしまい私の熱を帯びた拳を腹部にまともに受けた!


「モエちゃうよ、リーンちゃん♡」


だが、今度は飛ばされながら態勢を立て直したリーン。しかし、先ほどの余裕は微塵も無い。


リーンは私を睨むと剣を抜いた。


短い刀身はとてもリーンの体格には不釣り合いである。しかし、その刃は少し青みを帯びて光っているように見える。もしかしたら魔法の剣なのかもしれない。


と思ったけど、試してみなきゃね♪


私は瞬時に間を詰めてワザと剣の間合いに入る。どんな攻撃がくるのだろうか?どんな効果があるのだろうか?私は嬉しくて垂れたよだれを腕で拭った。


リーンが私に向けて剣を横一文字に振る。思ったより早くないことに少し興醒めてしまう。軽く避けてため息が出る。これでは剣を抜いた意味は…。


「ぐはっ!」


私の口から血が出てくる。


今の状況が理解できず私は混乱していた。ちゃんと見切れていたはずなのに、私の胸が切られている。鎖骨下、ちょうど胸のふくらみ始め辺りに大きな真一文字の切り傷がしっかり付いている。


「もう少し深く切るつもりだったのだがな」


リーンはどうやってこの傷を付けた!?


私は体制を立て直しつつ回復魔法で傷を治す。魔法戦ではないゆえにローブを装備しなかったのは私の判断ミスであった。


まるで切る瞬間に刀身が伸びたかのようだ。


考えようと思考に集中した一瞬である。後ろに気配!先程の槍を背負った男である!


「リーン様には悪いが、ゆっくりはしてられないのでな!」


槍を短く持ち、私の背後から容赦なく狙ってくる!油断もあるが、やはりリーンやブラスのようにこの男も強い!回避は不可能である!


だが、私の前で槍は止まる。


そう、私にはあの方がいる。私の大好きな英雄はこういう危機的状況に必ず現れてくれる!


「二対一は無粋じゃないか?もし相手がいなくて退屈しているなら私があなたの相手をしよう!」


力で押し負けそうになると、その槍を剣で流し、私の間に入ってくれた。


「ウィン様、ありがとう!」


ウィン様は返事の代わりに私へ清々しい笑顔を見せて答える。


「やるな、エルフの剣士」


槍の男は後ろに飛び退いた。あれは槍の間合い。大剣を相手にする場合の基本の間合い。相手が届かないところから槍で少しずつ相手を攻撃していく。


基本でも手練れがやれば一つの技とも言える。その恐さを理解しているウィン様は安易に飛び込まなかった。


「我が名はバスタ。エルフの剣士、名を聞こう」


「ウィンだ。あなたを退屈させないように尽力するとしよう」


バスタも直ぐに攻撃を仕掛けない。お互いが相手の強さを理解し、わずかな隙を狙い合っているようだ。


つまり、二人の実力はそれほど拮抗しているのだろう。


逆に言えば、これでバスタは私に手を出してくることは無くなった。


「ここは化け物の巣なのか!?」


リーンは動揺している。まさか、ここまで抵抗されるのは予測していなかったのだろう。その証拠に次の攻撃が来ない。


先程の攻撃はバスタの連携を加味して放ったものだと推測した。剣の謎は解けていないが、あの程度のことなら次は何とかなる。


おおよそ、剣に魔力か闘気でもまとっており、それが刃になっているのであろう。


「遅れた!みんな無事か!」


師匠が建物から出てきた。こうなると形勢逆転である。


他の兵士たちがある程度の強さを持っていても、師匠の幻覚魔法や速度低下魔法で撹乱できる。


何より、私か師範、ウィン様の誰かが勝てばこういう集団は戦意を失うものである。


ここから仕切り直しと皆が意気込んでいた所に横槍が入る。


「ゼーたん、どこなの?」


声の主はこちらに向けて問いかけている。誰かなのはわかるが、今、その姿を見せるのは色んな意味でマズイ!


慌てて師匠が建物の入口に向かうが、遅かった。


いや、遅かったとかの問題はどうでもいいこととなってしまった。


ベラが出てきたのはいいのだが…。


「ゼーたん、外なの?」


寝ぼけた目を手で擦るベラ。それは別にいい。それは誰しもすることである。それより…。


「どうしてそうなるの、ベラ…」


どこをどうツッコんでいいか私には分からない。もしかして、私、夢の中なのかな?


この戦場にいる者全員がベラに目線が向く。いや、向けさせられたが正解なのかもしれない。


その行動は感受性のある者なら自然なことかもしれないが、この戦場では異常な光景である。


ベラは一矢纏わぬ姿で立っていた。


普通なら数人が気が付く程度なのだろうが、ベラは別格である。あの美しい、歩く一級美術品のような体。男性の性的な反応だけではなく、同性の私もつい魅入る美しい体。


一人の兵士が気が付くと連鎖のように、いや、吸い寄せられるように視界に入った者が視線をベラに向けてしまうのが見えた。


中には顔を赤らめる者、中には感動と驚きで口が間抜けな開き方をして固まっている者、夢なのかと疑う者、三者三様の反応だが、誰一人としてその愚かとも言える行動に異を唱える者はいなかった。


私も例外ではない。妙にソワソワして、少し高揚感が湧いてくる。


何も手につかないほどではないが、目の前のリーンに集中できなくなっている。


それはリーンも同じようで、お互い次の攻め手を出さないでいた。


「朝から良いものを拝めるのは嬉しいけど、刺激が強すぎるんじゃないかな?」


私の肩に誰かの手が置かれる。それと同時に目が覚めた感覚になる。


「…どういうことなの?」


手の主を振り返り確認する。そこには優しく微笑むイアランがいた。


「おはよう、ジール。これだけ美しいとじっくり見たいけど、見たいなら本気で魔法防御した方が良さそうだね。あれは魅了魔法なんて生易しいもんじゃないよ」


改めてレジストをしながらベラを見る。不思議なことに先ほどのような釘付けになるような気分は無かった。


ただ、これで少しわかったことがある。


エアマスの城でのお風呂や昨日の食事前のやり取り、あれは私がベラの溢れ出る魔力に惑わされていた可能性が出てきた。


「もし間違ってるならごめんね。あれ、邪神様…だよね?」


私はイアランに師匠が邪神の弟という所だけ伏せて昨日の出来事を説明をした。イアランの顔が引きつる。


「まさかジールが神相手に恋のキューピッドをするとはね。てことは、あの様子だと上手く行った…いや、大問題の種をまいたってところかな?」


師匠との血縁は隠せたとしても、この大勢に前に全裸で邪神が現われたことは隠せない。ゆえに、この後大問題になるのは私のも分かる。


「あ、真剣に受け止めた?…冗談も入れたんだけど…分からないくらい状況悪いの?」


どこに冗談が…と考えててしまった。


すぐに理解できた。昨日の夜は食事の後、しばらくは師匠と一緒だった。その後は私も自分の部屋へ戻って寝たので師匠とベラがどうしたかは分からないが。ただ、ベラは全裸で起床してここに来た。


私は思わず師匠を見た。


目を合わすと師匠は気まずそうに視線を逸らした。


「…種をまく…ねぇ」


師匠のプライベートに私が口出しする気はない。まあ、ベラが一方的に迫ったのは想像するのに容易い。でも、その目線の逸らし方って昔旅先で見たことある。


そう「浮気がバレた旦那」の目線の逸らし方である。


私たちが酒場でご飯を食べていると夫婦ゲンカが今にも始まろうとしていた。原因は旦那の浮気。問い詰める奥さんの言葉に旦那は先ほどの師匠のように目線を逸らしていた。


それを覚えているのは、その時師匠に幼さの特権というか、無知ゆえの強さと言うか「浮気って何?」と、とんでもない質問をしていたからである。


師匠は少し考えた後に「また今度教えよう」と言い、また今度は未だに来ていないのである。


「まあ、俺はそんなことより、ここの方が興味あるかな」


私が先ほど斬られた胸の辺りを笑顔で指さすイアラン。


よく見るとかろうじて服が胸で引っ掛かっている感じで、今にもめくれてしまいそうである。


「バカ!」


私は慌てて魔法で服を直す。少し残念そうな顔をするイアラン。


でも、一つ分からない。


ベラの裸体には言葉では嬉しいと言いながら、無表情だったくせに、こっちの胸には笑顔である。


イアランだからこうなのか、男がこういうものなのか分からないが、ベラを凝視するよりはいいのかもしれないと思う自分もいる。


「あ、別にジールを胸の大きさで好きになったわけじゃないからね」


それを言葉にするのは逆に怪しいって思われる事、これだけ頭のいいイアランが理解できていないのは謎である。


誰しも完ぺきではないということの例がここにいると思うと急に少し可愛く思えるのも不思議なんだけどね。


「貴様、ゴッドキラーのイアランだな!」


何とかレジストできたリーンが聞いてくる。それに対してイアランは「そうだけど?」と素っ気なく応えた。珍しく女性に対して冷たい。


「何でこうなってるのかは分からないけど、無駄な戦いしなくていいんじゃない?もう勝負どころではないくらいわかるでしょ?」


レジストに失敗してるブラスは師範によって倒されていた。


ウィン様も大剣をバスタの喉元に突き付けている。リーンもレジストはしているものの、私からのダメージは相当なものらしく、傷がまだ治り切らない。


その上、どう見ても私の味方であるゴッドキラーの出現は負け戦確定くらい分かるはずである。


「あ、ゼーたんみっけ♪」


ベラは駆け寄り師匠に飛びつき頬にキスをする。師匠は慌てて魔法でベラに服を着せる。


「ありがとう、ゼーたん♡いつも起きたら勝手に周りの者が着せてくれていたから、すっかり忘れてた♪」


まるで、ちょっとドジっ子しちゃいましたと言わんばかりにクスッと笑うベラ。


邪神はドジっ子属性でも邪神。そのドジは戦局をあっさり塗り替えるほどの破壊力である。


もし、叶うならそのドジっ子属性、あまり披露しないで欲しいところである。まあ、今回は救われた以上、私は何も言えないのだが。


そんなベラと私の目線が合ってしまった。ベラは最初は微笑んでいたのに、急に無表情となり、私の全身を凍らせるような目線と変わった。


師匠に対してベラの甘えが急変した。まるで、悪いことをしたイケナイ大人の坊やにお仕置きをする前振りのようにベラは師匠の顎にその綺麗な人差し指を這わせた。


「ゼーたん、ジールのことでちょっと聞きたいことができたんだけど…お部屋でお話しましょうか」


それだけ言うとベラは建物へともどっていく。返答はしなかったものの、師匠は緊張した面持ちでベラの後を追う。


一番この状況で取り残されたのは私となった。


なぜ、私のことについてベラは師匠と話があるのだろうか?


と言うより、今私は何かしたのだろうか?全くベラの意図が分からない。後で説明はあるのだろうか?


いや、聞いていいのかも怪しい。


あんなベラを見てると、絶対師匠が私に対して何かしていて、それがベラの逆鱗に触れた可能性があるくらいは予測できるのだが…。


それより、この竜人族の方々をどうするか?が問題である。


ベラの裸体で魅了…いや、現実世界に意識が存在してない、夢の中を生きてるような感じになっている多くの竜人族をこのまま放置するわけにはいかないだろう。


「リーン、もう終わりでいいよね?」


勝負に水を差されたようになり、私は高揚感の消失と共に生命エネルギーは抑えられ白色になっていた。


「殺せ。ヘキサ様を奪還できない時点で私たちの未来はない」


覚悟を決めたのか、あぐらを組んでリーンはその場に座った。だが、未来はないという後ろ向きの言葉に反して、私を見てくる目には強い意思が宿っていた。


きっと、相当な覚悟を決めここに来たに違いない。


「師範、この人たちと少し話す機会作りたいと思うんだけど…どうかな?」


リーンは私の思わぬ言葉に表情に驚きがはっきりと出てしまっていた。


「いいんじゃないか?どうせこの数を処分するにしてもゼフィ無しでは面倒だしな。ゼフィなら一度にこいつら元にも戻せるが…」


さすがに数人なら私でもなんとかなりそうだが、この数百という数は無理である。イアランの方を向くが、イアランも首を横に振る。


何よりあの雰囲気からして無事師匠が生還できるかも疑わしくなっている。本当に私が何をしたのだろうか?


「ティゴならできるだろうけど、この数治療を頼んだら俺、何回無理難題解決しなきゃならないか分からないよ」


そこは全く持って同意である。腕は確かだし、魔法においては間違いなく信頼できる。だが、口の悪さと報酬がもっと普通にお金ならいいのだが…。


それはさておき、私はリーンの元に近寄る。多少は警戒しておくが、戦意は感じられないから大丈夫とは思う。


「まあ、お茶くらいは出すから少しお話し聞かせて。私も聞きたいことあるし。さっきのブラスやバスタも一緒に来ていいからさ。ただ、暴れないでね」





私はリーンたちを居間に案内した。早速紅茶を入れリーン、ブラス、バスタの前に置く。


こちらは私、師範、イアランの三人で丁度三対三の簡易的な会談のようになって相手に威圧も引けも取らない。


まあ、私は参加者兼給仕ではあるが、そこは宮殿に招いての会談ではないので仕方ない。


茶菓子に私特性のドライフルーツを用意した。けど、最近こればかりを出してるように思えているので、もっと勉強してもっと茶会充実を目論んではいる。でも、最近は色々あり過ぎて時間が無いのである。


「いい香りだ。この辺りでも良い茶葉が取れるのだな」


私たちに会って初めて表情が緩んだリーンを見た。その表情はその辺のイケメン顔負けのカッコよさである。女性と言われなければ気が付かない者もいるだろう。


決して不細工ではないが、左右にいるブラスやバスタが普通な顔であるがゆえに、リーンのカッコよさが際立つ。


「さてと、どこからはなせばいいものだろうか」


リーンは神妙な顔をしながら考えをまとめているようである。まあ、話せないこともあるだろうから、言葉選びに気を遣うのも当然だろう。


と、その時、上から何かが叩きつけられる音と共に師匠の断末魔のような叫び声が聞こえた。


ここにいた六人の顔が変な笑みを浮かべてしまっていた。


だが、誰も様子を見に行こうとしなかった。


その行動は最適解であることは私も理解している。


触らぬ神に祟りなし。


きっとみんなの共通した答えである。


「言いにくいことあると思うから、こちらから質問する形でいいかな?」


イアランが助け船を出す。こういう時は頼りになるイアラン。まあ、イアランもゴッドキラーとして今回の事態の把握はしておきたいだろうし、何よりこちらを見てウインクしてるところを見ると私に格好つけたいということなのであろう。


「それで構わない。もし必要ならこちらも竜人族のことについての知識を話そう。人類や悪魔とも違うところもあるだろうし」


私は無言でうなずく。まずはイアランが私に目で合図してきたので私の疑問をぶつけることにした。


「なぜ、あなたやサルトではなくヘキサが長と言われるの?人間なんかだと先に生まれた者が長になることが多いんだけど。しかもヘキサはまだ子供だし…長として役割が果たせるとは思えない。良ければ説明して欲しいけど、いいかしら?」


私の質問しなくてはならないことはこれである。この内容を理解できればヘキサの怯えの原因も少しは見えてくるかも思った。


だが、私の質問を遮るように私の両肩に柔らかな感触がそっとやってきた。


その感触は綺麗な美しい手。両肩に手を載せそのまま滑らせて私を抱きしめ頬に自分の頬を触れさせてきた者がいた。


「ジール、お前は私にとっても大切な者のようね。あなたが困ったときにはあなたへの助力を惜しまないから遠慮なく言ってね」


横を向いて心臓が飛び出そうになった。とても優しい顔をしたベラが私に微笑みかけている。


この空気をまるで読んでいないベラだが、今、とんでもない爆弾発言をしていたのは分かった。


ベラが邪神だと知るイアランと師範は固まりうごけなくなっている。


この言葉に至った経緯も全く分からない。先程あれだけ冷たい目線を向けたベラがこうも変わるのは私の理解を遥かに超えている。


私はどうすれば良いか分からず、ただ、ただ戸惑い、冷や汗を流すばかりであった。



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