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二十五 恋せよ乙女

お風呂はいい。実にいい。


体を温め、リラックスできる。


…ただし、一緒に入る相手次第…である。


師匠によって人払いされており、まさかの一対一。


お風呂で体が固くなるのは初めての経験だか…そんな経験は求めてないんですけどね…。


「隣に入ってよいか?」


思わず邪神に見惚れてしまった。このプロポーションは卑怯である!大人のウィン様は鍛えられ、絞られた体に豊満な胸という女性もうらやむプロポーションだが、この邪神はウィン様とは違う美しさがある。


スラっとしているのに細すぎず、まるで美の彫刻が動いているようである。胸は特段大きいわけではないが、形が良くキレイである。


腰も美しくくびれており、思わず自分の腰を隠したくなるほどである。


その上、エルフの私が羨むくらいの白くてキレイな肌。もう生ける芸術品と言っても過言ではない。


「あ、はいっ!」


そんな邪神が手に木の風呂桶のようなものを持っており、その中には陶器の液体の入った入れ物と、小さな一口サイズのコップがあった。


つい魅入ってしまい返事が遅れた。怒られるかと思ったのだが、邪神は何も言わず私の隣に腰を下ろし風呂に浸かる。


「エアマスが、風呂で飲むのも一興と言うのでな。その器を持つが良い」


私は言われるがまま、器を持つ。


すると、邪神が液体の入った入れ物を持ち、器に液体を注いでくれた。


「樽酒とのことだ。気にせず飲むがいい」


ちょっと待って!今、私は…神様にお酌させたってこと!?いや、美人にお酌されたのはちょっと嬉しかったけど、そういう問題じゃない。


しかも私が先に、だ!


師匠が知ったらきっと怒るに違いない。


私も慌てて邪神にお酒を注ぐ。


「すまぬな」


私の注いだお酒を一口飲むと木のトレーに戻す。


「これは良いな。少し持って帰らせてもらうよう手配するか」


私も一口飲んでみる。


確かにこれは美味しい!樽の香りがふんわりと広がり、すっきりとした飲み口。ワインとはまた別の味わい。邪神が気に入ったのも納得である。


「ジールよ、ゼフィのこと、どう思っておるのだ?」


唐突な質問で一瞬返答に困ってしまった。


そういえば師匠って邪神のお気に入りだったっけ。どう思うと言われても師匠は師匠だしなぁ。


「まあ、頼りがいあるし、優しいし、自分のことは自分でやるし…立派な師匠だと思ってます」


「攻撃魔法が使えなくともか?」


そういえばその話は気になっていた。


流石に師匠に直接は聞きにくい。邪神からその話題を振ってくれるのは聞いてよいということなのだろうか?


「その理由、教えてください。もし、話していただけるのなら、ですが」


もし、何か重要な公言できない理由があるなら、それは仕方ないこと。ダメ元でとりあえず聞いてみる。


「…そうだな。そうなるとオーキスの自己制御の話もせねばなるまい」


私の中での違和感に答えが出た。


師範も生命エネルギーを使わないのではなく、使えない。だから、イアランやエアマスの時に苦戦していたのだろう。


「あれは三界大戦の時までさかのぼる。あの大戦の前まではゼフィは魔界最強の魔術師であり、オーキスは無敗の暴走拳士であった」


三界大戦…昔、天界、人間界、魔界が総力戦でぶつかり、各界に大きな傷跡を残した史上最悪の戦争である。


たった一度だけあったこの戦争は今でも各地にその当時の凄さを現代に伝える遺跡が残っている。


「あれは我の所に天界の…今で言うゴッドキラーのような者が攻めて来たことがあった。天使の数、その者を筆頭におよそ六十万。さすがに終わったと我も思った」


邪神はお湯を手ですくいお湯を遠い目で見つめる。


「だがな、オーキスが生命エネルギーを80%開放して全て薙ぎ払うだけではなく、そのまま天界へ攻め込んだ…と言うより、怒りによって暴走していた。コントロールができておらなんだ」


「は…80%」


想像ができない。一体どれだけ強くなったのだろうか?


「そして、オーキスは天界の神のもとにたどり着き、顔面をなぐり、天界の神をぶっ飛ばした。そこまでは良かった」


「そこまでは?」


何となく予測ができた。


そう、生命エネルギーはコントロールできる範囲を超えたとき、思考がシンプルになる。そうなると、邪神の話では師範は怒りをコントロールできなくないいていくだろう。


それはつまり…。


「そう。暴走したオーキスは戻って魔界の者にも拳を振るった。それを見たゼフィはオーキスを止めるために極大核融合魔法を使った。これを使える者はゼフィ以外存在しない」


古代文献で読んだことがある。極大核融合魔法。これは周囲、約三十キロメートルを消滅させると文献に書いてあった。


「ゼフィはそれでオーキスを止めた。だがな、自分が育ててきた者を、自分が殺さなくてはならない辛さは計り知れぬ。まあ、実際は瀕死ではあったがオーキスは復活した。蘇生に二百年かかったがな」


師範は普段滅茶苦茶で適当であるが、この生命エネルギーのことに関しては真剣だった。その理由もこれで納得できた。


「ゼフィは悔やみ、自らを呪った。そんな方法しか選べなかった未熟な自分を。そして、自らの攻撃魔法を全て封印した。そして今に至る」


仕方が無かったのかもしれないが、それで自分を納得させられなかったのであろう。


何より、極大核融合魔法は存在してはいけない魔法とも言われていた禁呪の一つ。


その一撃で世界のバランスが簡単に崩れる力がある。


「オーキスも復活して以降、エネルギーの色が変わることを極端に恐れるようになった。今では少しくらい色が変わったとしても大丈夫のようだがな」


あれだけ一緒に住んいたのに気が付かなかった。私は二人に頼ってばかりで、理解しようとは思っていなかった。


いつも一緒だから分かった気になっていたのだろう。


師範の修行の旅はきっと、その時と同じことを繰り返さないためなのかもしれない。


師匠の託児所の結界は、戦いになる前に追い返せるから作ったのかもしれない。


二人は、やはり本気で戦っていなかったのだ。


「それならなぜ、ゴッドキラーにしたんですか?」


私が理解できないのはそこである。そんな制限のある二人になぜゴッドキラーの称号を与えたのかが分からない。


「それが無くとも、あの二人は強い、ということ。ただ、それだけだ。それ以上でも以下でもない」


これ以上無い理由である。逆に制限あってこの強さは化け物と言える。


「後、ジールには改めて礼を言う。箱庭の件、本当にあれはお前無しには成り立たぬ」


ベタ褒めされて思わず赤くなってしまった。


最近、誰かから褒められたことは無い。しかも神様からのお褒めの言葉。喜ばないわけがない。


「あ、ありがとうございます!」


「本当に、何度お前を消そうかと思ったことか。それをしなくて良かったと今は思う」


私、何かしたんでしょうか?消されるほどのこと、したんでしょうか?


「お前を連れてきてからゼフィはお前のことばかりでな。我は嫉妬して消そうかと思っただけだ」


嫉妬ってどこでも怖いんですね…。


「死神の件も、処罰があるならお前ではなく自分にと言った時は悔しくて悔しくて…だが、羨ましくて…自分のことで頭を下げたことのないゼフィが、お前のことだと迷いもなく頭を下げる」


じっと私を見る邪神。これは…命の危険が迫ってるのかも…。


「そういう時だ。お前を消したいと思うのは。だがな、お前を消してゼフィに嫌われる方がもっと辛い。」


私はホッとした。邪神はちゃんと自分のメリットを…って、邪神って師匠のこと、好きなの!?


「我は月に一度、ゴッドキラーの会合の後、ゼフィと食事をするのが唯一の楽しみなのに、お前は…食事だけではなく、ワインを共に飲む仲なのであろう?」


「あ、それは師匠が飲みたい時に付き合うだけでして、それもたまにですし」


「羨ましいのだ、それが。ジール、お前が邪神をやってくれぬか?代わりに我が箱庭の管理をしよう。それが良い!」


私にグイっと近寄ってくる邪神。近づいて顔を見るとキレイな瞳に吸い込まれそうになる。


しかし…神様って簡単に代わる言い過ぎ!それでいいのか神様!


「い、いえ、私には無理ですよ!邪神様だから今の魔界も平和なんですから!」


私の一言で落ち込む邪神。


「そうだな。何より立場ゆえに求めてはならぬのは分かっておる。だか…そう思えば思うほど、ゼフィのことを想ってしまうのだ」


何でもできそうで、できないのが神ということ…か。


でも、好きな人のそばに居たいのに叶わないのは少し可哀想である。


「たまには託児所へ遊びに来て下さい。歓迎します!」


私は邪神の手を取り真剣に見つめた。やっぱり好きな人とできるだけ一緒に居たい気持ち、女性としてすごく共感できる!


「ジール、お前は優しいな。ゼフィもその顔だけに惹かれたというわけでないのも分かる」


そう言えば人間界の神も私の顔のことを言ってたけど、誰かに似てるのかな?


「私、誰に似てるんですか?」


気になるので邪神に聞いてみた。


「ゼフィは詳しく話さないが、昔出会った人間の女性に似てるらしい。聞くとゼフィが不機嫌になるので詳しくは聞けぬのだ」


気になるところだが、それを知ってどうなるわけでもなさそうなのでこの話は自分の中で終わらせることにした。


「ところで、ゼフィについて聞きたいのだが…ゼフィは最近喜んでいたこととかないか?美味しそうに食べていたものとかないか?会合の後に用意したいのだが、ゼフィは全く教えてくれぬのだ…」


こんな健気な美人に対して師匠は冷たいのではなかろうか?


まあ、邪神は仕える対象である以上、そういう余計な感情は出さないようにしている可能性はあるが…。


「幼い頃、プリンが好きだったのでな、プリンは欠かさず用意しておるのだが、最近は全く嬉しそうではないのだ…」


邪神様、その幼いっていつのことでしょうか?悪魔の場合、下手すれば一万年以上なんて場合もあるわけですが…。


「実に可愛いのだ。嬉しそうにプリンを食べる姿がつい昨日のように思い出される。今でも何にも変わっておらぬというのに…」


想いとセンスがかけ離れすぎてる。あの師匠が今プリンを嬉しそうに食べる姿は想像できない。


お茶するときはナッツやドライフルーツは食べるけど、私のようにスイーツを食べてるところは見たことが無いし、本人が求めたことも無いのである。


「あ、そう言えばワインはどうですか?師匠、地下にワイン蔵作ってますし、ワインは好きですからいいんじゃないですか?」


私に意見を聞き、いきなり落ち込む邪神。何かあったんだろうなぁ。


「用意したのだ。魔界でも貴重な逸品を。するとゼフィは『邪神様と酒を酌み交わすなど恐れ多い』と言って口を付けなんだ」


…今の私は恐れ多い事してるんですね、師匠。


「ゆえに困っておる。ただ、ゼフィの喜ぶ顔が見たいのだ。ゼフィが笑ってくれるなら天使にもこの魂捧げても良いと思っておる!」


あ、悪魔ではなく邪神なので天使ってことね。でも必死さは伝わってくる。


「誘惑してもレジストされて効かぬし、二人でどこか出かけても従者と主の関係を崩さぬし、泣いても涙は拭いてくれはするが、言うことは聞いてくれぬし…どうしたらよいか分からぬのだ…」


ちょっと師匠が酷いと思えてきた。こんなにアタックしてるのにはっきりとした態度を示さないのは良くない!


「応援します、邪神様!師匠が本当はどう思っているのか…それだけでも聞き出しましょう!」


私の言葉を聞き、邪神の目が潤んできた。


「ジール、お前に話してよかった!」


喜びのあまり邪神が私を抱きしめて来た。きっと立場的に誰にも言えなかったのだろう。女の子の悩みはどこでも同じようである。


「では、何とかして箱庭に行く方法を考えねば。ゼフィは何かと言い訳して断るのだ。普段のゼフィを見てみたいという儚い願いのために行きたいだけなのだが…」


「そうなると、黙って潜入…というか今思い出した!邪神様ってアルビオ…死神様に似てませんか?」


そうである。邪神は大人びているが、アルビオは幼さがある。まるでアルビオが邪神の子供のころのような感じである。


「それは…ハイムのせいだ。あのアルビオ、元は…『邪神様、思春期ヴァージョン』と言うらしいのだ…」


邪神が頭を抱えた。


ハイムとはウィン様の体を作った身体造形師ハイムのことであろう。そのハイムの「邪神様、思春期ヴァージョン」とはどういうことなのだろうか?


「ハイムは優秀なのだが…我に対しての信仰が尋常ではなくてな。ハイムの研究所には…我の様々な年齢、服装、髪型をした人形が…一千万体ある。全ての人形のクオリティが高すぎて、あそこに行くと少しめまいを覚えるのだ…」


…それは邪神でなくともそうなるであろう。私も同じことされたら二度とそこへは行きたくない。


「そうだ!ハイムの人形に邪神をさせればいいではないか!どうせ大した業務は無い。無駄な挨拶をしに貴族たちが来るくらいゆえに誤魔化せるのではなかろうか?」


影武者作戦か。試してみる価値はありそうである。


「分かりました。もし協力できることがあれば言って下さい!」


「早速帰ったら作戦を立てよう!作戦実行の時は頼むぞ、ジール」





風呂から邪神と楽しく話して上がってくる私たちを師匠が出迎える。


「邪神様、そろそろお時間です。お送りいたします」


深く頭を下げる師匠。まさに従者である。


「お前がどうしても送りたいなら同行を許そう。その前に今晩のもてなしをしてくれたイアランとエアマスに一言礼を言いに行くとしよう」


邪神は師匠を連れて廊下を進み奥へと消えていった。


あれ、きっとすごく嬉しいんだろうな。連れて帰ってくれるとか言われたから子犬のように心で喜んでるだろうなぁ。


二人を見送るとやっと肩の荷が下りた気がした。これでやっとゆっくり…。


「ジール、お風呂上り?」


出来そうな気がしない。なんでイアランと遭遇するかな?


「あのさ、あっちの廊下の窓から月がキレイに見えるらしいんだ。これ飲みながら月見でもしない?」


「お酒は飲まないからね。それにあなた、かなり飲んでるでしょ。明日起きれないわよ?」


それでも持っているグラスを差し出してくる。


「これ、リンゴジュース。冷たくて風呂上りにはいいと思うよ♪」


てっきりお酒を付き合えと言うのかと思った。どうやらこれは何かあるようである。


「何か話があるんでしょ?少しなら付き合うわ」


「ありがとう、ジール。あ、そこの角曲がったところらしいんだけど、お姫様抱っこで連れて行こうか?」


とりあえず冷たい目線を飛ばし、その月の見えるところに向かって歩き出した。


「待ってよ」と言いながら後ろから着いてくるイアラン。


どこの世界にすぐそこに行くのにお姫様だっこされたい人が…あ、いや、邪神なら師匠がすると言ったら喜んでされるかもしれないか。


角を曲がると大きな一枚ガラスの廊下に出た。その窓にすっぽりと夜空の月が入っている。実に風情がある。


そこには長椅子があった。ここで月を見るために用意してるのかもしれない。


「エアマス、ここでよく女性を口説くんだって。そのための長椅子って言ってたよ。だから、俺にもジール口説くならここはどうか?ってオススメしてくれてさ♪」


その説明、今必要なのかね?口説こうとする相手に「これから口説くよ」とか言う男がいるなんて話は聞いたことが無い。


でも、風呂上りに少しゆっくりしたかったので、その長椅子に座ることにした。


「はい、どうぞ」


イアランがグラスをくれた。


風呂上りの火照った手に冷たいグラスが気持ちいい。


イアランも隣に座るとグラスのジュースを飲みだした。


「ここって凄いんだよ。籠城してもやって行けるように城で色んなものを作れるよにしてるんだって」


おいしそうにジュースを飲んでいるイアランを見て私も一口飲んでみた。


「うわぁ、とても美味しい♪」


リンゴの香りが口に広がる。決して甘いわけではないが、リンゴの香りで口が満たされると幸せな気分になる。


「でしょ。ジールはこういうの好きだろうなぁって思ってね♪」


無邪気に喜ぶイアランを見て何となく肩の力が抜けてくる。


「今回、協力してくれてありがとう。おかげでハルコを助けることができたわ」


本当はさっきの食事の席で言いたかったが、イアランをぶっ飛ばしたので言えなかった。


「ジール、礼を言われることはしてないよ、俺。今回はゴッドキラーに返り咲くためにやったことだからね。お礼を言うのはこっちだよ」


確かにそれが理由かもしれない。でも、結果として私はハルコを助けることができたのは事実である。


「それに、ジールはお礼何て言わなくていいよ。俺が好きな相手が望むこと叶えただけだしね♪」


「気持ちは嬉しいけど…無理はしないでよ。一度殺されてるんだから」


エアマスがまた命を狙うとは考えにくいが、それに匹敵する者はまだまだ存在する。決して油断できる状態ではない。


何より肝心なイアランが殺された理由がまだ分かっていない。


「あ、そう言えばキスのことなんだけど」


イアランの言葉で急にイアランを意識してしまった。これを狙ってここに来たってことだろうか!?


「別に無理にキスしてくれなくていいよ」


想像していなかった言葉を言われてしまった。私は思わず「へ!?」と言った。


「確かにして欲しいけど…ジールにその気が無いのに無理強いさせてキスしてもらっても嬉しくないしさ。ジールがキスしていいって思うなら別だけどね。そんなこと思って無さそうだしね」


イアランはそう言いながら寂しそうに笑った。


「あ、え、うん。その、そういうのじゃなくて、何て言うかそのね、やっぱりその、でも、そうじゃなくて、だからね」


言葉が出てこない。今の自分の気持ちを言葉にして説明ができない。と言うか別に嫌いではない。それを上手く伝える言葉が浮かばない。頭が回ってないということだろうか?


「まあ、言いたいのはそれだけだよ。けど、もう一緒に暮らせないのが残念だなぁ。ホワイトウルフのままでも良かったかな?とは少し思うんだよね」


かなりへこんで立ち去ろうとするイアラン。私はちょっとかわいそうに思えてきた。


「んじゃあ、キスはしないけど…」


私はイアランの前に回り込んだ。


「元気出しなよ、ゴッドキラーさん」


私はイアランを抱きしめた。背中に手を回し優しく二回叩く。イアランはしばらく固まっていたが、イアランも私を抱きしめた。


「いつこんな悪い事なこと覚えたのさ。お風呂上がりのいい匂いは卑怯としか言えないよ」


イアランの体が案外しっかりしていることに気が付く。何だかんだ言っても男の人なんだよね。


「戦略学ぶにもいいけど…もう少し私がキスしてもいいと思えるように女心も学びなさいよね」


「分かりました、ジール様」


少し寒いこの廊下、こうやって相手の体温を感じていると丁度良いくらいである。


今日はこの寒さ、私にはむしろ心地よいと思えた。


「もう殺されないでよ、ゴッドキラーさん」


私はイアランの胸に頭をうずめて、聞こえるか聞こえないかの小さな声でつぶやいたのだった。

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