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二十四 切り札

読みはアタリである。


エアマスの呼吸が乱れている。先ほどより苦しそうである。


「まだまだ続けられそうかな?オジイチャン♡」


私はあえて余裕の笑みを見せる。


だが、今にも意識は飛びそうである。


師範がハルコにした生命エネルギーの流し込みの応用のつもりでやったのだが、これは失策かもしれない。


苦しそうではあるものの、エアマスは生命エネルギーをコントロールしようとしている。


「そっちこそ辛そうだな、ジールさん。私はな…あなたも欲しいが…それだけが勝ちたい理由じゃないんだよ」


肩で息をしながら態勢を立て直すエアマス。イアランはまだ起き上がってこない。相当ダメージが大きいようだ。


「私はね、一族を背負っている。もし、私が負けたら…ニンジャは使い捨ての駒にされる…」


本当にこの男、どこまで化け物なのだろうか?少しずつ生命エネルギーが色が薄くなっていく。


エアマスは私の生命エネルギーをコントロール出来つつある!


「もう、ニンジャが道具のように扱われて捨てられていた過去に戻るつもりはない!」


フラフラしながらエアマスはイアランの倒れてる方へと向かう。私のことは眼中に無いのだろうか?


「行かせるか!」


いつものように跳躍しようとした。しかし、足に力が入らなくなってきている。


「それだけの気を放出してるのに動けたら…それこそ化け物だよ、ジールさん」


そう言い残すとゆっくりイアランの元に歩き出すエアマス。


歩いて行くなんてエアマスもかなり追い詰められているのが分かる。


ただ、私も同じ。思うように動けない。こう言う時は…。


「シュテル!」


魔力を使いシュテルをコントロールしてエアマスを攻撃する。


しかし、シュテルが思うように動かない。


「しゅ、集中力が…」


目の前がぼんやりしてきた。これでは流石に魔法もシュテルも使えない。


でも、ここで気絶することはできない。イアランが立ち上がるまで時間を稼がなくては…。


その間にエアマスはイアランに近づく。


「途切れるな、意識!」


私はフランメ・フィストを発動させる。


「目覚めろ!私!」


その赤くなった右の拳を左の肩に当てた。


「ぐっっ!」


熱い。これで気を失うのではと言うくらい熱い。我ながら見事な技である。


涙は出てきたが、肩は熱くてヒリヒリするが、意識が途切れるのは防げた。


「アタシに目もくれず、他に行くなんて失礼じゃない?」


私もふらつきながらも立ち上がる。シュテルを発動させ、自分の前に配置する。


魔法を使うために魔力を集中したが、私は使えなかった。


エアマスの後ろ、直線上にイアランがいる!


「それくらい計算しているんだよ、ジールさん。ただ、ここまで来ると信念の強さが勝敗を分けそうだな」


イアランをちらりと見るが回復している様子はない。魔力切れなのだろうか!?


エアマスはイアランの三メートル手前で動きを止めた。


「今度は…何を企んでいる?」


「魔力…切れてしまったよ…」


うすら笑いを浮かべるイアラン。まさか、ここで詰むなんてイアランらしくない。


「それは信じられんな。ここから少しずつ攻撃させてもらうとする」


エアマスはナイフのような飛び道具でイアランの腕目掛けて飛ばす。


イアランは避けることなく腕に飛び道具が刺さった。


「どうやら…ウソでもないようだな…」


再び飛び道具で今度はイアランの足に攻撃を当てる。


それでも動かないイアラン。


「趣味…悪いだろ…エアマス」


イアランは出血を回復しようとしない。本当に魔力切れのようである。このままではイアランが危ない!


「ある意味…お前を信頼している。まだ…何か策を持っているのでは?とな」


エアマスも飛び道具をやっと投げている。私の生命エネルギーをまとってはいるが、使えないようである。


それだけ、心身ともに限界が近いのかもしれない。


私からエアマスまで二十メートル。これがこんなに遠いとは思わなかった。


私は力を振り絞り、シュテルでエアマスを攻撃する。だが、シュテルの威力は弱く、エアマスに手で払われてしまった。


「悪あがき、他にあるかね、ジールさん」


万策尽きた。私の攻撃方法はもう無い。生命エネルギーを使えば意識を失う可能性がある。魔法もイアランに危害のないものなら、エアマスに効果があるか分からない。


でも、私はイアランがまだ策を持っていることを知っている。


ただ、本当に魔力切れならその策も使えない。


あれは、演技なのだろうか?それとも…。


まだ動くシュテルを私の前に配置する。


「試してみるかな」


私は自分に攻撃、防御、速度の強化魔法をかける。そして、フランメ・フィストを発動させる。


「私もこれで打ち止めか。イアラン、信じてるからね!」


私は配置されたシュテルの中心に飛び込む。


予想通り、魔法も拳も強化された。


「行っけー!」


生命エネルギー発動時より早くはない。だが、今のエアマスには充分だろう。


「なっ!?」


こちらに気がつき避けようとするエアマス。


「フランメェーフィストー!」


本当に何なのだろう、エアマスという人間は。ふらつきながらも、後ろに倒れながらも私の攻撃を避けたのである。


終わった…。


私はその勢いのまま、地面に飛び込んだ。


「イアラン、ごめん…ね」


私の涙の混じった声にエアマスが反応した。


「ジールさん、本当にもう無いんだろうな…」


エアマスは立ち上がった。もう、私は見ることしかできない。


本当に私はこの戦い、イアランの足を引っ張っている。私が召喚された時、決めていれば終わっていたのに。悔しくて涙が出てくる。


「…ジール、やっぱり君を好きで良かったよ」


私はイアランの言葉で何とか四つん這いになり、イアランの方を見た。


「イアラン、まさか…これを決めるために…回復に魔力を使わず…チャンスを待ったってこと!?」


エアマスが血を吐く。エアマスが振り返るとニヤリとした。


「まさか…イアラン…このために…」


腹に大剣が突き刺さっているエアマス。


「切り札は…相手が油断したときに…使うのが…ベストだ…」


大剣が引き抜かれる。


「卑怯かもしれないが、戦術というものは勝利を得るためのものだ。悪く思わないでくれ」


初めて見た。冷酷な感じのウィン様。


いや、本人の意志と言うより戦略の一手として動いているといった感じである。





「ウィン様にも召喚の契約するの!?」


確かに私にできたのだからウィン様にもできるのは分かる。だとすれば、これほど心強い切り札はないだろう。


ウィン様に話すと即OKとなった。


「召喚の印を付けるのか?じゃあ服を脱ぐとしよう」


「脱がないで下さい、ウィン様!」


いくら幼いとはいえ女の子なんだから少しは節操を持ってもらいたい。


「背中で大丈夫です。ね、イアラン」


「別に子供に興味無いから俺は気にしないけどね」


素っ気ないイアランだが、ウィン様ってちょっと胸も膨らんできてるし、少し大人になりかけている女の子である。


何と言うか子供と言い切れない体を見せるというのはどうかと思う。


「じゃあ、やっぱり脱ぐ方が早いじゃないか。脱ぐぞ」


「だから、ウィン様!」


何だかんだあったものの、ウィン様もイアランと召喚契約を結んだ。


「ウィン、君の性格から言うと意にそぐわない役割を担ってもらうことになるかもしれない」


どういう作戦なのか分からないが、イアランはウィン様を切り札に使うつもりのようだ。


「従者となった今、イアラン、お前の策に従う。私も戦術を学んだ身だ。勝利のためには時として個の感情を捨て、駒になることも必要なのは理解している」


これほど頼りがいのある切り札があるだろうか?


だが、イアランのこの慎重さからエアマスの強さが伝わってくる。


「ジール、できることならウィンを使わないで勝利したい。理由は簡単だ。切り札を使った時点で勝利が得られないなら…負ける確率が跳ね上がるからね」


言ってることは正しい。でも、そんな余裕をもって戦える相手ではないのはイアランも分かっているはず。


だから、ウィン様を切り札として用意したのだろう。


「私は召喚されれば、その時の戦術に合わせていくつもりだ。よろしく頼むぞ、イアラン」


ウィン様は爽やかな笑顔の後、イアランとガッチリ握手をした。





「さて…エアマス。…これで無事に動けるのはウィンだけだ。これで…チェックメイトで…いいよな」


これは勝負あった。エアマスも流石にこれ以上は無理なはずである。


「やはり…イアラン…お前は…強いな」


エアマスは自分の気を開放して傷の回復を試みている。何という執念だろうか。


「負けられん…と言ったはずだ。私の命が…ある限り…負けは認めん!」


無傷のウィン様の前で今にも倒れそうなエアマスが構える。


「もう勝ち目がないと分かりながらも私に挑むその姿勢、あなたは己の揺るがない信念のために戦うというのだな」 


ウィン様も構える。しかも真剣な目をしている。


「負けるから逃げる…というわけにはいかない。私は…ゴッドキラー、エアマスだ!」


遅い。


エアマスの動きは私が見た中でも一番遅い動きだった。


それを容赦なくウィン様は切り捨てた。


「見事だ…エルフの剣士…」


この瞬間、勝負は完全に決した。


エアマスはその後、起き上がらなかった。


こうして、イアランは再びゴッドキラーの地位に返り咲くこととなった。


「見事だったよ、イアラン」


人間界の神が手を叩きながらこちらにやってくる。


「自分の肉体をも布石とし、エアマスを追い詰めたお前の策は見ててとても楽しかった」


いつの間にか辺りの結界は消え、エアマスにもアシュタを筆頭に駆け寄ってくる。


「で、イアラン、これからどうする?」


人間界の神がイアランの前にしゃがみ、イアランの顔をニヤニヤしながら見ている。


「そろそろ演技はやめてくれ。回復、できるんだろ?」


私は思わずイアランを見た。


あれ、演技なの!?あんなに攻撃されて、血を吐いて、それでも回復しなかったってこと!?


「それ、言っちゃいます?この後ジールに心配してもらうとこまで計算してたんですよ?ホント、勘弁して下さいよ」


何だコイツ…。てっきり魔力が尽きてウィン様召喚できなくなったかと心配したし、ウィン様召喚する魔力しかないのかとも思った。


本当に何を考えてるか分からない…。


私は安心感からか、その場に倒れて意識を失った。





目覚めると、見覚えがある場所にいた。


ここはエアマスの城。しかも、以前私が軟禁されてた場所である。


「気が付かれましたか?」


横を見るとハルコがお茶と茶菓子を用意しているところだった。


「お腹、空いてませんか?良ければ茶菓子でも摘んでください」


…ん?待って。


これって私、また捕まったの!?


「ハルコ、まさかまた私から生命エネルギー、奪う…とか?」


何を言ってるのか分からない、と言う顔をするハルコ。どうやらそうではないらしい。


「ここはもう、イアラン様の城です」


「はい?誰の城?」


「ですから、ゴッドキラーのイアラン様の城です」


どうやらエアマスとの決闘はイアランの勝利というとこまでは私の記憶と合致する。


ただ、その後何が起きたかサッパリ分からない。


「イアラン様はお父様を配下に置きました。ただ、私たちは特に何も変わらずそのままです」


ハルコの説明によると、イアランは決闘の後、エアマスを配下に置き、ここの統治とニンジャの育成を任せたという。


ただ、二つ条件を付けていた。


一つはハーフエルフの受け入れと救済。


まずは近場のハーフエルフの救済から始めるとのことらしい。


もう一つはイアランの研究所の建設。


イアランはここに拠点を置くようである。ターンズ国だとまた命を狙われても防衛ができない可能性もある。


ここなら警備もしっかりしてるからであろう。


「そうだ、他の人たちは?」


ハルコは悲しそうな顔になった。


「オーキス様は…明日のイアラン様のゴッドキラー就任式典の準備のため帰りました…」


…師範、逃げたな。師範が準備すること、何もないよね?ハルコのこと、面倒なんだろうなぁ。


「ほ、他の人は?」


これ以上、師範の話をしたら泣きそうなので、話を切り替える。


「あの…皆さん、客間に集まって…お食事をしています」


皆さん?決闘を見ていた何人かだろうか?


食事?どういう組み合わせが一緒に食事をしているのか想像ができない。


「私、どのくらい寝てたのかな?」


「三時間くらいでしょうか?イアラン様の指示で『静かなところで休ませてあげて』とのことでしたので」


そういう所は気が利くんだよね、イアラン。


「あ、あの…」


ハルコはもじもじしなら私を見ている。


「私のために…ありがとうございます。おかげで…お父様もイアラン様の命で実験を中止することになりましたし…イアラン様も効率のいい生命エネルギーの使い方を研究を共にしてくれるとのことです」


ちょっと気が利きすぎである。まあ、そのために戦ったわけだし、イアランなら察するだろう。


「ジール様はどうされます?皆さんとお食事、されますか?」


何だか嫌な予感がするが、お腹がすいたという現実には抗えそうにない。


「せっかくだし、いただこうかな♪」


ハルコの作ったスイーツのおいしさを思い出すと、食事に期待をしてしまう。


私は起き上がり、ハルコに連れられて客間へと向かった。





後悔した。部屋に食事を持ってきてもらえば良かった。


私が部屋に入ると、イアランとエアマスが仲良く酔っぱらって踊っている。エアマスの傷はちゃんと治されているようだ。


それを見て笑っている人間界の神。それを睨んでいる邪神。その隣で機嫌の悪そうな邪神の心配をしている師匠。


空気を読まずに楽しそうなウィン様。気にせず黙々と食事をするクアンタとヘキサ。


本当にこの世界の…ゴッドキラーや神は理解ができない。


特に今、手を繋いで踊ってるイアランとエアマス、あなた達はさっきまで命のやり取りしてるし、イアラン、エアマスに殺されたんだよね?何でそんなに飲み友達みたいに接している!?


私はそっと引き戸を閉めようとした。


「あ、ジール目が覚めたんだね♪」


イアランが私を見つけて嬉しそうに声をかける。みんなの目線が私に集中する。


「あ…その…おかげさまで」


帰りたくなってきた。食事に目がくらんだ私は愚か者である。帰っていつもの食事を取り、ゆっくり読書をして眠れば良かった。


もしかして、決闘よりこれからの方が大変なんじゃなかろうか?


「ジールは何飲む?ワインも樽酒もあるよ♪」


酔っ払いイアランが寄ってくる。思わず後ろに下がる。


「私は食事しに来ただけで、お酒飲む気はないから…」


それを聞いたイアランが涙目になる。


「じぃぃぃぃるぅぅぅぅ!!一緒に飲もうよぉぉぉぉぉ!!」


泣きながら私にお願いしてくるイアラン。これは…ウザい。


「飲んであげてもいいんじゃないか、ジールさん。大好きな旦那様が悲しんでるぞ」


酔っ払い二号ことエアマスがイアランの援護をする。


ってかどこの誰が「大好きな旦那様」だよ!


「楽しんだらいいじゃないか、ジール。俺が許すからさ」


人間界の神、今あなたをぶっ飛ばす方法を知ってたら間違いなくやりますよ、私。


「バカ騒ぎをする必要はないぞ、ジール。下らぬことは付き合わぬ方が身のためだ」


邪神様、今あなたが女神に見えてる私はかなりおかしいのでしょうか?


「その通りだ。ジール、食事を楽しむのは良いが、変な輩に付き合う必要はないからな」


師匠も味方をしてくれるのは心強い。


「ジールが好きにしたらいいのではないか?私は少ししか酒を飲んでないからな」


ウィン様の体でお酒飲んでも大丈夫なのかな?…というか、その近くに転がっている空の樽は…何でしょうか?少しとは何を基準にしているのでしょうか?


「そういえばイアラン、キスはしてもらったのか?」


余計なことを人間界の神が言う。それに対して師匠が明らかにイラついた顔になった。


「上に布団を用意させよか?」


最悪なアシストをしようとするエアマス。この色ボケじじい、キスしか言ってないでしょうが!


イアランと目が合う。気まずい…。


「キス、してくれるの?」


子犬のような瞳で私を見てくるイアラン。可愛いとは思うけど、そういう事じゃない。


「後日でいいかしら?」


今はイヤだ!酒の席の盛り上げとしてキスをするなんて絶対にイヤだ!


「俺、頑張ったよ?ジールのキスのために頑張ったよ?ねぇねぇ」


私の服の袖を引っ張るイアラン。思わずぶん殴ってしまった。


転がって白目を向くイアラン。なんかちょっとスッキリした。


「キスじゃなくキズもらったな、イアラン!」


人間界の神がイアランを指さして大爆笑している。


「ジール、こういう席で暴力は良くないな。もう少しあしらい方を学ぶ必要があるな」


まさかのウィン様に注意された。そうだけど、キスってそういうもんじゃないでしょ!


私は平和なクアンタとヘキサと共に食事を始めた。食べる前から疲れた。


クアンタは最初のころより話すようになったが、相変わらず毒舌で「安易な約束したバカエルフも悪い」と言われてしまった。


確かにそうなんだけど、あれは私が悪いわけではない…。


ため息をつきながら食べる食事はおいしさが半減することを改めて実感する。


「失礼いたします。風呂の準備ができました。入るときはいつでもお申し付けください」


エアマスの部下は要件を告げると下がっって行った。それ聞いて私はハルコに聞く。


「お風呂あるの?いいなぁ。私の託児所に作ろうとしたら反対されてさぁ」


「だったら食事の後でも入って行って下さい。木で造られた浴槽はいい香りがしてリラックスできますよ♪」


実にうらやましい。今度こっそり生活魔法覚えて作ろうかな。


「私も入る~♪」


ヘキサが嬉しそうである。ヘキサ、水浴び好きだもんね。


「俺も一緒に入る~♪」


復活したイアランを無視した。これ以上関わりたくなかった。


「私も入ろう。お風呂はなかなか入る機会なからな」


ウィン様も乗り気である。これはお風呂女子会できそう♪


「ハルコも一緒に入る?」


「いいんですか!?喜んでお供します♪」


お風呂ならバカ騒ぎしている奴らも来ないし、楽しく過ごせる。少しは私にもご褒美があっていいはずである!


「じゃあ、みんなでお風呂行こうか♪」


何だかやっと元に戻れる気がした。お風呂に入ってさっぱりして明日を迎えるのだ。


朝起きて、ご飯作って、子供たちの相手して。


変化のない日常とはこんなに素晴らしいことなのかと気が付く。


「では、我も行って良いか?」


さっきまでの気分が消えた。


私はゆっくり振り向く。


気のせいでなければ今言ったのは…。


「邪神様、ここで湯浴みをされるのですか!?」


師匠が尋常ではないくらい慌てている。確かに、神様が下々の者とお風呂に入るなんて聞いたことが無い。


「我と一緒では嫌か、ジール?」


私の目ではなく、心に届くような視線。これは聞いているのではない。確認である。だが、なぜ!?


「一緒に入れるのは光栄です!」


声は上ずっていたが、それを聞くと邪神の口元が笑った。


「では、浴場へ行こうか、ジール」


私はいつ、この地獄から解放されるのだろうか?生まれて初めて、お風呂への足取りが重くなった。


「神様に祈りたいけど…今回の場合、無駄だよね…」


私は、何が起こるか予想ができない風呂女子会をスタートさせるのであった。

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